どんな会社にも、顧客データや取引先情報などが存在します。
そのようなデータは、手で触れることは出来ませんが財産的価値があるため、知的財産であるといえます。

したがって、お金を出してでも買いたいと思う人が存在します。

 

売りたい人・買いたい人がいれば市場が生まれるため、適切な値段を付けてデータを売ってしまえば良いのですが、データの販売にはいろいろと問題があります。

 

まず第一に、「会社が手に入れたデータは必ずしも会社のものではない」ということです。

 

たとえば、顧客が入力した住所・氏名・年齢・メールアドレスなどは、顧客がサービスを受けるために提供したデータであり、顧客のものです。

このデータを会社が勝手に売却などしてはいけないということは容易にわかると思います。

 

データの無断持ち出しで逮捕者が出たというニュースはよく聞きますよね。

 

 

第二の問題点は、「データは特許法や著作権法という法律では守られない」ということです。
データは知的財産ではありますが、知的財産権にはならないのです。
(この言葉の意味がわからない方は、知財の知識の「知的財産の基礎」カテゴリーをお読み下さい)

 

データの保護は、不正競争防止法に頼ることになります。

したがって、流通が上手くいきません。
国のお墨付きである知的財産権を取得していないので適切な保護がされないからです。

 

仮にデータを提供された側が「そんな情報最初から知っていた」と主張して支払いを拒んだとしても、何も言えない可能性があります。

 

このような事態を防ぐために、データで稼ごうという会社は、データを開示する前に、しっかり契約を結んでおく必要があります。

 

また、データが誤っていた場合の損失の補填や、データの二次使用、三次使用についても契約で細かく決めておくべきでしょう。

 

ミュゼやCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)のように大量のデータを持っている会社は自社で特許のような知的財産権を生み出さなくても、顧客データという知的財産と商標権という知的財産権を持つのでいざとなったらそれらの知的財産・知的財産権を売却することもできます。

 

ですから、経営破綻しそうになってもなかなかしぶといと思います。

 

中小企業の場合は、ここまでの規模のデータはなかなか集まらないでしょうが、ニッチな分野に限れば、それも可能でしょう。

本業よりもデータ販売のほうが儲かるかもしれません。

もちろん、顧客データは顧客のプライバシーに関わるものであるため、扱いには慎重に慎重を重ねる必要があります。

 

データを扱う会社には、通常以上に高い倫理観が求められるでしょう。

 

「収益」にだけ目を向けて人間の持つ当然の感情を蔑ろにしないように「普通の人の感覚」を持ち続け、かつデータを活用出来る会社はこれから大きく飛躍できるでしょう。

*この記事は旧ブログ「問題解決中」に記載していたものです。