2月25日に赤ブーブー通信社(以下、赤ブー社)主催のスクエアエニックス(以下、スクエニ)オンリーの同人イベントに警察が来るという「事件」が起きました。

結局警察は引き上げていったということですが、これから同人活動(特にファイナルファンタジー)を継続したい人には他人ごとではないと思われるので、主に著作権法的観点から同人活動というものについて説明したいと思います。

 

まず、そもそも同人活動は著作権法的にどうなんだ?ということですが、同人活動は形式的には著作権侵害になります。

 

具体的に関わってくる法律は、複製権、翻案権、同一性保持権、公衆送信権といったところです。
ちなみに商標権の侵害になる場合もありますが、今回は著作権法に焦点を当てていきます。

 

*以下、この記事のリンク先は私が運営している知的財産に関する法律のサイトです。
法律的に詳しく学びたいという人は御覧ください。

 

さて、どうして同人活動が形式的に著作権侵害になってしまうのかというと、まず、アニメや漫画、ゲームの中のキャラクターなどをそっくりに描く(鉛筆でもマウスでも)と、複製(コピー)することになるので複製権の侵害になります。

 

ちなみにコピーするものは絵に限りません。文字(たとえばウエブ記事やブログ記事)や写真も勝手にコピーしてはいけないのです。

といっても、自分だけで楽しむためにコピーするのは良いのです。
コピーしたものをブログやSNSにアップした途端に著作権の侵害になります。

 

Twitterなどを見ると、アニメや漫画などをカメラで撮ったものがよくアップされていますが、あれは明らかに著作権侵害となります。

 

ただし、「引用」に該当する場合は大丈夫です。

引用とはどういうことかというと、たとえばこの記事の数行をコピペして自分のブログに出典(このブログの題名である「主に知財」とURL)と共に載せて自分の意見(たとえば、「私は同人作家の一人としてこの事件について〇〇と思う〜」)をその文章よりも長く書くという行為は著作権法的に許されます。

 

さて、先程、「そっくりに描くと複製権の侵害」と言いましたが、そっくりでなくアレンジを加えた場合にはどうなるのでしょうか。

 

この場合でも著作権侵害を免れることは出来ず、「翻案権」や「同一性保持権」の侵害になります。

 

たとえば、8(9?)頭身のセフィロスを2頭身にした可愛いイラストを描いたとしても、それがセフィロスの本質的特徴を現していてセフィロスだと認識できるならば、翻案権の侵害となるのです(もちろん自分一人で楽しむために描くだけなら著作権の侵害とはなりません。普通は人に見せたくなりますが)。

そのイラストをSNSに投稿すると、「公衆送信権」の侵害になります。

なお、「同一性保持権」は著作者人格権となります。元のイラストとは違うものに変えられてしまうと著作者の人格を傷つけることになるというのはお分かりになると思います。コラージュなんかも同一性保持権の侵害になります。
(自分の大好きなキャラが気持ち悪く描かれて笑いものにされていたらファンとしては嫌ですよね)

 

イラストだけでなく曲や文章も同じです。

 

著作財産権ではなく著作者人格権を侵害しただけでも、刑事罰に課されます。

 

というわけで、同人誌を描くことは形式的には著作権の侵害になるんだよということはお分かりいただけたかと思います。

 

しかし、日本では数多くの同人誌が販売されています。

 

これはなぜかというと、権利者からお目こぼしをされているからに他なりません。

 

だって、同人誌が出るって人気がある証拠ですからね。

また、同人誌がでることによってさらにその作品の人気が出ることにも繋がるので権利者としてはどんどんやってくれて構わないと思うでしょう。

 

 

ただし、2つだけやってはいけないことがあります。

 

一つは、過剰なエロ。
特に児童向け作品のエロは公式も目を光らせています。

最近は未成年に対するレイプ事件が増えていることとの相関関係も示唆されているため、児童ポルノは更に取締りが強化されることと思います。

性犯罪は再犯率が異常に高いので被害を未然に食い止めるためにも児童ポルノ作品は厳重に取り締まるべきでしょう。

 

さて、2つ目は公式のコピーを同人誌に使ったり公式イラストをグッズにしてしまうことです。

 

たとえば、漫画の一コマをそのまんま複製したものをマグカップにして販売するといった感じです。

これは「ファンがオリジナルに似せたマンガを描いて楽しむ」といった趣旨を逸脱してしまう行為です。ロゴを使っている場合も多いので商標権の侵害にもなります。

 

で、今回のFF15の問題の本でやられていたのが、これです(FF15の公式のイラストを使ったグッズも売っていたようですね)。

 

FF15のゲーム画面のスクリーンショットをコピペして同人誌に使っていたようです。キャラクターも背景もどちらもコピペしています。キャラクターだろうが背景だろうがコピペは複製権の侵害となります。

 

しかし、イフリートの如く炎上問題を起こした人は全く意に介さず堂々とイベントに参加していたようです。フェニックスですね。

 

他の同人サークルの人たちは、いくらスクエニ側から何も言ってこないとしても、スクエニにこの行為がバレていることは知っているし、だからこそ「やり過ぎでは・・・」と心配していたようです。

 

そして、一旦はイベント参加を見送ると言っておきながらイベントに参加している問題の人の存在を認識した第三者が警察に通報したようですが・・・なんとイベント主催者(赤ブー社)は炎上問題を引き起こした本人ではなく、警察に通報した人を特定しようと躍起になるというわけのわからない事態になりました。

 

これにより、同人作家さんたちから赤ブー社への不信感がつのります。

 

「明らかに問題のある行動を起こしている人の行動を問題ないと断言し、(主催者である赤ブー社に連絡せず)警察へ通報した人へ怒りの矛先を向けるとは・・・」

 

赤ブー社の対応は、あまり適切であったとはいえません。

 

本来は、問題を引き起こした人の参加を禁止する等、ここまで問題が発展する前に何らかの対応は採れたはずです。いえ、採るべきでした。

 

たとえFF15の著作権者とは全くの無関係だったとしても、著作権法という法律的側面からではなく、「主催者側のお願い」というマイルドな表現で他者に迷惑をかける行為、倫理的でない行為は慎むように伝えることは出来たはずです。

 

たとえば、ライブをスマホで撮影することを禁止するのは「主催者からのお願い」です。
そして、ライブに参加している人たちもそれを理解して、ライブを撮影するようなことはしませんよね。

 

これと同じように、同人誌即売会でも、「明らかに公式に不利益を与えるほどの著作権侵害をしている作品の販売」や「他者への迷惑行為」をしているサークルの出入りを禁止することは出来ます。

 

全ての人が気持ちよくイベントに参加出来るように主催者側はそうしたことを積極的にしなくてはいけません。
皆からお金を受け取っているわけですし。

 

というわけで、今回の問題はFF15の同人をしている人だけではなく、同人誌を販売する全ての人に関わる問題です。

 

多くの人が著作権法について正しい知識をつけて、かつ、「法律の問題を超えたところにある善意・マナー」といったところまで踏み込んで考えることができるようになることを望みます。

 

また、同人作家さんたちは今回の件で過度に萎縮することなく、同人活動を楽しんでください。
他者に迷惑かけることなく「普通に」同人活動を楽しんでいる限りは逮捕されたりはしませんから。

 

でも、エロ系に関しては小さなサークルでも気をつけてね(^^;

過去に見せしめ的に逮捕された人もいるし・・・。