*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事と同じです。実際に描かれたのは2年ほど前です。リンクを下さっていた方はこのブログのアドレスに設定し直してくださると助かります。

 

フランクミュラーのパクリ腕時計フランク三浦を販売している大阪の会社ディンクスが裁判に勝訴!というニュースをみかけたので、「パクリ品が裁判所のお墨付きになったのか!」と思い調べてみたら、違いました。

 

報道の仕方(曖昧さ)で勝手に何かの権利の侵害訴訟かと勘違いしてしまいましたが、実際は、以下のような裁判です。

 

まず、ディンクス株式会社が「フランク三浦」という商標を特許庁に出願して登録を受けていたのですが、それに対し、フランクミュラーが商標登録無効審判を請求しました。
その請求が認められ「フランク三浦」は無効にされたのですが、ディンクス側が審決取り消し訴訟を提起して無効審決を取り消すことが出来たという裁判です。

 

この裁判の結果自体は特段驚くようなことではありません。
知財高裁の判断は教科書通りでごく普通という印象です。

 

商標の類似は称呼・観念・外観から判断するところ、外観が著しく異なるため「フランクミュラー」「フランク三浦」両商標は非類似と判断されました。
価格帯も全く異なり、取引者が混同することはありません。

 

もう、ホントに教科書通りです。まったく異論はありません。

 

・・・が、最高裁に持っていけばこの結論が覆される可能性はあります。
知財高裁の判断は実情を何も考慮していないので、フランクミュラー側が商標法4条1項7号や商標法4条1項15号違反とかを持ち出して来れば「フランク三浦」は無効になり消滅する可能性はあります。

 

また、それ以上に可能性が高いのが、不正競争防止法違反で製造販売を差止められる可能性です。

商品の出所につき混同の恐れがない場合でも、著名な商標の顧客吸引力を利用することによって不正に利益を得ているので、、不正競争防止2条1項2号の不正競争行為に該当します。「フランク三浦」商標の使用は「フランクミュラー」のブランド力を毀損しますし。

 

フランク三浦の人気が出すぎたので、むしろ「フランクミュラーなんか持ってんの?ダッサ!今はフランク三浦でしょ!」みたいな話になってパロディされたフランクミュラーの売り上げが落ちる可能性は否定できません。

 

フランク三浦と間違わられるのが嫌だから、フランクミュラーはやめておこう。別にロレックスとかオメガでもいいじゃん。と思って買い控える人も出てくるかもしれません。

 

ですから、商標権侵害については問題なかったけれど、フランクミュラー側が不正競争防止法違反で訴えればフランク三浦の製造販売を中止させることはできると思います。

 

あとは意匠権侵害ですね。外観があまりにも似すぎているので容易に認定されるでしょう。
(ところで、商標のところでも「外観」という言葉が出てきましたが商標では「時計の外観」の話はしていません。注意してください)

 

というか、フランク三浦だけなら笑えたけれど、ちゃっかり商標登録した時点でめっちゃ引いてしまいました。

 

私はパロディは大好きだから「いいぞ、どんどんやれ!」と思いますが、「稼ぐぞ稼ぐぞ」という匂いがヽプンプンしだすともう臭くて嫌になります。

 

パロディは、アメリカみたいに便乗はダメ。でも、面白ければOK!で基本良いとは思うのですが、

パロディするなら最後まで笑わせろ!権利を主張するな!権利を主張するならパロディするな!と思ってしまいます。
お金を稼ぐこと自体はいいけれど、やりすぎってことです。

 

むしろ、商標登録が無効にされた時点で潔く諦めていれば出回っている商品にプレミアがついて良かったのではないかなと思います。

 

ここで、思い出したのが「面白い恋人」

 

白い恋人のパロディで売り上げを挙げた面白い恋人も、「まあエエやん。固いこと言わんといてーな」といいつつも「面白い恋人を真似すんな!」と他者には厳しいので(HPもやけに固苦しくて面白味がない。「面白い」はずなのに)、え??と開いた口が塞がりません。

 

え?何を怒ってんの?あんたも真似してんじゃん。お互いさまだろというのが面白い恋人の模倣業者の言い分でしょう。

 

フランク三浦も商標権なんか取らないで、真似されたら真似されたで、それも笑いのネタにすれば良かったのに・・・と残念でなりません。

もったいない!

 

ただの洒落やん。うるさく言わんといてーや!
なんていうのはパロディする側の理論。
パロディされる側にとっては長い年月とお金をかけて育て上げたブランドを汚す行為は許せない!となって当たり前です。

 

まあ、今まで稼がせてもらったのだし、フランク三浦はフランクミュラーにライセンス料なり「パロディ料」なり名目は何であれ、「ブランド使用料」みたいなものを支払うことによって製造販売を継続したらどうでしょう。
それでもフランクミュラー側がNOといえばそれまでですが。

 

お金なんか払わなくても上手くやればパロディ業者もネタ元と共存できるはずです。
コミケで二次創作本を売っている同人作家と同人誌を描いてもらいたい漫画家の関係と同じように。

 

大企業VS個人や中小企業だと、個人や中小企業寄りになりがちな私ですが、今回ばかりは大企業を援護したいです。

こういうのを放置すると、個人のデザイナーとか小さい会社だけど良い製品を売っている会社が泣かされることになりそうですから。悪い前例を作ってはいけません。