ある創作物に「似ている」作品が創られると、「パクリだ」とか「いや、オマージュに過ぎない」「パロディだろ」といったような言葉が飛び交います。

これらの言葉はどれも似ていますが、厳密には違います。

 

ではどのように違うのか、具体例を上げながら見ていきましょう。

 

まず、「パクリ」というのは、「他人の表現物をそのまんま模倣したり、多少改変しても表現としては類似している程度の改変であること」をいいます。(もちろん法律用語ではありません)

 

たとえば、有名イラストレイターの絵をアマチュア画家がトレースして自身のブログにアップした場合は、複製権(著作権法21条)と公衆送信権(著作権法23条)の侵害になります。

また、アマチュアバンドが有名バンドの曲をライブで演奏した場合は演奏権の侵害となり(著作権法22条)、アレンジしてライブで演奏した場合は著作権法27条の侵害となります。

ちなみに、有名バンドがアマチュアバンドの曲を「パクる」といった場合もあると思います。有名かどうかは著作権者かどうかとは関係ありませんから。

 

次に、「既存の創作物に敬意を持って表現を真似て自分の作品に表現すること」がオマージュです。

 

オマージュとは、フランス語hommage から来た言葉で、リスペクト(尊敬)と同じような言葉として使われます。

「盗作」と似ているので勘違いされることもしばしばあります。

 

厳密な線引きは困難です。

 

これは、「引用」と違って、ネタ元を記載しないので、気づかれなければ「オマージュした人が考えた表現」と思われる危険性があります。

 

ですから、「パクリ」と勘違いされる可能性も高く、オマージュする側は、「パクリ創作者」のレッテルを貼られる危険性があります。

 

しかし、オマージュされた方の著作人格権を傷つける行為ではなく、また、別の場所で「オマージュです」と発表してくれれば、オマージュされた方にはプラスになると思います(そのような慣行は特にないようですが)。

 

黙ってオマージュして誰にもオマージュだと気づかれず、ずっと後になって誰かに「あれ、パクリじゃね?」と言われないためにも、自ら「オマージュです」といってしまったほうが良いかもしれません。

 

オマージュの例としては、映画版のエヴァンゲリオンでシンジ君が病気のアスカの裸を見て興奮して「ぼく、最低だ・・・」というシーンがありますが、あれは既存作品へのオマージュだと思われます。
エヴァンゲリオンは全体的にVガンダムに似ていたり、また庵野監督自身も影響を受けた作品についてVガンダムの名前などをあげています。これによってVガンダムを観ようと思う人も現れるので表面的には「パクられて」も、オマージュされる側にはプラスになると思います。

 

最後に「パロディ」について説明しましょう。

 

「パロディ」とは、「他人の著作物を風刺するなどして元ネタとは違った面白さを表現すること」です。

 

見る人が「元ネタを知っていないと面白さが伝わらない」という特徴があります。

 

たとえば、有名な絵画「モナリザ」が怒っている顔をしているパロディ作品を書いたとしても、「モナリザ」を知らない人が見たら、ただの「怒れる美女」としか認識しないでしょう。

ですから、パロディをするときは、ある程度有名な著作物や出来事(たとえば、野々村議員の謝罪の仕方など)をモチーフとします。

 

これに対して、「パクリ」は「ネタ元は知られないほうが良い」ので出来る限り知られていない作品から盗んだほうが賢いでしょう。
とはいっても、インターネットの発達した現代では簡単に「ネタ元」はバレてしまうものです。

 

かの佐野研二郎氏のパクリ元である画像も暴露されてしまいましたから。

 

日本人にはあまり知られていないという理由で海外のサイトの内容をそのまんま翻訳しただけ(引用ではなく)の内容を自身のブログなどで発表したり、電子書籍にして出版するという人がいますが、そのような行為は著作権法27条違反であり、「パクリ(盗作)」です。

 

替え歌などはパロディとなります。マッシュアップやMADなどもパロディの一種でしょう。

 

さて、このパロディは、「二次的著作物」とも呼ばれます。

 

二次的著作物とは著作権法2条1項11号に規定されているように「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」を言います。

 

二次的著作物を創作した人にもその人が創作した二次的著作物について著作権が発生します。
ちょっとわかりにくいので具体的に説明します。

 

たとえばハリーポッターという小説を映画化したら映画化した人には二次的著作物についての著作権が発生します。

また、原作は英語ですからHarry Potterを日本語に翻訳した人にも二次的著作物についての著作権が発生します。

 

そして、ハリーポッターの原作者は二次的著作物である映画や日本語の小説についても同様の権利を持ちます。

つまり、日本語版ハリーポッターが漫画にされるときは、翻訳者がOKといっても、原作者は「やめてくれ」という権利を有するのです。

原著作者の権利は強力ですので、日本語の翻訳者は勝手にその翻訳物をウエブでアップなどしてはいけません。原作者の許諾を貰わないといけません。

なお、原作のハリーポッターの著作権が消滅したとしたら原作の小説を勝手に自分のサイトにアップしても大丈夫です。
しかし、保護期間は独立していますので、翻訳版のハリーポッターの著作権はまだ残っている可能性があるので翻訳版については勝手にアップすることは出来ません。

 

音楽の場合でも考えてみましょう。

たとえば、バッハの曲(既に著作権は消滅しています)をあるバンドが編曲して歌詞を付けて曲にしたとします。この場合、そのバンドの創った曲を勝手にウエブにアップしたりすることはできませんが、自分が演奏したバッハの曲をアップすることは問題なく出来ます。
ただし、他者が演奏したバッハの曲をアップすることは許諾なしに行うことは出来ません。

なお、ヴァイオリン曲をピアノ曲に直す程度のことは編曲に当たりません。
ですから、G線上のアリアをピアノバージョンにしても編曲とは認められません。

 

なお、パロディについて考えるときに重要になってくるのが同一性保持権(著作権法20条)です。

この同一性保持権(著作権法20条)というものは「著作者の意に反して改変されない」という権利です。著作者人格権ですので、著作権が切れた後も残る権利です。

著作者から許可を貰えれば問題はありませんが、元ネタをバカにしたようなパロディに対して許可が与えられることは考えにくいので無断パロディがたくさん創られることになります。

(ふと思い出しましたが、韓国版のコナン、キャラクターの名前も地名も全て韓国名に変えられていますが、名前を変えられることによりだいぶ雰囲気が変わってしまうと思います。青山剛昌氏は許可を出したのでしょうかね・・・。)

パロディの中には、作者から見たら許せない改変も多数あります。

でも、面白いんです。
だから、「著作者から許可を貰わずともパロディは許されるべき」と思います。

もちろん、人格を傷つけるようなパロディは許されません(かなり際どいものも多いですが・・・)。

私は個人的にはパロディを創るのも見るのも好きなので、ある程度は自由にさせるべきだと考えています。
あまりにも厳しくしてしまうと、面白いパロディなんてできなくなってしまいますから。

著作権者の人格権を不当に侵害するようなパロディは許されるべきではありませんが、誰もが見ただけでくすっと笑ってしまうような楽しいパロディはもっともっと創られるべきです。

シリアスなものほどパロディをすると面白いのでなかなか難しい問題を含んでいますが・・・。

ちなみに、普及につながるのでパロディOKとしている著作者も多いです。

自分の作品がパロディされるなんて許されない!と厳しい人もたくさんいますが・・・。

 

使われた方としてはあまり気持ちの良いものではありませんが、パロディされたおかげで有名になることもあります。
たとえば、孤独のグルメ。

 

私はこの漫画を知らなかったのですが、子供が妖怪ウオッチを見ている時にそのアニメの中で出てきて知りました。

 

長くなりましたが、まとめると、

「パクリ」は著作権の侵害だから、ダメ。絶対。

「オマージュ」はOK. ただし、元ネタは明かしたほうがいい。自分の名誉のためにも。

「パロディ」はやってもいい(というか面白いからやってほしい)けど、あまりにも著作者の人格権を傷つけるようなやり方はしないように気をつけるべき。

となります。

 

さらに詳しく著作権法について学びたい方は知財の知識を御覧ください。

*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事です。リンクをくださっていた方はリンクをし直してくださると助かります。