今年の話なのでまだ記憶に新しいと思いますが、グリコがロッテに勝訴しました。
ポッキーの高級版「バトンドール」の模倣品「ペペロ・プレミア」の話です。

*例のごとく旧ブログ「問題解決中」の記事を載せています。

 

ロッテだけに限らず、海外の菓子会社は日本の高品質の菓子の模倣品をたくさん販売しています。

 

先日100均に行ったら、「セリナーゼ」というブルボンのエリーゼの模倣品を見つけました。マレーシアからの輸入品です。パッケージも名前もエリーゼにそっくりで、ブルボン側からは十分に差止請求できるレベルです。

 

これだけでなく、韓国や中国などで売られているお菓子は日本製品の模倣品が驚くほどたくさんあります。

 

では、逆のバージョンはないのでしょうか。
日本企業が海外企業のお菓子を真似た製品です。

 

タイのグリコが「ペジョイ」というお菓子を販売しています。
これは、筒状のビスケットのなかにチョコを溶かし入れて固めたお菓子です。

 

・・・つまり、ロッテのトッポです。

 

見た目も似ていますが、果たしてこれは知的財産権の侵害になるのでしょうか。

 

知的財産権に関する法律は、特許法の他に商標法、意匠法、不正競争防止法などがあります。
お菓子の製法など技術的なことに関しては特許法で、お菓子の名前については商標法で、パッケージデザインについては意匠法や不正競争防止法で守られることになります。

 

ここでロッテのトッポについて言及してみると、このプレッツェルと製造方法については特許権があります。
・・・いえ、ありました。

1994年4月1日に特許出願されているので、2014年に既に特許権は消滅しています(ちなみに「トッポ」の商標はその2年前に既に商標登録出願されています)。

ですから、この技術を使ってグリコがトッポのようなお菓子を作っても特許権の侵害とはなりません。

 

また、名前については「トッポ」と「ペジョイ」ですので全くの非類似です。

パッケージデザインについてはありふれたデザインですので特に似ているとは思いません。

 

というわけで、グリコの「ペジョイ」を日本で製造販売しても法律的には何にも問題はありません。

 

 

しかし、なぜグリコは日本でペジョイを販売しないのか。

 

その理由は、きっと「日本の消費者がクレームをつけてくるから」でしょう。

 

日本は世界有数のTwitter大国です。消費者が気軽にお菓子の画像などを投稿します。

 

もし日本で「ペジョイ」が売られていたら、「こんなの見つけたったww 反撃のグリコwww」「やられたらやりかえす。三倍賠償だ!」といった投稿が飛び交うことでしょう(半沢直樹は古いですね。すみません・・・)。

 

上述したように、トッポの特許権は切れていますから同じ技術を使ったお菓子を作っても知的財産権の侵害にはなりません。

 

また、パッケージデザインも模倣とは思えません。

 

しかし、お菓子自体は同じ技術を使っているためにそっくりです。

 

そのため、ペジョイを購入した消費者が「パクリやんwww」という投稿をする可能性は多いにあります。

すると、せっかくロッテに勝訴したのにグリコは「模倣企業」の烙印を押されることになってしまいます。

 

それでは、ブランドを傷つけてしまいます(ブランドも知的財産です)。

 

というわけで、グリコはペジョイを日本で販売しないのだと思います。

 

もちろんこれは私、福田の推測ですので別の理由があるのかもしれません。

近い将来、名前を変えた商品がグリコから販売されるかもしれません。
「ペジョイ」は日本人の感覚からすると「変な」名前ですから、もっと可愛い名前でしょう。

 

ちなみに受験のシーズンにはロッテは「トッパ(TOPPA)」というトッポの受験バージョンも販売します。

 

こういうのは楽しいですよね。

 

11月11日のポッキーの日を真似て「11月11日はペペロの日」というよりもずっと好印象です。
たとえ「キットカット/きっと勝つ」の真似だとしても悪い印象は持ちませんから。

 

ブランド価値の向上や商品の売上は、知的財産権だけでなく、種々の要素が絡んでくるので面白いですね。

 

ちなみに、三菱自動車の「トッポ」は2012年に既に製造販売が終了しています。指定商品は全くの非類似ですが、お菓子のトッポのイメージが強すぎるために、「美味しそうな車」という印象がついてしまったためでしょうか!?