目に見えない、触れることの出来ない「信頼」。

この信頼を得ているかどうかで人間関係は大きく変わります。

 

人間関係だけではありません。企業が商品やサービスを利用して欲しいと思っても「信頼」を得ていなくては買ってもらえるわけがありません。

 

よく「ブランディングが大事」という言葉を聞くと思いますが、商標法が保護する「ブランド(商標)」とは文字そのものではなく目に見えない「信頼」という無形の財産です。

 

お金を出せば買えるようなものではありません(もちろん商標権は知的財産権ですので売買できますが、ここでは自分のブランドを築きあげていくという意味で使います)。

 

したがって信頼を得るのは一朝一夕ではいきません。

 

しかし、「信頼」を得ることが出来れば、顧客との関係や人間関係もかなりの部分が上手く行きます。

 

そのため、他者からの信頼を得るということは、無視できることではありません。
ぜひ、信頼を得られる人になりたいものです。

 

さて、あなたは「誰から」信頼を得たいと考えているでしょうか。

 

部下・妻・顧客・生徒・同僚・・・

 

「下の立場の者」は上の立場の者に意見しづらいことから、「自分を認めて欲しい」とか「仲良くなりたい」とは思っても、どうすれば上司からの「信頼」を得られるだろうと悩むことは少ないように見受けられます。

 

主に「対等な立場」または「自分が上」の場合にこの信頼感の構築が特に重要になってくるといえます。

 

人間は皆平等とは言っても、実際には上下関係などは無数に存在しますから、上の立場にある者ほど信頼の構築を意識しなくてはいけません。

下の立場の者からは滅多に「痛いがありがたい助言」を得ることは出来ませんから(この役に立つ助言が欲しければ、目下の者の意見を怒らずに受け入れる寛容さが必要ですね。怖い人に部下はものを申すことなんて出来ませんから)。

 

では、どのようにして信頼を構築していったらよいのでしょうか。

 

まずは、いつもどおり「理想の状態」から考えていきましょう。

 

理想は、「意見や価値観の食い違いがないことにより信頼を得られること」でしょうか?

 

何か違いますね。

だって、意見の違いがあるのは当たり前ですから。

 

意見や価値観が同じでも信頼出来ない人なんていますよね。

政治的・宗教的信条が同じ人たちのことを考えてみれば分かりやすいでしょう。
価値観が同じだと思って結婚したけどお互いの信頼関係を構築出来なくて離婚、なんてよくある話です。

 

他の問題解決と違って「信頼の構築」はいろいろと複雑な要素が絡まっているようですね。
「理想」の定義も困難です。

 

さて、今度は矛盾マトリクスに当てはめて考えてみましょう。

 

改善するパラメーターは、そのまんま「信頼」でいいですね。
悪化するパラメータは「時間の損失」や「エネルギーの損失」、「パワー」「生産性」でしょうか。

 

10,30,4 11,35 21,26,31,1 と出ました。
順に当てはめてみましょう。

 

発明原理10「先取り作用原理」

 

何か行動を起こす前に「想像」します。

たとえば、自分がこう言ったら相手はどんな気持ちになるだろう、とか
お客様に対してこんな態度をとったら、SNSに投稿されて炎上するかもしれない、などと先読みします。
思いつきではなく、先を読んでから行動する人の行動は間違いが少ないでしょうから、必然的に信頼されることに繋がるでしょう。

 

発明原理4「非対称性原理」

1対1ではなく、1対3など非対称なグループを組んで話してみてはいかがでしょうか。

たとえば、部下と話をするときは部下と一対一ではなく、自分と複数の部下で話します。
それによって力関係が多少緩和されるでしょうから、部下も意見を言いやすくなり、結果として「公平に扱ってくれた」「意見を聞いてくれた」という満足感が高まり、信頼性が向上するでしょう。

 

発明原理11「事前保護原理」 発明原理30「薄膜利用原理」

ときには言い難いことも言わなくてはいけないこともあります。
特にビジネスに関わることでは「言わずに逃げる」わけにはいきません。

そこで、相手の間違いや欠点を指摘する前に事前に「免責」となるようなことを言っておいてはどうでしょうか。

「これは私の意見に過ぎないのですが」というように前置きをしておきます。そして、個人的にとられないように配慮します。

 

たとえば、頼んでおいた期間を過ぎている場合には「のろまだな」と人格を否定するようなことを言うのではなく「これは昨日が提出期限だ」と事実だけを述べます。

 

相手を気遣うことにより必要以上に傷つけないようになります。

 

発明原理35「パラメータ変更原理」

 

親密度をあげてみてはどうでしょうか。

人は単純に会う回数が増えるだけで親近感を抱きます。

何度も同じCMを見ているといつの間にか好きになってしまう心理と同じです。

 

会社内だけで話しているよりは会社の外で気軽な雰囲気のなかで話したほうが打ち解けるでしょう。

また、たとえ会社内だけだとしても、自分の家族の話しや失敗談を話したりして、血の通わない鬼のような人間ではなく、一人の人間に過ぎないんだとわかってもらえれば、親近感が沸くと思います。

 

すると、それが信頼に繋がるでしょう。

 

発明原理21「高速実行原理」

 

相手に対し、何か言い難いことを指摘するときにはその人の人格について非難するのではなく、「行動」について一回だけ指摘するようにしましょう。

 

一回言うだけで十分です。

 

また、自分が間違っている場合には、即座に素直に認めるということも大事です。

 

発明原理1「分割原理」
相手の発言と行動などを分けて見ましょう。

 

そして、褒めるときには性格でも行動でも発言でも何でも褒めて構いませんが、反対に、指摘するときには、決して

相手の人格や容姿・性別・学歴などについては触れないようにします。

他人にレッテルを貼って非難する人は信頼を勝ち得ることなど出来ません。

気軽なネタと思われがちな「これだからB型は〜」というようなこともやめておいたほうが良いでしょう。

 

また、相手が過去に何か失敗してしまったとしてもそのことを何度も持ちだして責めているだけでは単なるうるさい小言を言う人と思われるだけで、自分のためにも相手のためにもなりません。

 

「また浮気したのね、信頼できない」「お前は過去にプロジェクトに失敗しているから任せられない」

そんな風に過去の行動について非難すると、相手は為す術がありません。

相手の過去の過ちを水に流すという寛容さも重要です。

 

ここからはさらに重要と思われる別の発明原理にも当てはめてみます。

 

発明原理13「逆発想原理」

 

他人から信頼を得ることを気にするのをやめてみてはどうでしょうか。

確かに信頼されることは大事です。

 

でも、人の目ばかりを気にしていては窮屈で生きにくくなります。

「自分」を軸にして、「我が道」を行くのもいいのではないでしょうか。そこに魅力を感じて、「信頼」してついてくる人もいるはずです。

必ずしも八方美人が好かれるわけではありませんよね。

 

ビジネスにおいては、お客様の声を聞いて誠実なものづくりを続けるのも良いですが、お客様の想像を遥かに超える革新的な商品やサービスを提供するのもまた魅力的です。

 

発明原理17「他次元移行原理」

行動に何か「おまけ」を付けてみてはどうでしょうか。

 

たとえば、飲み会の幹事を頼まれたら、ただ単に場所を決めて出欠をとるだけではなく、皆が気持よく過ごせるように特別なサプライズ企画も考えておきます。

部下の誕生日が近かったら「ちょっと早いけど誕生日パーティ」だということを当日に知らせたら、感動してもらえます。

 

発明原理19「周期的作用原理」

 

定期的に何かイベントを開いてみてはどうでしょうか。

たとえば、毎週水曜日の朝が野菜の特売と分かっていれば、野菜を買いたいお客さんは水曜の朝に殺到しますよね。
お客さんだけでなくお店側も予定が立てやすく信頼構築に繋がるので効果的な方法です。

 

発明原理22「災い転じて福となす原理」

食品に異物が含まれていたことにより消費者からクレームが来て、それだけで済まずSNSで炎上するという事件がよく聞かれます。

このような不祥事を起こした場合の対応力によって信頼を得られるかどうかが変わります。

言い訳と誤魔化しに終始した会社は一度失った信頼をなかなか回復出来ないのに、真摯に受け止めて精一杯謝罪した会社は以前より大きな信頼を得ることもあります。

 

発明原理23「フィードバック原理」

他者からの意見を聞くことにより、自分の悪い点を直せます。
それは自分のためになるだけでなく、意見を述べた人にとってもプラスになります。

 

発明原理24「仲介原理」

必要なときだけ意見を述べて必要でないときには黙っているという態度も大事でしょう。

興味本位で何にでも顔を突っ込んでくる口うるさい人は迷惑がられ、信用されにくいものです。

 

発明原理33「均質性原理」

 

相手の立場に立ってみてはどうでしょう。

たとえば、世代間や性別間のギャップにより相手の気持がわからないということはよくあります。

そんなときに「これだから若いやつは」とか「これだから女は駄目だ」というような固定観念で相手を見るのではなく、逆に「自分は頑固な年寄りじゃないか?」「男でも駄目なやつはいくらでもいる。この言い方は女である点を責めているだけで単なるセクハラ・パワハラにならないか?」というように考えます。

 

相手を理解しやすいように相手と何か行動を一緒にするのも良いでしょう。

 

新興国で物を売りたいのなら、新興国の消費者の中に入って生活をしてみるべきです。
お抱え運転手つきの生活をしているだけでは見るべきことが見えてきません。

 

結論:

私事で恐縮ですが、私の夫は彼の友人から非常に信頼されています。
それは、彼が「ブレない」人だからです。これは悪く言うと「頑固で絶対に自分の意見を曲げない」ということです。

彼の友人にすぐ「あ〜、鬱になった〜。福田〜、聞いてくれよ〜」と言って夫を頼ってくるS君という人がいるのですが、なぜ夫に頼るのかS君に聞いたところ、「だって、こいつ、絶対に変わらないから。俺に共感して一緒に鬱にならないから安心して相談できる」とのことでした。

 

これとは対照的に私は相手の意見に一理あると思うとすぐにその意見を取り込みます。

 

「絶対に自分が正しい」とは思っていません。悪く言うと「どっちつかず、八方美人」です。

 

女性は共感の生き物と言われているように、相手の立場に立って相手の痛みを自分の痛みのように感じます。

それによって相手を傷つけることは少なくなります。

代わりに、正しいことを言っていても相手を批判しないために「自信がなさそう。信頼できない」という風にとられてしまうこともあります。

 

私の夫のように「自分の意見を変えない」ことは信頼を得る方法の一つだと思います。

 

今回は多くの発明原理に触れたことからも分かるように、信頼される人というのは一見すると矛盾する性質をもっているようですね。

頑固でありながら素直です。

 

しかし、これは矛盾してはいません。止揚できます。

 

つまり、表面的には葦のようにしなやかでありつつも、根っこの部分はどっしりと根を張っていればいいのです。

 

信頼を得るために無理するよりも、自然体で自分らしく生きていれば、それがブランドとして認識されて信頼に繋がるのではないでしょうか。

 

キャラを作っている人は不自然で信頼出来ませんからね。

 

更に余談ですが、鬱になりがちなS君はS君で夫や私から信頼を得ています。

それは、たとえば「人の悪口を言わない」だとか「おひとよし」といった部分です。
ようするに誠実な人なんです。

小太りな外見とも相まって、なんとなく会いたくなってしまう愛すべきキャラクターです。

 

「◯◯という性格の人」が信頼を得られると一言で言えることではなく、いろいろな要素が絡まって「信頼」を構築するのですから、「内気だから」とか「口下手だから」と臆する必要はありません。

 

自分の意見をガンガン主張していくことにより信頼を構築する人もいれば、物静かに傾聴することにより信頼を得るタイプの人もいますから。

 

無理をせず、自然体で自分の良さを伸ばしていけば良いのではないでしょうか。