ブログやサイトで他人の文章や画像を引用するといったことは頻繁に行われることです。
では、他人の曲を引用することは許されるのでしょうか。
たとえば、自分のバンドで有名なバンドの曲をカバーしたので、引用元としてその有名バンドの曲を自分のサイトで紹介しても良いのでしょうか。
ここで、まず著作権法の条文に当たってみたいと思います。
*いつもどおり、この記事も旧ブログ「問題解決中」のもので3年ほど前に書かれた記事です。
引用
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
つまり、適法な引用と認められるには以下の5つの要件を満たす必要があります。
「公表された著作物であること」
「公正な慣行に合致するものであること」
「正当な範囲内であること」
「自分の著作物がメインで引用した著作物の分量より多いこと」
「引用元の著作者名と題名を明記すること」
詳しくは引用の仕方で説明しています。
さて、著作権法2条一項第一号を見ると、「著作物」とは、
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
と定義されています。ということは、文芸に属する文章だけでなく、音楽に属する「曲」は当然に引用できるということになります。
ただし、引用する場合には文章の引用の場合と同じように、「全て」を引用したり、「不当な利益を得る目的」で引用しない「出典を明記する」というように引用の要件を満たす必要があります。
なお、音楽自体に発生する著作権だけでなく、CDなどに音楽を録音した人の「レコード製作者の権利」という著作隣接権にも注意を払う必要があります。
たとえば、大昔に亡くなったバッハの曲なら全て著作権フリーですので自由に利用出来ますが、「バッハの曲を○○交響楽団が演奏したCD」を利用したい場合には、バッハの著作権ではなく、「○○交響楽団の著作隣接権」のことを考えなくてはいけません。
難しいので理解を深めるためにこちらの記事も参考にしてください。
クラシックCDの著作権
パクリ芸人の芸も保護される?〜著作隣接権〜
では、曲を引用する場合は具体的にどのように引用することになるか述べてみます。
たとえば、「世界の終わり(以下、セカオワ)」というバンドが「Hawaiian6」の「MAGIC」という曲をカバーするとします。
Hawaiian6って誰?という人のために「セカオワ」が自身のサイト内でカバー曲の発表と同時に「この曲のカバーをしました!」と Hawaiian6のYoutubeにアップされている曲を引用したとします。
その場合、曲の全てを引用してはいけませんし、Hawaiian6というバンド名と曲名を正しく明記しなくてはいけません。
だって、もし曲の全てをカバーしているからといって最初から最後まで全て「引用」してしまうと、わざわざお金を払ってHawaiian6の曲を買おうと思う人はいなくなってしまいますからね。
引用が少しだけだったら、「セカオワ」だけのファンの人はそれだけ聞けば十分ですし、少しの引用を聞いただけだけど、いい曲だったからもっと聞きたい!と思う人は引用元であるHawaiian6のMAGICが収録されているCDを買うわけです。
ちなみに、セカオワがMAGICを勝手に編曲したりすると、Hawaiian6の同一性保持権(著作権法20条)を侵害することになります。
この同一性保持権とは、「著作者人格権」ですので、たとえHawaiian6が「著作権」を他人に売ったとしてもHawaiian6のもとに残る権利です。
したがって、安易に同一性保持権を侵害するようなことは許されません。
勿論、許可を貰えば編曲できます。
このようにして、種々の規定により、著作権法の目的である「著作権者の保護と文化の発展」のバランスが保たれるわけです。