世界の医薬品市場でバイオ医薬品が占める割合は年々増加しています。
特に2015年から2020年にかけては、大型のバイオ医薬品が特許満了を迎えることにより、バイオシミラー(バイオ後続品)市場が活性化しています。
ただ、現在、日本ではバイオシミラー(バイオ後続品)の数はかなり少ないといえます。
ジェネリック医薬品と比べ、開発が困難(多額の開発費と長期の研究期間が必要)なことが原因です。
第一三共は、抗がん剤リツキサンのバイオシミラーの日本での開発を中止していますし、昨年(2017年)には、米コヒーラス・バイオサイエンシス社と共同開発していた自己免疫疾患治療薬エンブレルのバイオシミラーについても、日本などでの開発中止を決定したと発表しました。
一方、今年に入って持田製薬がエンブレルのバイオ後続品の承認を取得したと発表しました。
また、協和発酵キリンは1月17日、中外製薬が販売するリツキサンのバイオシミラーである「KHK」を発売すると発表しました。
(製造販売はサンドで、契約により協和発酵キリンが販売、マーケティング担当)
当該医薬品については、昨年の12月に、米ジェネンテック社が、バイオ後続品の製造販売者であるサンドと販売者である協和発酵キリンに対し、リツキサンの用途特許を侵害しているとして、東京地裁に損害賠償請求の提起及び仮処分の申請をしました。国内の独占的販売権者の全薬工業、共同販売権者の中外製薬も参加しています。
リツキサンのバイオシミラーは販売中止になると思われましたが、販売は開始されます。
特許権に基づく差止仮処分は審理が長期化することが少なくありません。事件によっては、差止の本訴と同じくらい時間が掛かることもあります。
それでは、原告の主張が認められなかった場合に自身が被る経済的損失が大きくなりすぎると判断したためでしょう。
もちろん原告側も権利濫用と判断されるような特許権侵害訴訟を提起するわけがありません。
勝訴する見込みがあるから訴訟を提起したのでしょう。
恐らく、協和発酵キリンは特許権を侵害したとして損害賠償金を支払うことになるでしょう。
しかし、その額は、リツキサンバイオシミラーの売上高の一部に過ぎないので、たとえ損害賠償金を支払うことになることになってもバイオシミラーである「リツキシマブBS点滴静注100mg・同500mg『KHK』」を販売したほうが良いと考えたのでしょう。日本の特許権侵害による損害賠償金は低いですからね。
そして、何よりも「一番最初にバイオシミラーを販売する」ということは市場を独占する上で非常に有効です。
薬局等では、バイオ医薬品をバイオシミラーに一度変えたら、その後別のバイオシミラーに変えるということはなかなかしませんからね。
もちろんこれらは私の勝手な予想にすぎませんが・・・。
この訴訟の行方はどうなるのでしょうか。
そして、日本のバイオシミラー開発の未来は。
気になるところです。