抗精神病薬「エビリファイ」の特許切れ後、特許の崖をどう克服するかと注目が集まっていた大塚ホールディングスが、昨日(2018年2月14日)12月期の連結営業利益が前期比で34%増える見通しだと発表しました。
ここで、特許がいずれ切れるということは事前に分かっていたことです(特許権の存続期間は出願日から20年間。ただし、例外あり)。
大塚HDでは、早い時期から次世代を担う新薬の開発及び食品分野への投資を行っておりそれが功を奏したようです。
たとえば、「エビリファイメンテナ(一般名:アリピプラゾール)」。
飲み薬のエビリファイを月1回投与の注射剤にしたもので、薬の飲み忘れを防げるという効果があります。
患者視点に立った新しい価値を提案していますね。
2013年に米国で、2015年には日本でも発売されています。
通常、ジェネリック医薬品が現れると新薬の8割から9割は後発医薬品に取って代わられるのですが、エビリファイメンテナのおかげか、エビリファイの市場占有率減は7割程度で抑えられたようです。
患者にも新たな価値を提示すると共に自らの収益にも貢献しています。
(更に株主も喜ばせています)
また、医薬品だけでなく、機能性飲料「ポカリスエット」などの食品関連事業も好調です。サプリメントの売上も伸びています。
実に見事ですね!
こういう、新薬の特許だけに頼らない用途特許やマーケティング面での工夫など、知財や経営資源を総合的に活用した問題解決策は大好きです。
これにたいし、製薬大手のエーザイは「アリセプト(一般名ドネペジル)」の特許切れ以降業績は低迷しています。
エーザイも大塚HDと同じように研究開発に注力しています。むしろエーザイのほうが多額の研究開発費を投資しています。
では、大塚HDとエーザイの差は何なのでしょうか。
一言で言うと、
「大塚HDはリスクを分散している一方、エーザイは賭けに出ている」といったところでしょうか。
いえ、賭けという言葉は適切ではありませんね。
ただ、新薬開発は当たれば爆発的な利益が見込まれるのに対し、開発に成功するまでは毎年何百億円も研究開発に投資し続けなければいけないというデメリットがあります。
世界を見渡すと製薬大手他社のなかにはエーザイと同じ分野で新薬の研究開発をしているところもありましたが、そのうちの何社かは研究開発を中止しています。
これはビジネスの失敗といえば失敗なのかもしれませんが、潔い撤退というプラスの面で見ることもできるかもしれません。
サンクコストを最低限に抑えられたのですから。
数年後、果たしてエーザイが新薬開発に成功して世界に貢献し莫大な利益を得ることができるのか、それとも、数年経っても新薬を開発できずにいるのか・・・。
「絶対に新薬を開発してやる!」という根性だけでは新薬は開発できませんが、だからこそ得られる利益は大きいのですし、ぜひこのまま新薬開発を続けてほしいところです。
エーザイの今後が気になりますね!
ちなみに、製薬会社大手では、特許切れが近づくと、リストラをするところもあります。特に外資系に顕著です。
45歳以上の人は早い段階からリストラに備えて転職先を探しておいた方が良いでしょう。