著作権法28条には「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定されています。
そのため、「私の創ったオリジナルゲームが勝手に英語へ翻訳された!悔しいから自分のサイトでダウンロードさせて売ってやろう」と思ってしまう人がいると思います。
しかし、日本の著作権法ではこういった行為を許してはいません。
また、同じように、日本人が日本語で小説を書いて、その小説をイギリス人が勝手に英語に翻訳した場合にも、日本人の著作者がその英訳を勝手に売ってはいけません。
著作権法28条を見ると、
「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」
と分かりにくく勘違いしやすい規定ぶりになっているのが原因で、上記のような行為をしても良いだろうと考える人が生じているのだと思います。
しかし、著作権法28条の本来の意味は、第三者が二次的著作物である創作物を利用するときには、その二次的著作物を創った著作権者だけでなく、原著作物の著作権者からの許諾も必要、ということです。
もし、この規定を最初に述べたように勘違いして解釈してしまうと、
「私の漫画を元に勝手に同人誌が創られたら、その同人誌を複製して勝手に売ってもいいだろう」
ということになってしまいます。
それでは、同人誌を創っている人たちはオリジナル作品を創った人の下僕で、二次的著作物の創作者は何の経済的恩恵を受けられないということになってしまいます。
すると、同人誌を創る人たちが減ってしまいますし悲しいですよね。
(そもそも著作権法28条は二次的著作物が許諾を得て創られたものか、無断で創られたものかによって区別もしていないし)
で、どうして原著作権者にこのような取り戻しを認める規定になっていないのかなと思ってちょっと考えてみました。
たぶんね、こんなことなんじゃないかと。
たとえば、誰かがあなたの自転車を盗んだとします。
数日後あなたは、たまたま駅前のコンビニで自分の盗まれた自転車を発見しました。
自分のものだし、持って帰るか!
・・・と思ってしまうけど、これは許されません。
なぜなら、自力救済を認めてしまうと、力のあるものこそ正義という混沌状態に陥ってしまうからです。
たとえば、店の商品を盗まれたからといって、「返せやコラァ!」と盗んだ人を殴って負傷させて奪い返すのを認めるのは良くないですよね。
また、Twitterのフォロワーが100万人いる人が、Twitterのフォロワーが3人の人に対し、全力で「お前、俺のもの盗んだだろ!返せ!」とツイートして100万人がリツイートしてきたら、正に力こそ正義のカオス状態になります。
ついでに、痴漢の写真を撮ったら晒したくなりますが、これも許されません(いや、したい気持ちはよくわかります)。
自転車の話に戻りますが、そもそも、その自転車は既に第三者が購入したものかもしれません。
もしあなたが勝手に持ち帰ることを許してしまうと、何も知らずに、自転車を盗んだ人から自転車を買った人が損をすることになってしまいます。
これでは盗んだ人が可哀想・・・。
というわけで日本の法律では、たとえ自分の物でも勝手に持ち帰ってはいけないということになっています(自力救済の禁止)。
これを著作権という無体物に当てはめて見ると、
あなたが創作をした。
その創作物の二次創作(二次的著作物)を誰かが勝手に創った。
その誰かさんが別の誰かにその著作権を売った。
あなたは違法二次創作を見つけたので自分のサイトにアップロードした。
儲け儲け♪
→何もしらない別の誰かさんは不利益を被る
という図式になります。
だからね、感情的にはやりたくなってしまっても、気持ちを抑えなくてはいけないのです・・・。
気持ち的にはすごくわかりますが(^^;
日本は法治国家だから自力救済はいけないのです。
面倒でも法に則って違法二次的著作物を排除しないといけません。
なお、民事法では「自力救済」と言いますが、刑事法では「自救行為」と言います。
弁理士試験には出てきませんが、今回は雑学ということで覚えておいてください。
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