*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事と同じです。実際に描かれたのは2年ほど前です。リンクを下さっていた方はこのブログのアドレスに設定し直してくださると助かります。
商標は「選択物」なので、物の名前(たとえば、「りんご」や「アップル」や「机」等など)だろうが造語(作った名前)だろうが商標登録されます。
ただし、たとえばそのものについての普通名称(「りんご」について「アップル」)だったり、他人の有名商標だったり(ソニーなど)すると、その商標登録出願は拒絶されます。
日本の商標法では3条と4条にこの「商標登録を受けられない商標」が定められていて、ここに引っかからなければ商標登録されます。
大抵の商標登録出願は、3条と4条に引っかかったりどちらにも引っかからずに無事登録されるのですが、稀に「こんなん駄目だろ。・・・いや、でも大丈夫なのかも」というようなグレーな商標登録出願があります。
その例として最近面白い判例が出たのでお知らせしようと思います。
外国(インド)の事例なのですが、Ramayanという商標登録出願が拒絶されました。
このRamayanというのはヒンドゥ教のバイブルです。キリスト教で言う聖書のようなものです。
同じように、お線香のパッケージに描かれた神様の絵も商標登録を拒絶されました。
出願人は、「ヒンドゥの聖書を商標として使っても神の名を傷つけることにはならない」と主張しましたが却下されています。
最高裁は、「神の名や聖書の名称は、個人が商標として独占すべきでない」ということを理由にあげています。
そして、神様を表すシンボルや名前も商標登録できない商標として条文に記載すべきだとしました。
さて、日本の商標法ではどうなっているでしょうか。
商標法4条1項各号を見てみると、「神様の名称」等といった表現は見当たりません。
J-Platpatで調べたところ、ブッダやキリストという名称も全然ないことから、恐らくは商標法4条1項7号(公序良俗違反)を理由に拒絶しているのではないかと思われます。
なお、クリシュナやミカエル、イザナギ、アプサラス、ルシファー、メタトロン、アヌビス、エデン、カーリー、アマテラスなどは登録されていました(他にもいっぱい)。
クリシュナなんて日本でもポピュラーな神様なので、こんなんいいのかな〜と思ってしまいますが。
スピリチュアルブームのため、世界中の神様の名前が以前より親しまれるようになっていますし。
ちなみに商標登録されたときには大丈夫でも、事後的にたとえばその名前が神様の名前として有名であると認識されて個人が独占すべきでないと評価された場合にはその商標登録はたとえ除斥期間を経過していても無効にされる可能性があります。
神様の名前は神聖でイメージも良いことから独占権である商標権を得たいと考える人もいるかと思いますが、何十年も立ってから取り消されてしまうおそれもあるので商標登録するのはお勧めしません。
特に、宗教的なことは非常にデリケートな問題ですので、絶対に許せない!と考える人が現れてもおかしくはありません。
自分が信じる神様の名前をテキトーなお菓子や日用品に付けられたら、逆上してその会社を破壊しようと攻撃的なことを考える人がいることは想像に難くありません。
というわけで、くれぐれも神様の名前など神聖な名称は商標登録をしないようにお気をつけ下さい・・・
カッコいいから付けたいけどね・・・