*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事と同じです。実際に描かれたのは2年ほど前です。リンクを下さっていた方はこのブログのアドレスに設定し直してくださると助かります。
ビジネスパーソンは、学ばなければいけないことは多いのに研修に時間をかけていられません。
パパっとお手軽に学びたいものですが、お手軽に学んだものに使える知識はあまりありません。
ですから、どうしてもある程度時間をかけて研修をして新たな知識を身につける必要があります。
特に、業界や知財業界のように技術の進歩や法改正の頻繁な分野では、毎年新たな知識を身につけるために研修をする必要があります。
しかし、研修には時間(社員)もお金(会社側に)もかかります。
でも研修をしなければ質の高い仕事ができない。
どうしたらよいのでしょう。
この矛盾を解決するにはやはり矛盾マトリクスに頼りましょう。
研修を受けると知識が増えるわけですから、改善パラメータは「情報の損失」で、
悪化するパラメータは「時間の損失」でしょう(コストもかかりますが)。
24,26,28,32とでました。
順に見ていきます。
発明原理24「仲介原理」
研修で知識を身につけるのではなく、同僚や上司に仕事中に教えてもらってはどうでしょうか。
もちろん教える側には時間の損失ですが、教えることにより理解が深まることも事実です。
特に最新技術や法改正については学びたてであることが常でしょう。
発明原理26「代替原理」
発明原理28「メカニズム代替原理」
研修に代わり、CDやDVDを配布し、それを各自通勤電車の中などで聞いてもらってはどうでしょうか。
また、関連資格を取ってもらうのもいいかもしれません。
特別に研修の時間を設けず、仕事中に適宜知識を得るのもいいかもしれません。
以上矛盾マトリクスを見てきましたが、「研修等で知識を身につけ有能な人材になると転職されてしまう」という危険性が増します。
特に新人相手の研修は、知識を身につけたらサッサと他の会社へ転職されてしまう危険もあります。
ですから、できるだけ人材教育への投資は控えたいのが本音です。
そこで、「社員が優秀になると他社へ転職されてしまう」という問題についても検討してみたいと思います。
上記では、「最短の研修時間で最高の効果を出す方法」と題して、時間とコストを最小限に抑えて最大の効果を出せる方法について検討しました。
そこで新たに生まれた問題が「社員が優秀になると、他社へ転職してしまう危険性が増す」ということです。
この問題を解決してみたいと思います。
理想は「社員には優秀になってもらって会社への忠誠心も高い」という状態を保つことです。
しかし、そんなことは出来るのでしょうか。
矛盾マトリクスに答えを尋ねてみたいと思います。
改善パラメータは「生産性」でしょうか。
悪化するパラメータは「情報の損失」でしょう。
13,15,23とでました。
順に当てはめていきます。
発明原理13「逆発想原理」
逆に発想して、「優秀な人材が社外へ行ってしまってもいい」と考えてみてはいかがでしょうか。
独立心の旺盛な人は会社を飛び出して起業したいものです。
そんな人は、たとえ会社を辞めても自社へ新たな仕事や人を持ってきてくれるかもしれません。
お世話になったお礼として自社に有利な情報や優秀な人材を連れてきてくれるかもしれません。
それは何年先になるかわかりませんが社内にいるうちに社員を大切にしておくと恩返しをしてもらえる可能性があります。
発明原理15「ダイナミック性原理」
縛りをかけて転職出来ないようにしてしまってはどうでしょうか。
または転職されてもその能力を100%発揮できないようにしてしまいます。
たとえば、契約で、「当社で就業中に知り得た情報を転職後の会社で用いることは許さない」としておけばいいでしょう。
ただし、不正競争防止法に違反する可能性が高いのでその契約には注意が必要です。
社内の個人情報や営業秘密に関しては契約で情報流出を防ぐことが出来ますので、予めしっかり契約を結んでおくべきでしょう。
従業員が発明者である場合であって、就業中にした発明についてはそのような縛りをかけることができます(特許法35条)。
発明原理23「フィードバック原理」
社員からフィードバックをもらいましょう。そして、社員が快適に過ごせる会社作りに励むのです。
心地よい職場ならわざわざ転職しようとは思いません。
この他にも、給料の高さや会社のブランド力などもかかわってくるでしょう。
なお、私は企業の社内研修を担当することがありますが、会社の社長さんの意図によってその研修内容は変わってきます。
「知財人材を育てたい」とお考えの社長さんのためには、社員がしっかりとした知財の知識を身に着けるために少数精鋭に対し法律に基づいた堅実な研修をしますが、「著作権侵害など危険なことを避ける程度の知識を身につけてくれればいい」とお考えの社長さんのためには知財の興味を持っていない人でも聞いていて眠くならない面白い研修にするようにしています。
基本研修というものは社員にとってはできれば受けたくないものなので、いかに効果のある研修をするかということは講師にとっても重要なのです。