漫画家さんたちには、普段漫画の背景を描く時の参考資料に何を使ってよいのか悩んでいる方もいらっしゃると思います。
自分で写真を撮りに行く人もいれば、アシスタントさんや友人に写真を撮ってくるようにお願いする人もいるでしょう。
自分で撮った写真なら著作権の心配をすることもありませんし、他人を写していないのなら肖像権の心配をすることもありません。
建物の著作権についての参考記事:建物の写真や動画を撮っても大丈夫?
しかし、自分で撮りに行くのは大変ですし、そもそも未開の地や宇宙を題材にしている作品では写真を撮ってくることをお願いすることもできません。
そんなとき、ネットの画像や写真、空想絵画集といったものを参考資料に使いたくなることもあるでしょう。
しかし、これは危険な行為です。
漫画家がネットの画像や写真を使うときの注意点
ネットでは、検索用語を打ち込めばどんな写真・絵画でも出てきます。
人物の顔を使うのは流石にマズイだろうとは思っても(なお、人物の写真を利用すると肖像権の侵害になる可能性があります)、建物や施設や自転車くらいは模写しても良いだろうと思う人はたくさんいるようです。
しかし、これは写真を撮った人(絵を描いた人)の著作権を侵害する行為です(著作権法21条)。
少し書き換えればいいやと思っても、それで済むとは限りません(同20条)。
では、どうすれば良いのでしょうか。
手間がかかりますが、ネットで検索して出てきた写真や絵を利用する場合にはその著作権者に許諾をとります。
場合によっては無料で済むでしょうし、お金がかかることもあるでしょう。
基本的に誰でも簡単に撮れるような写真は許諾さえ貰えれば無料で使わせてもらえることが多いと思います。
都心の道路の写真などですね。
それに比べて、特別な場所に行かないと撮れない写真や構図が特殊な写真については、プロのカメラマンの写真であることが多いでしょうし、それなりの費用がかかってくるでしょう。
しかし、そもそも著作権者に連絡を取れないことや連絡しても返事が返ってこないこともあるでしょう。
これらのことを考えると、ネットで見つけた写真の利用は少し面倒です。
ですから、背景集のようなものを購入すると安価ですしお手軽に利用できて便利です。
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こんな西洋ファンタジーの背景集もありますからファンタジー漫画を描く人は助かりますね。
アマチュア漫画家の人たちはこうした安価で手に入る背景集を最大限に活用するのが良いと思います。
しかし、プロの人気漫画家となるとまた問題が起きてくるでしょう。
それは「プロのプライド」です。
人にもよりますが、プロになると、「アマチュア漫画家と同じような背景集を参考資料に使いたくない」と考える人が出てくるようです。
すると、こうした背景集に頼ることはできなくなります。
では、どうしたらよいのでしょうか?
解決策の一つとしては、冒頭に述べたように自分またはアシスタントたちで写真を用意することですがそれは困難です。
(なお、自分やアシスタントが写真を撮る場合についてですが、許諾なく住宅の外観を撮影する行為は著作権の侵害とはなりませんが、窓から人の姿が見えた場合などは絶対に写さないようにしてください。)
そこで、お手軽に写真を得る手段としては、「SNSを利用して写真提供を呼びかける」ということが考えられます。
現代では、漫画家自身がSNSをしていることも珍しくはありません。
人によっては作品と発言が違いすぎて炎上したりファンが離れたり・・・といった事態に陥っている人もいますからSNSさえすればファンが増えるというのは早計ですが、非常に便利なツールです。
このSNSを利用して、漫画家が「こういう写真が欲しい」と投稿し、一般ユーザーから写真を提供してもらうと、フォロワーの多い漫画家なら割と簡単に望みの写真が手に入るでしょう。
この際、著作権などの取扱には注意してください。後のトラブルを防ぐために著作権ごと買い上げた方が良いですし、その際契約書にサインもしてもらうべきでしょう。
あとになって、「この漫画家に俺の写真提供したぜ」と漫画のコマと一緒に投稿されたりするかもしれません。その程度なら害はありませんが、その人があなたの専属のカメラマンと自称したりするかもしれませんし、想像もしないようなトラブルが起きる可能性があります。
ですから、安易に知らない人から写真を貰わずにしっかりと権利処理をしてください。
また、著作物ではない建造物でも、対象物が特定できる場合には書き変えるようにしたほうが良いでしょう。
(例えば、○○駅前のラーメン屋を描いても問題にはならないでしょうが、漫画の展開上そこが破壊されることになる場合などは好ましく思われはしないでしょう。)
一般の写真集や雑誌などの写真・絵画を利用したい場合
さて、背景写真の利用方法についていろいろ述べましたが、実は一般雑誌で見かけた背景を使うこともできます。
それは、許諾を得てクレジットを入れるという方法です。
確かに手間はかかりますが、連絡先がはっきりとわかりますから、ネットで返事がくるかどうかわからない人から許諾をもらうより余程効率的です。
まとめ
漫画家さんはできるなら自分で背景写真を撮ってください。
または上で述べたような漫画に利用可能な背景集を購入してください。
写真集や一般紙の写真を模写する場合には、使用許諾を得てください。
ほんの少しなら大丈夫ですが、出来る限り著作権者から許諾は得てください。
そうしないと、SNSで一般人から晒し上げられ、炎上することになります。
SNSでの私刑は恐ろしいです。
少し著作権侵害をしただけで人間性まで否定されたり過去の作品の評論(主に悪口)が始まります。
これでは安心して漫画を描くことなどできないでしょう。
心の平穏のためにも、「マンガ以外の美術作品への敬意も忘れない」ことが大事です。