2ちゃんねるや質問掲示板のように、ウェブサイトの所有者ではなく、そのウェブサイトを利用しているユーザーが掲示板に書き込むことによってコンテンツが増えていくサイトが存在します。
このようなサイトに書き込まれた投稿については、原則として書き込んだ人が著作権を有します。
しかし、どんな場合でも著作権を絶対視してサイト管理者が書き込みについて全く手を加えることができないと、システムのメンテナンスがあったときなどにまでその投稿を維持しなくてはいけなくなり現実的ではありません。
したがって、ウェブサイトの管理人は利用規約などに著作権に関する特別な条項を設けることが通常です。
まず、最低限度の改良などが管理者に許される条項として以下のような例が考えられます。
「当社は、本サービスを利用いて投稿するコンテンツについて、本サービスの円滑な提供、当社システムの構築・改良・メンテナンス等に必要な範囲内で、変更、切除その他の改変を行うことができるものとします」
この場合、サイト管理者はユーザーによって書き込まれたコンテンツを集めて書籍にするようなことはできません。
次に、投稿者の投稿を集めて書籍化したり、ユーザーの投稿したコンテンツを使って有料課金サービスを始めるような場合について考えてみましょう。
この場合の条項はこんな感じの文章になるでしょうか。
「ユーザーは、本サービスを利用して投稿するコンテンツについて、非独占的・無償・サブライセンス・譲渡可能な使用、複製、配布、派生著作物の作成、表示および実行に関する権利を当社に付与するものとします。」
つまり、この場合もコンテンツについての著作権は原則として書き込んだ人に帰属しますが、ウェブサイトの管理会社は、無償でユーザーのコンテンツを利用(書籍化したり、さらには映画化したりなどなど)できるわけです。
ただし、著作権を持つ書き込んだ人が自分で書籍を出版したり他社から出版する場合にこのウェブサイトの管理者はその行為を禁止することはできません。
最後に、ウェブサイト管理者にとって最も有利な条項について述べてみましょう。
最も有利ということは、著作権者に著作権を放棄してもらい、ウェブサイト管理者だけが独占的にそのコンテンツを使用できる状態です。
条項は以下のようになるでしょう。
「ユーザーは、本サービスを利用して投稿するコンテンツについて、その著作権その他の知的財産権(著作権法27条および第28条に定める権利を含む)を投稿時に、当社に対し無償で譲渡します」
この条項なら、ウェブ管理者は著作権を気にすることなく一方的に書籍の出版などをでき、さらに、ユーザーが投稿したコンテンツを他人に使わせることを禁止することができます。
この条項はウェブ管理者にとって最も有利なのでサイト運営者としてはできればこの条項を規定しておきたいものです。
・・・が、このような規定を設けることはお勧めしません。
なぜなら、
ユーザーに嫌われるから
です。
自分が書き込みをしたユーザーの立場に立って考えてみてください。
面白いことや役に立つことを書き込んだのに、そこから収益をあげるのは自分ではなくてウェブ管理者。しかもそいつがいくら稼ごうが自分には1円も入ってこない・・・
となると、ユーザーが怒って当たり前です。
2014年にユニクロがUTme!というサービスを立ち上げましたが、利用規約が上記のような文言だったので炎上してしまい、たった1日で規約を変更することになってしまいました。
また、テレビ朝日の動画投稿サイト「みんながカメラマン」というサービスでもテレビ朝日に一方的に有利で何か問題が起きた時はユーザーの責任とするという規定が盛り込まれていたために炎上しています。
一方的に会社側にだけ有利な規約を作ってしまい炎上してしまうと、ブランド価値を下げてしまう危険性があります。
書籍出版の際には権利関係が錯綜して大変になりますが、あまりにもユーザーの気持ちを踏みにじるような利用規約は避けたほうが良いでしょう。
ところで、私はその昔、電車男がヒットしたときに「私も書き込んでおけばよかった!」と感じたことがあります。友人の弁理士は、よくチェックしていたそうですが書き込んではいなかったとか。
あなたが電車男なんじゃないの?と思うような素敵な人でした(笑)
まぁ、書き込んだところで著作権使用料が入ってくるわけではないんですけどね・・・。
掲示板は大勢の人が共同で著作活動を行っていることになるので権利関係も複雑ですし。
そもそも匿名掲示板だから本人かどうかの特定も難しいし。
まあ、2ちゃんねるに書き込む時点で利用規約に同意していることになるので、後からとやかくいうことはできません。
でも、書き込んだ人が大勢集まって利用規約を変えてくれ!と言ったらどうにかなるかも?
ところで、この記事中に書いてある著作権法27条・著作権28条について詳しくは以下の記事が参考になると思います。
それから、サイト管理者にはこの記事を読んでいただければより著作権についての理解が深まることと思います。