アイデアと著作権法とコンセプトアート

もう3ヶ月以上前になりますが、このブログでヘッダーを描いてくださっている画家の堀さんがお誘い下さったので、アジアアートの展覧会に行ってきました。

堀さんのブースに行くと、彼にしては珍しく3Dの作品があったので、「作品の美しさが際立っていいね」と素人発想の感想を述べたのですが、堀さんはどうも気に入っていらっしゃらないようでした。
というのも、作品を見た人から「この作品のコンセプトは何?」とか「コンセプトがわからないんじゃ埋もれちゃうよね」という類の感想を聞かされたそうなのです。

芸術というものは、受け手によって感想も変わるし、自由に楽しんで良いと思うのですが、「専門家」視点ではそうもいかないようですね。

(この写真は、ツクモ神様とお爺ちゃんばかり描いている堀さんにしては珍しい美人画)

特に海外ではコンセプトが重視されるようです。
どれだけ斬新なコンセプトであるかが作品の要だとすると、芸術作品の見方や楽しみ方も変わるな・・・と思ってしまいました。

基本的にコンセプチュアルアートはアイデアアートとも言いかえられ、表現を評価するのではなく新規なアイデアを評価します。
現代アートなんてそんな作品が多いですよね。
虚無の中に有形のものを表現するというアイデアとか、デュシャン作品みたいなものです。

これらの作品は現行の日本の著作権法では守られにくいと考えられます。

なぜなら日本の著作権法で守られる著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいうのであり(著作権法1条1項1号)、アイデアは著作権法では保護されないからです。

コンセプトアートは、「世界で初めてそのアイデアをアートに落とし込んだ人」が評価される世界です。
創作物の表現を保護する日本の著作権法とは相容れません。

似たようなコンセプトでも表現が違うのなら著作権法で守られます。

アイデアを保護するのは特許法等の役目ですが、アートと特許権というのもどうもしっくりきません。
コンセプチュアルアートを保護したいと思ったら著作権法の法改正が必要かなあと思います。

多くの人に身近な法律であるにもかかわらず時代に合っていない部分もありますので、思い切って大改正してくれてもいいのにと思ってしまいます。

だって、コンセプトアートは、二番煎じという批判さえ恐れなければ、盗んだって著作権侵害にならないのだから、とりあえずなんでもいいから有名になりたいと思ったアーティストへの「コンセプトのパクリ」のインセンティブになってしまいます。

もちろん、もしコンセプトアートについて保護されるようになると、誰が元祖なのかについて争いが起きてしまうと思うので、その点についてはアート日誌をつけたり、改ざんできないように認証を受けるとか何かしらの方法を採らないとずっと争いが続いてしまいそうです。

また、コンセプチュアルアートを何でもかんでも守るようにしてしまうとまた弊害が生まれてしまうので慎重に考えなければいけません。

表現物としては取るに足らないつまらないもの(平凡なものなど)をありえない場所に置く等してそれだけで著作権が与えられてしまっては、誰でも思いつくようなアイデアが著作権侵害にされてしまう危険性がありますからね。

 

ちなみに、著作権法を改正までしなくても、他の方法によってコンセプトアートを守るという方法も考えられます。

ただ、条文解釈に無理が生じてしまうので著作権法を変えないと厳しいかなという個人的な印象です。

 

斬新で目を引くアートの第一人者が正当な評価を得られるようになると、面白いアートも生まれてきそうです。