車や新幹線のおもちゃのデザインを真似しても大丈夫?

質問があったので今日は意匠法という知的財産権に関する法律の話題を採りあげたいと思います。

彼女から「誕生日プレゼント何がほしい?」と聞かれたら、「君がくれるものならなんだって嬉しいよ」と答える彼氏もいれば、「フェラーリかマクラーレン」と答えてドン引きされている彼氏もいることでしょう(いや、いない)。
そんなとき、「じゃあ、ミニカーで我慢してね」といってスポーツカーの玩具をプレゼントするのが彼女の正しい作法・・・かどうかは知りませんがそういうことをする彼女もいるでしょう。

このように(?)、正規品の代替品として、玩具というものはそれなりの価値を持っていると言えます。
エルメスが高くて買えないという人がエルメスっぽいデザインのバッグを買ったりするのと近いのかもしれません。

さて、玩具に需要があるということは、商売になるということです。
人気デザインにあやかって玩具の販売、したいですよね!?

日本の意匠法では、たとえ車に意匠権が存在しても、物品が違えば意匠権の効力は及ばないことになっています。

法律的な用語を使って説明すると、意匠は「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの組合せ」(意匠法第2条1項)であり、物品の形態のことをいいます。したがって、意匠の「同一又は類似」は、物品と形態の両面から「同一又は類似」に該当するかどうかを判断します。

物品と形態の双方が同一の場合を「意匠の同一」といい、物品が同一又は類似していて、形態が類似している場合を「意匠の類似」といいます。
自動車「マセラティ」の物品は意匠法上「自動車」であり、おもちゃの自動車の場合は「自動車おもちゃ」となります。「自動車」と「自動車おもちゃ」では物品が違うため、形態が同一であっても物品が非類似であり、「意匠非類似」ということになります。

言い換えると、スポーツカーの意匠にかかる物品「自動車」とミニカーの意匠にかかる物品「自動車おもちゃ」では物品がことなるために、意匠権の侵害とはなりません。
車のデザインなんて、デザイナーが必死で考えだしたデザインをそのままパクるだけで簡単なのに・・・です。

この話を聞いて、「よっしゃ、パクったろか」と思った方、残念ながら無理だと思います。

なぜなら、各社は「おもちゃ」についても同一のデザインで意匠権を取得しているからです。

たとえば、こちら。マセラティの玩具の意匠権です。

マセラティ(自動車)の意匠権は当然取得されています。

他にもランボルギーニやフェラーリなども当然意匠登録されています。
自動車だけに限らず新幹線とその玩具も意匠登録されています。
他にも魅力的な建築物も意匠登録出来るようになったので、ミニチュアおもちゃを作る場合には要注意です。

なお、物品全体だけでなく、一部のデザインを「部分意匠」として登録することもされています。したがって、魅力的な物品の意匠の一部だけを真似して侵害から逃れるということは出来ません。

たまに玩具で意匠権を取るのを忘れていることがあるかもしれませんが、大抵は玩具でも意匠権が存在すると考えたほうが良いでしょう。
また、たとえ権利者が意匠権を取り忘れていた場合でも不正競争防止法という別の法律にひっかかってくる可能性があります。
そのため、魅力的なデザインのパクリというものはやりにくくなっています。

なお、欧州の意匠制度では日本に比べ物品性の要件が甘いので、玩具で意匠権を取っていなくても、対象物の全体的印象が同じ場合には意匠権の侵害となります。

これではパクリは出来ない・・・!と思った方、人気デザインを真似ることが出来る方法があります。
それは、一つには権利者から許諾を得ること(当然お金がかかります)。
もう一つは、意匠権が消滅したもののデザインを真似ることです。

意匠権は永久権ではないので一定期間経過後は権利が消滅します。
そのため、2,30年以上前に流行ったデザインなら真似をしても意匠権の効力が切れている可能性があります。

あとは意匠権の瑕疵を見つけて消滅させるという方法もありますがこれは現実的ではないので、2番目の方法が良いと思います。
もちろん、玩具等を制作する前には意匠権の存在について調査すべきです。
あと1年権利が残っていた!ということもありますので。

心配な場合にはご相談ください。コメント欄で質問してくださっても大丈夫です。