弁理士・特許事務所の選び方【商標】

自社ビジネスを守るには商標権が必須らしい。でも、自分でやると失敗する危険があるし弁理士に頼みたいけれど誰に依頼すればいいのか分からない・・・。何を基準に選べば良いのだろう?

こんなお悩みをお持ちの方に、弁理士及び特許(知財)事務所*の選び方を弁理士が解説いたします。
中立性を保つため、どこかの事務所を推すということはしませんし、当然「私にご依頼ください!」なんて結論にするつもりもありません。

弁理士の方々には耳が痛いこともあるかと思いますが、ユーザー視点で考えるといずれの主張もご納得いただけるかと思います。

* 特許事務所という名称ですが、商標も扱っています。「特許庁」という行政機関では特許出願の他に商標出願も扱っており、同じように特許事務所でも商標出願を扱っているからです。
ただし、特許も商標もどちらも知的財産権という意味では同じですが、両者の手続きは異なることから注意が必要です。

なお、弁理士資格とは商標出願の代理をすることが許された国家資格です。弁理士は、主に特許事務所または知財事務所で働いています。

商標出願の基礎

商標は出願するだけで12,000円、商標登録時には28,200円も特許庁(特許事務所ではありません)に支払わなければいけません。
自分で調べて自分で商標申請することも出来ますが、その場合でも上記の費用はかかってきます。

すると、手続きを間違えてしまい、もういちど商標の申請をやり直すときには新たに合計で40,200円かかってくるわけですから、自分の時間を失っただけでなく、お金も無駄にしてしまうわけです。

そのため、ビジネスを真面目に考える人ほど、弁理士(特許事務所)に依頼すべきです。

髪の毛を切るとき、自分で切ったり家族に頼めば体裁は整うかもしれませんが「見た目」という効果が保証されるかどうかはわかりません。
また、商標の場合は髪の毛とは異なり、ビジネスの根幹を揺るがしかねない重要なものですので、自分でやって失敗しちゃった。では済みません。
やはり、餅は餅屋に頼んだほうが安全です。
そして、弁理士なら誰でも良いわけではありません。腕の良い信頼できる弁理士に頼むべきです。

弁理士(特許/知財事務所)の選び方

商標権の管理がしっかりしている

商標権を取得するだけでなく、商標権を維持・管理することも弁理士の仕事です。
商標権の寿命は5年または10年(最初に指定できる。5年のほうが安いが割高。更新登録により何年でも商標権は生き続ける)ですので、寿命が来そうなときにすぐに延命手続きをとってくれる弁理士でないと困ります。
管理がしっかりしていないところは延命手続きも延命が必要であることの連絡すらしてくれません。

また、どんなにしっかりしている弁理士がいるところでも、弁理士が一人しかいない事務所の場合は、その弁理士に5年後、10年後に何かあった場合にあなたの大切な商標権を管理してくれる人がいなくなってしまうので、せっかく取得した商標権がいつのまにか消滅しているという恐ろしいことになります。

自分は5年後に絶対に生きていると証明できる人などいません。
弁理士が一人だけの事務所はなるべく避けましょう

特許事務所に何人の弁理士がいるかを調べるには、特許事務所のホームページの弁理士紹介を見れば一目瞭然です。弁理士が一人しかいないであとはスタッフだけ、またはそもそもスタッフすらいないという場合は一見良さそうなところでも避けておいた方が無難です。
(提携弁理士がいても一緒に特許事務所や特許業務法人を経営しているわけではないので関係ありません)

ただし、既に以前からその人となりを知っている仲の良い弁理士がいる場合には安心して頼めるのでその人に依頼すると良いでしょう。依頼する代わりに自分のお店を利用してもらえる、というように持ちつ持たれつの関係は中小企業にとっては大事だと思います。

誇大広告をしていない

ここ最近は格安を売りにした特許事務所が目立っています。
しかし、格安で高品質を担保できるわけがありません。何か理由があって安くしているのです。

たとえば、担当弁理士の実務経験がまだ5年未満なので品質の高さを売りに出来ないとか、品質を犠牲にして数をさばくことに主眼を置いている等が考えられます。
品質が低いのに格安商標出願をする弁理士が高品質を謳うのは誇大広告と言えるでしょう。

なお、広告費が支払い費用に上乗せされている可能性もありますので、ご注意下さい。

商標出願の経験が豊富な弁理士がいる

商標の実務経験の長い弁理士が在籍している特許事務所を選ぶべきです。

また、特許出願の片手間でやっていないことも大事です。これはどういうことかというと、特許事務所のメインの仕事が特許出願である場合、商標出願はおまけ的に処理されます。
すると、品質がグッと下がってしまうのです。

特許のことは特許弁理士に。商標のことは商標弁理士に依頼したほうが良いでしょう。

 

外国商標出願が得意

商標権は国ごとに成立するため、外国でもビジネスをしている場合、日本で商標登録を受けているだけでは不十分です。そのため、外国でも商標出願をする必要があるのですが、外国出願を得意としている特許(知財)事務所でないとトラブルに巻き込まれたり通常よりも高額な費用がかかってきます。

外国での商標権取得は動く金額も大きく時間もかかるため、日本の商標出願だけでなく、外国の商標出願にも詳しい弁理士に依頼しましょう。
なお、弁理士が誠実な人柄で無い場合は高額の手数料を取られます。ホームページに書いてある「低価格」という表現を信じ込まずに厳しい目で判断するようにしてください。

 

弁理士費用や印紙代(特許庁費用)が明示されている

はっきりいって、特許庁費用は複雑でわかりにくいです。始めてみた人には「区分ごとに◯◯円」という料金表を見ても首を傾げることしか出来ないでしょう。

料金表が無かったりあったとしても見にくい場合には隠れた料金を請求される危険性があるので要注意です。

「明瞭な料金体型」といいつつ見にくい料金表を提示しているところはいくらでもあります。

 

なるべく安い

安さを期待するのは当然です。でも安いところは安い代わりに品質を下げている危険性が高いのでお勧めは出来ません。平均的な商標出願(1区分)にかかる料金は出願時費用と登録費用合わせて6万円です。これより高いと品質が高い可能性が高まりますが割高感は否めません。

一方、これより安いのはいわゆる格安商標出願ですので危険性が高まります。

 

お金にがめつくない

お金にがめつい人はなるべく楽をして稼ごうとします。そのため、質が下がりがちです。
でも、お金にがめついかどうかをホームページからだけ判断するのは難しいです。
もしその弁理士がブログやTwitterをしていたらぜひ発言をチェックしてみましょう。
話題がお金やビジネスのことばかりだったら推して知るべし、です。

 

じゃあ、結局どこの特許(知財)事務所がいいの?

上述した要件を全て満たした特許(知財)事務所なんて存在するのでしょうか。

実は、複数存在します。

そして、一般の方にはその名前は知られていません。
弁理士という名称と同じように、特許事務所という存在は一般的にはよく分からない存在です。

では、良い特許事務所を知るにはどうしたら良いでしょうか。

一番良いのは、「実際にその特許事務所に依頼したことのある信頼できる知人から紹介を受ける」ことです。

あなたとの関係性をずっと維持していきたいと思っている人、そんな人が勧めてくれる特許事務所なら安心して利用出来ます。

最近は商標への意識が高まっていることから、身近な人に話を聞いてみれば、一人や二人の特許事務所利用者はすぐに見つかると思います。

 

というわけで、良い特許事務所の選び方(判断基準)を述べてきました。これを参考にして商標権を取得されてください。

といっても、具体的な事務所名を書かないと不親切かもしれませんね。

「具体的な特許事務所名をあげてくれないとわからないよ」というご意見をいただくようでしたら、特許事務所のご紹介もしてみようと思います。

その場合には、もちろん心から良いと思える特許事務所だけをご紹介いたします。

記事に関して質問やご要望がございましたらお問い合わせください。