※著作権侵害について最後に追記しました。
ラフォーレのテプラ広告が物議を醸しています。
酒井いぶきさんというデザイナーの作風をパクったためというのがその理由です。
酒井いぶきさんの作品がこちら。
そして、こちらがラフォーレの広告です。(キングジムさんのツイートより)
ラフォーレさんとタッグを組みました→ テプラにもほどがあるッ! ラフォーレ原宿の「テプラ」を使った広告ビジュアルがヤバい! 見やすすぎて逆に混乱する – ロケットニュース24 https://t.co/Nx0eRTfmVH
— キングジム (@kingjim) January 24, 2020
見た目、そっくりですよね。
キングジムさんのテプラを使っているのでそっくりになるのは当たり前と言えば当たり前かもしれません。
そして、こちらが過去にラフォーレと仕事をしたり話し合いをしていたにもかかわらず、ラフォーレからもアートディレクターの大野真吾(Wieden+Kennedy)さんからも何の連絡もなく、勝手に似ている作品を作られてしまった酒井いぶきさんの怒りのツイートです。
https://twitter.com/sasasasakaiii/status/1220581623718006785?s=20
このツイートを見たとき、私は、「なんて汚い言葉を使う人なんだろう」と思ってしまいました(すみません)。
だって、こんなツイートの連続なんですよ。
汚い言葉が続いたため、彼女のキャラクターや置かれた状況を知らなかった私は怖いと思ってしまいました。
・・・ところが、です。
酒井いぶきさんとラフォーレ、そしてアートディレクターとの過去のやり取りがあったこと、そして「裏切られた」ことを考えると、この怒りはしょうがないなと同情してしまいました。
著作権法的にはラフォーレのやったことは「著作権の侵害」ではありません。
ところが、彼女の作品や彼女がラフォーレのメイン客層から人気があるということを知っていた上でコラボの話も何も持ち出さずに彼女の作風だけ「パクった」というのは誠実な行為とは言えません。
繰り返しますが、ラフォーレのやったことは著作権法的には侵害にならない行為なんです。
しかし、デザイナーの気持ちを踏みにじることをしてしまった。
だからこそこれだけ炎上してしまったのだと思います。
私には酒井いぶきさんの気持ちが痛いほどわかります。
著作権侵害にはならずにコンセプトや作風だけパクるというやり方は法が守ってくれるわけでもなく、その怒りをどうして良いかわからないので無力感に苛まされるということがわかるからです。
つい3日前にアイデアをパクられた場合の対処法とパクる際のマナーという記事を書いたばかりでしたが、正にこの記事に書いたようなことが起きているわけです。
パクられた方は泣き寝入りするしかないという悲しい状況とどうすればよいかについて説明しているのでぜひご覧いただきたいと思います。
この記事の最後に書いているように、「パクった方は正式に謝罪すべき」が私の持論です。
なぜなら、謝罪しない限り盗まれた方は怨念を抱き続けるからです。
偶然似てしまったのなら仕方ありません。
でも、明らかに相手が先に発表していてそれを見て創作したのなら、先人の作品をリスペクトすべきなのです。
デザインの話だと遠く自分には関係ないと思う人が多いと思うので、もっと身近なブログ記事やツイートを例に挙げてみるとわかりやすいかもしれません。
ある内容についてブログ記事やツイートを公表したとします。
数日後、明らかに自分のブログ記事やツイートを見た人が同じような内容でブログ記事やツイートを投稿していたらどう思うでしょうか?
パクったな!と思いますよね。
著作権法的には侵害ではないけれど、私はこれを「パクリ」だと考えます。
先人へのレスペクトが全くありませんから。
(まあ、素直にパクリでしたと後から付け加える勇気を持つ方はいないと思うので、参考にさせていただきましたとさり気なくアピールしておくと良いと思います)
話をラフォーレと酒井いぶきさんに戻しますが、ラフォーレ側は酒井いぶきさんに正式に謝罪するのが一番良いと思います。
それで全てが丸く収まります。
著作権侵害ではないから良いという話ではないのです。
何より、ラフォーレは別作品でもパクリをしていることが判明しています。
めっちゃデザイン好き〜!最高〜!と思ってロンドンの「coal drops yard 」というショッピングモール?のインスタをウォッチしてたんですが、さっきラフォーレのインスタ広告で出てきたやつが、完全にそれの真似だ〜!ってやつでした。 pic.twitter.com/xmp7tzuCzh
— 中屋辰平 / Shinpei Nakaya (@shinpui) January 14, 2019
ご覧の通り、ロンドンのショッピングモールCoal Drops Yardのデザインに酷似した広告を作っています。
複数デザインのパクリをしていると最早「パクっていない。偶然似ただけ」という言い訳は通用しないでしょう。
著作権法を超えた次元での「アーティストとしてのモラルやマナー」というレベルで考えるべき問題だと思います。
デザイナーの皆さん、それから小説家やブロガーなどその他の様々な創作に携わる方々は、「著作権侵害にはならないけどパクリ」に該当する創作の取扱について、十分にご注意ください。
参考にしているとどうしても似てしまいパクリになる虞れがあるので、オリジナリティの追求こそアーティストの矜持だと思っていたほうが良いでしょうね。
追記:ちょうど3日前に同じような内容のブログ記事を書いていたためにお気持ち的な内容で片付けてしまった本記事ですが、知人弁理士から「表現の対比をせずに非侵害を導くことはできないから良くない」との指摘を受けたので追記します。
民事訴訟法上、権利者がどの表現が著作権違反であるかを決められるので、素人には「単なるテプラを使っただけのアイデア」に見えるものでも著作権侵害を問える可能性は十分にあります。
酒井いぶきさんが「著作権の問題ではない」「テプラを使ったデザインのアイデアを独り占めするつもりでもない」という趣旨の発言をされていたので、著作権侵害訴訟は最初からないだろうと決めつけての記事でした。
弁理士が意見を述べるなら、特許権侵害訴訟のときと同じように、一致点、相違点の対比をまずすべきです。
大事な部分を端折りすぎて素人受けを狙った浅い意見だなと我ながら思います。
なお、過去に金魚電話ボックス事件で述べたように、アイデアに著作権はありません。
この事件ではブログ記事公開後訴訟が提起され結局アーティスト側は敗訴しました。どうもアーティストは利用されただけというのが真相のようで関係者皆が不幸になっている事件だと思いました。
このようにアートのアイデアは現在の日本では保護されないのですが、これについては過去にアーティストさんたちから意見を聞いたことがあるので記事を書いてみようと思います。
初めまして。
いつも記事を拝見させて頂いております。
今回の件に限らずですが、アーティストやデザイナーの方がもっと知財権について意識を高めるべきでは?と個人的には思います。
酒井いぶきさん自身、今回はパクられたと言って声を上げていますが、彼女の作品を拝見した見たところ、有名企業のロゴやアニメ、漫画のキャラクターをそのまま使用した作品を販売していました。(現在は対象のページは削除されていました。)もし、許諾を受けずに販売しているのなら、非常に知財に関する意識が低いと言わざるを得ません。(許諾を受けている可能性も否定は出来ませんが。)
さらに今回の作品に関しても、テプラを用いた表現というのは昔からあります。それにも関わらず、あのような発言をされてしまっては、正直、企業側するとたまったもんじゃありません。
アーティスト側も本当に法律的にNGなのか?どうなのか?という事を考えてから発言をしてもらいたいと思います。
ご意見ありがとうございます。正にその通りでアーティストも知財への意識を高めなければいけません。自分の権利を守るためだけでなく、他者の知的財産権を侵害しないように最低限著作権の知識は身につけるべきでしょう。それから、商標権や意匠権についても少しでいいので知っておくと絶対にためになります。
知財の啓蒙活動は特許庁やINPITも頑張っています(商標拳の動画等)。もちろん私も出来ることはしています。
でも、もっともっとやることはたくさんありますね。頑張ります。
なお、最近は知財への意識が高いアーティストさんは増えていらっしゃる印象です。このブログのヘッダーを描いてくださっているイラストレイターさんは、些細なことでも心配をして質問してきます。
一度痛い目を見るまでは意識しないという方がまだまだ多いのは悲しいですが早い段階で知財の知識を身につけておくとアーティストさん自身にもプラスになるでしょう。
このお嬢さんは単なるイタい地雷デコレーターさんにしか見えません。
ラフォーレの客層の20%超が知るアーチストなら話は別ですが。
広告主の社会的責任は、「盗作・一部流用・参考活用」した
職業意匠家にペナルティを与えることだと思います。
5輪マークの時は、大会委は被害者面で○ノケン1人に被せました。
ラフォーレが「商業的に謝る」のは止めませんが、法律的な
考え方で対処するなら、制作会社に謝らせたり・企画や
スペシャルサンクスのクレジットを入れさせることでは?
寅さんの横尾忠則氏のように。
過去の作品が酒井いぶきさんと他のアーティストとのコラボではなくて盗用だったと知って驚きました。他者の著作権を侵害しておきながら自分の権利だけは主張しようというのは虫が良すぎますね。
もちろんラフォーレ側が盗用について謝ることは誠実な行為ですのでやるべきだとは思います。
他の方からもコメントをいただきましたが、アーティスト側の知財遵守の意識がまだ足りないようです。
我々も知的財産権の大切さを浸透させるために尽力して参ります。