弁理士試験受験生向けにマンツーマンの上級論文ゼミを行っているのですが、予め「難易度が高いです」とお伝えしておいたおかげでレベルの高い人ばかり集まりました。皆さんやる気がある人達ばかりで教える側の人間としては嬉しい限りです。
さて、いろいろな方の答案を見ていて上級者でもやってしまいがちなミスに気づいたので書いておこうと思います。
論文試験以外にも弁理士試験についてはこのブログのカテゴリー「弁理士試験」で色々と書いているので御覧ください。
テンプレ(項目列挙)は危険
「侵害警告を受けた場合に取り得る措置」のように、書くことはある程度テンプレ化できます。私も受験生のときはレジュメを暗記していました。上級者は当然暗記していることと思います。
でも、これを惰性でそのまま吐き出してしまうと危険です。運が悪いと自爆します。
どういうことかと言うと、論文試験では「題意把握」が最も重要であるところ、暗記したことを吐き出すだけで済むような事例問題が出題される可能性は低いからです。
趣旨を書くような問題では暗記したことをそのままアウトプットすれば良いでしょう。
しかし、事例問題の場合は事例に即して解答することが求められます。なのに誰もが書いてくるテンプレを書かれても「だから何?この問題ではどうなのよ?」と思ってしまうのです。
「とりあえずテンプレを吐き出す」クセがついている人は、「その問題では不要なことや書いてはいけないこと」を習性で書いてしまう虞れがあるので要注意です。
対策としては「問題文をよく読む」ことです。問題文をしっかりと読み込んで、「あ、これはレジュメで覚えたテンプレとは少し違う」と気づき、条文で答えることができれば合格です。
マンツーマンゼミではこの題意把握ができるように、繰り返し手を変え品を変えあらゆる角度から問題を出題し、どんな問題が出題されても臨機応変に答えることができるように訓練しています。
この人は絶対合格だろうと思われる上級者(前年度惜しいところで落ちた人)でも項目列挙だけに慣れている人には必要事項を全て書けないことが多いので、「問題文を読み込んで題意を完全に把握する」ことは何よりも重要だと心得てください。
問題文はクライアントからの質問のようなものです。「私はこうしたいと思っています。先生だったらどうしますか?」との質問に機械的に答えを吐き出すだけならQ&A集でもクライアントに与えておけばよいでしょう。
そうではなくて「この場合にはどうすればいいのか」との質問に「このようなことができる。この事例ではこうすることが望ましい」と瞬時に状況を判断して答えることができるのが人間の弁理士の役割なのではないでしょうか。
条文の知識が曖昧
短答合格者の場合はまず問題ないのですが、短答免除者やまだ短答に合格していない人の場合はごく簡単な条文でも理解していないことがよくあります。遠回りなようでいて短答の勉強は重要です。論文試験にも短答の知識がなくては解けないような問題はよく出題されます。
ただし、入門的な勉強が済んだらすぐに論文に取り掛かることは良いでしょう。
論文とはいえ短答の勉強にもなることが多く、また短答ほど深いところまで勉強する必要が無いので、短答と並行してまたは短答に先立って論文の勉強をすることは望ましいと言えます。
知識の穴を作らない
条約や外国出願関係などが嫌いで後回しにしている人がいます。いずれやるならいいのですが、抜けがある状態で受かろうとは考えないほうがいいです。
運が良ければ知らないことがあっても合格出来ますがまだ時期的に余裕があるのだから勉強すべきです。
といっても全てを完璧にする必要もありません。ブタペスト条約とか勉強しなくていいです。
たとえば、私は著作権法(短答)に関してはとりあえず最低限の点数を取れる程度にしか勉強しませんでした。著作権法のように難しいというよりも面倒なだけの法律は受験生には逆に辛いので適度に力を抜いて下さい。
(ただし、合格後には勉強すべきです)
以上論文の添削をしていて気になったことを書いてみました。
短答試験まで残り少ないですが、週に2回問題を解けば5週間で終わるので、題意把握を完璧にしたい方は『知財の知識 論文マンツーマンゼミ』をご受講ください。