*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事です。実際に書かれたのは2年ほど前です。

以前、運動会のダンスでの写り込み(正確には曲の入り込み)についての記事を書いたのですが、今回はダンスの振付の著作権とダンスのバックミュージックの音楽の著作権についてのお話です。

学園祭や文化祭で高校生や大学生が市販の(ちゃんとお金を払って買ってきた)AKBのCDの曲に合わせてAKBのダンスを踊るとします。

この場合、誰のどんな権利を侵害するのでしょうか。

まず、AKBの曲の著作権者の著作権を侵害します(著作権法22条)。それから、その曲を演奏したり歌っている人(AKB)の著作隣接権も侵害します。また、その曲をCDに録音した人(レコード製作者)の著作隣接権も侵害します。
それから、AKBのダンスの振付を考えた人の著作権も侵害します。踊っているAKBの著作隣接権も侵害します。

なんだかすごいことになっていますね!

ワンピースのCDの曲を運動会で流して利用する場合も同じです。

しかし、例外的に、一定の要件さえ満たしていれば、学校で著作物を使用する場合は著作権侵害とはなりません。

運動会は非営利・無償・無報酬なので著作権法38条により、著作権非侵害となります。

文化祭などでアイドルのモノマネをしてもそのモノマネを見るのにチケット代を払ったりモノマネをする人に報酬が払われることがなければ大丈夫です。

ただし、YouTubeにアップすると公衆送信権の侵害となります(著作権法23条)。

でも、写り込みなら著作権の侵害とはなりません(著作権法30条の2)。

ちなみに、ものまね芸人やコピーダンサー、コピーバンドなどを外部から呼び寄せて報酬を払ってしまうとこの規定の要件を満たせません。

そのものまね芸人やコピーバンド自身が自分で著作権処理を済ませてくれていれば別に何の心配もいりません。

さて、そっくりそのまま真似してしまうと複製権の侵害になりますが(著作権法21条)、ちょっと変えて真似した場合にはどうなるのでしょう。

つまり、丸々コピーするのではなく、ダンスにアレンジを加えたり余計な文言を加えたりする場合です。

ここで思い出したのですが、長女が幼稚園のときに、お遊戯でAKBの曲に合わせてダンスを踊りました。

ただし、幼稚園生にAKBの振付は難しいので先生が考えたアレンジバージョンです。

これは、「改変」に当たるのでAKBのダンスの振り付けの同一性保持権(著作権法20条)を侵害することになります。

ですから、「改変」する場合は、本来は著作権者の許諾を得る必要があります。

幼稚園のお遊戯程度なら文句を言ってくる著作権者はいないでしょうが、文化祭などで替え歌やアレンジした振付で踊ってしまうと同一性保持権(著作権法20条)の侵害を理由に権利者からクレームが付く可能性があるので注意が必要です。

カッコつけて「みんな、今日は私達の歌を聞いてくれてありがとう!
心をこめて歌います。
故郷の母へ・・・。
親不孝な私でした。」
と余計なフレーズを入れたり、
ダンスにバク転など余計なアレンジを加えるとアウトです。

そのまんまコピーだけが許されます。

ちなみに、文化祭で発表するために、サークルでドラクエの曲を練習するとか、嵐の歌を練習する、なんてことはよくあると思いますが、著作権法38条の規定により非侵害となるのは、非営利・無償・無報酬の要件を満たして発表する場合だけです。

練習のために楽譜が必要となりますが、その楽譜をコピーして配ってはいけません。

楽譜のコピーが許されるのは「学校」だけです。
この学校の要件は厳しく、「学校内の同好会」ではダメです。
また、民間のピアノ教室などもアウトです。

楽譜が必要ならそれぞれが買うか、著作権者からコピーのコピーの許諾を取ります。

複雑で面倒な著作権法の規定ですが、軽い気持ちで著作権を侵害したために訴えられて嫌な思いをしないためにもぜひ基本的なことは知っておいてください。
というか、基本的には「その著作物を利用することにより不当な利益を得ることになる場合」はまず著作権侵害になるので、そこを基準に単純に考えても良いのかもしれません(笑)。