【イラストレイターは、もう不要!?】AIの描いた絵の価値と著作権

今月、作曲家がもういらなくなってしまうかもという記事を書いたのですが、今日は、イラストレイターがいらなくなってしまうかもというお話です。

 

AIの描いた絵が4900万円で落札されたとして先週話題になっていました。
そもそも人工知能(AI)による芸術作品が大手のオークションで落札されたのは今回が初めてです。

 

落札されたのは、男性の肖像画です。その画風と額縁に収められている外形から、数世紀前の描きかけの肖像画に見えます。
これって、AIがレンブラント(バロック期を代表するオランダの画家)の作風を学んで絵を描くプロジェクトが進行しているというニュースを聞いたことがあるけれど、そのプロジェクトで描かれた絵なのかな?

AIが描いたと説明を受け、絵の右下にある画家の署名代わりの数式を見ない限り、AIが描いたとは一見しただけでは分からないでしょう。

 

疑問なのが、一点物に価値があるはずの美術品が無限に寸分違わないものを作れる場合にまで同じ値段がつくのかということです。

著作権自体の値段と考えれば妥当ですが、AIが描いた絵の複製物の価値は低いのでは無いかなと思います。

 

大量複製可能なら、キャンバス代プラスα程度にまで絵の値段は暴落してしまうのではないでしょうか。

また、AIが「学習作品(人間に「創作物」という言葉が使われるので、仮に使ってみました。)」を大量に生み出せば生み出すほど、その希少性は低くなっていきます。

 

そんな作品に著作権を与えてしまうと問題が出てきます。

 

誰が著作権者なのか(AIを作った人かAI自身か、AIにデータを提供した人かなど)曖昧になりますし、自分が創ったと嘘をついて人間が発表すればその人が著作権者になってしまうし・・・。

 

だからといって著作権を誰にも認めず自由に利用可能とすると、AIの描いた絵と勘違いして、人の描いた絵を無断利用する人もたくさん現れることになりそうだし・・・。

 

問題は山積みです。

 

 

ウェブメディア等イラストを利用する側としてはAIが絵を描いてくれると嬉しいでしょう。

「◯◯風のイラストで会社員5〜6人がにこやかに談話をしている風景がほしい」「◯◯風の絵で高齢女性が花を一輪持って悲しげにうつむいている姿のイラストがほしい」というように指示をすればそのイラストレイター風の絵を手に入れることができます。

 

しかも、イラストレイターに依頼するよりもきっと安いでしょう。

 

するとイラストレイターは失業したり仕事が減る可能性があります。

 

日本の現在の著作権法では、AIに学習させるときには著作権は行使されないということになっているのですが(著作権法47条の7)、学習させる時には著作権の効力が及ばなくても、AIが学習して作品を「学習作品」として排出した時には、元となった絵の絵柄の持ち主に何らかの著作権のようなものを与える必要があるのではないかなと思います。

 

AIに「絵柄」を学習させるときには、「データ提供者」としてその絵柄のイラストレイターに何らかの著作権を与えるような法改正がされるといいかもしれません。

 

たとえば、

著作権法21条の2 データ提供権  著作者は、その著作物を電子計算機による情報解析のために利用された後に、AIが作る表現物の利用に関し、当該AI著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

とか規定されないかな〜。
(当該AI著作物の著作者?いや、それ誰よ?という問題が・・・)

 

なお、絵柄というものには著作権が発生しません
過去記事参照

ですから、原哲夫風の絵で何らかのイラストを描いても、具体的に表現物として原哲夫氏がそのような絵を描いていない限り、著作権の主張は難しいのが現在の日本の法律です。

 

しかし、AIが学習すれば、実際にその画家が描いていないイラストについても描けるようになると思います。

 

また、一人のイラストレイターだけではなく、複数のイラストレイターの筆使いの特徴や色の使い方の特徴などを真似て混ぜ合わせてAIが作品を排出すると、一見独自の創作物に見えるものが誕生するでしょう。

たとえば、原哲夫風の絵柄、小林智美風の色使い、目の部分だけは天野喜孝風のAIイラストレイターが誕生する可能性があります。(この場合、AIイラストレイターの名前は原林智孝で行きましょう。この場合、上記した著作権法21条の2 データ提供権については複数のイラストレーターに均等に分け与えられるのだろうか・・・)

 

AIが作曲をして、更に、ストーリーも作ってくれれば、AIによるアニメも実現できそうです。

 

AIにできないことは、「作られた作品を楽しむこと」くらいでしょうか・・・。

 

AIと著作権の問題は、著作権法という枠組みを超えて、「AIに人権を認めるか」という議論にまで行ってしまいそうで、わけわからなくなりそうです。
あー、この先どうなるのでしょうか。
大混乱が起こりそうな予感がします・・・。