弁理士短答平成28年度第2問は、実用新案法の問題。
正しいものはいくつあるか問題です。
いつものとおり、ただ解いただけでは駄目です。しっかり根拠条文を学び理解しましょう。
まずは枝の1。
特許出願人は、特許出願の日から9年6月を経過した後は、いかなる場合であっても、その特許出願を実用新案登録出願に変更することができないか否かについて問われています。
答えについては触れないでおきましょう。根拠条文は実用新案法10条1項です。
出願の変更
第十条 特許出願人は、その特許出願(特許法第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(同法第四十四条第二項(同法第四十六条第六項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)を除く。)を実用新案登録出願に変更することができる。ただし、その特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月を経過した後又はその特許出願の日から九年六月を経過した後は、この限りでない。
しっかり読んで下さいね。
「ただし」以降に当てはまる場合は変更できないのです。どちらの場合も変更できないのですよ。
次は枝2です。
実用新案権者は、自己の登録実用新案に関し、実用新案法第3条第1項第1号に掲げる公然知られた考案に基づく同法第3条第2項の規定(いわゆる進歩性)に係る実用新案技術評価を請求することができるかどうかです。
根拠条文は実用新案法12条1項括弧書きです。
実用新案技術評価の請求
第十二条 実用新案登録出願又は実用新案登録については、何人も、特許庁長官に、その実用新案登録出願に係る考案又は登録実用新案に関する技術的な評価であつて、第三条第一項第三号及び第二項(同号に掲げる考案に係るものに限る。)、第三条の二並びに第七条第一項から第三項まで及び第六項の規定に係るもの(以下「実用新案技術評価」という。)を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係る実用新案登録出願又は実用新案登録については、請求項ごとに請求することができる。
すなわち、実用新案技術評価の請求は、実用新案法3条2項については同3条1項3号に掲げる考案に係るものに限られるわけですね。
あー、面倒ですね(笑)。
でも、みんな面倒だと思っているのです。嫌だと思っているのです。だからこそやるのですっww
さて、枝3です。
実用新案権が共有に係る場合、その実用新案登録についての実用新案技術評価の請求は、共有者全員でしなければならないかどうかですね。
これについてはちょっとトリッキーです。なぜなら、先程あげた実用新案法12条1項に「何人も」と書かれていることから、共有者全員でする必要はなく、誰でもできるからです。
まあ、共有者に特に不利益もありませんし、共有者の一人が請求したって構わないですよね。
さあ、気を取り直して枝4です。
実用新案権者は、実用新案登録請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、又は請求項の削除のいずれかを目的とするものでなければ、いかなる場合であっても、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができないかどうかです。
この根拠条文は実用新案法14条の2です。読めばわかる通り、できませんね。
明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正
第十四条の二 実用新案権者は、次に掲げる場合を除き、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を一回に限りすることができる。
一 第十三条第三項の規定による最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があつた日から二月を経過したとき。
二 実用新案登録無効審判について、第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
2 前項の訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 実用新案登録請求の範囲の減縮
二 誤記の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
3 第一項の訂正は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面(前項第二号に掲げる事項を目的とする訂正の場合にあつては、願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
4 第一項の訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。
特許法の訂正と比べて覚えておきましょう。
さあ、最後の枝です。
特許庁長官は、訂正書に添付した訂正した実用新案登録請求の範囲に記載された考案が方法に係るものであったため、相当の期間を指定して、その訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正をすべきことを命じたが、実用新案権者は、指定した期間内にその補正をしなかったので、その訂正を却下した。この場合、実用新案権者は、再度、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができる場合があるかどうかです。
実用新案法14条の2第1項を読むと「一回に限り訂正できる」と書かれているので☓と考えてしまうかもしれません。基本的にはそれでいいでしょう。
しかし、弁理士試験で「できる場合がある」と書かれている場合にはよお〜く考える必要があります。抜け穴が残されている可能性があるからです。
そう。訂正が却下された場合は訂正されないので、再度訂正することができるのです!
なんだよそれっ。と思いたくなりますが、こういう「できる場合がある」タイプの問題はよく出ますし点を取りやすいので得意になっておいてください。
というわけで答えは「正しいものは3つ」でした。
お疲れ様でした(^^)
なお、弁理士試験に関しては非公開の情報が沢山載っている&毎月論文レジュメのプレゼントがある「知財の知識・改」を御覧ください。