優先権についての問題ですね。長〜い但し書きがあります。始めて見たときはこんな但し書きを読むのにも時間がかかってしまいますが、慣れれば一瞬です。本当です。
この問題は「正しいものはどれか」問題なので、消去法で解いていきましょう。
どうしても時間がないときには「これだ!」と思う枝を見つけた途端次の問題へ進むという方法がありますが、短答合格レベルに達している人は、まず「時間が足りない」という自体にはなりえないので(少なくとも私自身は残り時間20分前に解き終わっていました)消去法で解いてください。
なお、時間を測って短答模試の気分を味わう必要はありません。
一度くらいはやってもよいのですが、そんなことを何度もやっている暇があったら条文を読んだほうが効率的です。
さて、問題を解いてみましょう。まずは枝1です。
甲は、発明イについて特許出願Aをすると同時に出願審査の請求をした後、出願Aの出願の日から1年以内に出願Aに記載された発明イに基づいて特許法第41条第1項の規定による優先権を主張して特許出願Bをした。その後、先の出願Aについて特許をすべき旨の査定の謄本が送達された。この場合、先の出願Aについて特許法第107条第1項の規定による第1年から第3年までの特許料の納付をしなければ、出願Aは、出願Aの出願の日から特許法第42条第1項に規定する経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなされるでしょうか。
ちょっとわかりにくい問題ですね。答えは☓ですが、理由はわかりますか?
根拠条文は42条1項です。
問題文には「特許をすべき旨の査定の謄本が送達された」とあります。
したがって、取り下げられないのです。
次は枝2です。
甲は、日本国に出願する発明イ及び発明ロについての特許出願Aにおいて、甲がパリ条約の他の同盟国でした先の特許出願Bに記載された発明イと、甲が日本国でした先の特許出願Cに記載された発明ロとに基づいて、パリ条約第4条の規定による優先権と、特許法第41条第1項の規定による優先権とを、併せて主張することができる場合がある。
答えは○ですね。複合優先を禁止する規定はないからです。「できる場合がある」問題ですので自信をもって○といえないでしょう。したがって、他の問題も☓であることを確かめてから丸にします。
さあ、枝3です。
特許法第41条第1項の規定による優先権を主張して特許出願をする場合、先の出願が特許法第44条第1項の規定による特許出願の分割に係るもとの特許出願であるときは、当該先の出願に記載された発明に基づいて優先権を主張することができる場合はないのでしょうか。
答えは×ですね。 41条1項2号を見てください。先の出願が分割に係る「新たな」特許出願であれば国内優先権を主張することはできませんが、分割に係る「もとの」特許出願であれば国内優先権を主張できるのです。
枝4です。
甲は、発明イについて日本及び米国を指定国とする国際出願Aをした後、1月後に指定国日本に国内移行手続をした。その後甲は、出願Aの国際出願日から1年以内に、発明イ及び発明ロについて、出願Aに基づく優先権を主張して、日本及び米国を指定国とする国際出願Bをした。甲は、出願Bについて、出願Aの国際出願日から2年6月以内に指定国日本に国内移行手続をした場合、先に国内移行手続をした出願Aに係る国際特許出願は、当該国際特許出願の出願の日から特許法第42条第1項に規定する経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなされるのでしょうか。
これは特許法を勉強して間もない人には辛い問題ですね。
184条の15をみてください。
41条が読み替えられていますね。国際出願日から経済産業省令で定める期間の経過時又は国内処理基準時の経過時のいずれか遅いときに取下擬制されるわけです。
さっぱりわからんという人は、とりあえず飛ばしてしまって構いません。しかし、必ず後で復習をしてください。
こういう問題を見ているとやる気をなくしてしまうでしょうから「できる」問題からスラスラ解いてやる気を出したほうがいいですね。くじけないでくださいっ。
さあ、枝5です。
甲は、発明イについて特許出願Aをした後、出願Aの出願の日から1年以内に出願Aに記載された発明イに基づいて特許法第41条第1項の規定による優先権を主張して、発明イ及び発明ロについて特許出願Bをしたところ、出願Bについて特許権の設定登録がされた。その後、特許発明イの実施が継続して3年以上日本国内において適当にされていない場合であって、出願Aの出願の日から4年を経過していれば、特許発明イの実施をしようとする者は、甲に対し特許法第83条第1項(不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)に規定する通常実施権の許諾について、いつでも協議を求めることができる。
ただし、特許発明イに係る特許権は存続しているものとする。
答えは×ですね。83条を見てみましょう。
先の出願の出願日から4年を経過していても後の出願の日から4年を経過していないかもしれないからです。
というわけでちょっと苦しい問題でしたね。今回できなくてもどんどん進んでください。そして何度も復習してください。
それから、常に条文を読んで条文に慣れてください。