世の中には、時間はないけどお金はある人と時間はあるけどお金がない人がいます。
前者は料金やサービス料にはわりと無頓着です。
一方、後者はほんの些細な額の違いにも敏感に反応します。
お店側としては前者のような人にだけ来てほしいのですが、後者の数は多いため捨てるには惜しい存在です。
そこで、「お金のある人には高く売って、お金のない人には安く売る(制約を課す代わりに値段を下げる)」という手段が取れないか検討してみます。
もちろん、「あなた、お金持ってますか?あ、もってない?じゃあ、○○円でいいよ」なんてどストレートな質問をするという馬鹿なことはしません。
もっとスマートに問題を解決します。
ではどうしたら良いのでしょう?
まず、大前提として、
「価格を下げればたくさん購入してもらえるが、商品一個あたりの利益率は下がる」ことになります。
でも、難しいのが、人によって「これなら購入する」というラインが違うことです。
好きなブランドについては値段は関係なく買うという人もいれば、安ければ買うという人もいます。
したがって、値段を気にしない人には高く売って、安くすれば買ってくれる人には値引きして販売すると利益が最大化します。
しかし、そんなことは出来るのでしょうか?
ここで、レストラン・ガストの戦略について語りたいと思います。
言わずと知れた有名なレストランチェーンのガストですが、ここではクーポンをよく配っています。
新聞の折込チラシに入ってくることもあれば、オトクーポンというモバイルクーポンサイトに登録すると、ガストを始め、バーミヤンやジョナサンなど同系列のレストランの割引クーポンがもらえます。
私は先日iPhoneを修理したときにアプリを全部新たに入れ直したのですが、そのときにガストのアプリもダウンロードしてみました。
見ると、通常は399円〜599円で販売されているキッズメニューが一律149円です。
どうやって利益をあげているのだろう、と思い、子供を連れて行ってみました。
注文する前に周りの子連れが注文している姿を観察してみました。
すると、どうやらキッズメニューのなかで一番高いマグロ丼599円が一番よく注文されているようです。
私も一つはマグロ丼にして、もう一つはハンバーグセットにしてみました。
マグロ丼はマグロ(一番安いビンチョウマグロ。そのまま食べると美味しくないので普通はたたきにして食べる。ガストでもたたきで出た)の量は僅かで、ポテトがたくさん、大きな唐揚げが2つも乗っています。
これにドリンクバーとおもちゃが無料で付いてくるのですからお得です。
ハンバーグセットもまぐろの部分がハンバーグに置き換わっただけであとは同じメニューです。
私はランチではなく(食べたいものがなかったので)サイドディッシュとサラダとドリンクバーを注文したのですが、トータルでも1200円程度です。
クーポンを使わなければ2000円ほどかかったでしょう。
しかし、クーポンを使わなければそもそもお店へ行ったでしょうか。
本来は別の所でランチを済ませるはずだった人たちを取り込むことが出来たことで、ガストは薄利ですが多売出来たわけです。
クーポンなどなくても最初からキッズメニューを定価で注文してくれる人もいます。
私の夫などは、クーポンサイトなど決して見ないタイプの人なので、常に定価で購入してくれるありがたいお客様です。
そういった人にはそのままの値段で提供すればいいわけです。
クーポンを発券することにより、ガストは「高くても買ってくれるお客様には高いままで販売し、安ければ買ってくれる人には割引価格で販売」することができたわけです。
なお、新規顧客を開拓するのもいいのですが、会員になってもらって何度もお店に足を運んでもらえると、新規顧客開拓コストが抑えられるので効率的です。
ガストが取っている方法は、「ポイントを貯めてアンパンマングッズをもらおう」キャンペーンを展開することにより、また来たい!と思わせています。
このように、ガストのとっている戦略はとてもためになるのですが、では、私が個人的にガストのカスタマーになるかというと、ちょっと考えてしまいます。
なぜなら、おもちゃプレゼントやポイントシールという面白い制度はあるのですが、肝心の食事内容にそれほど魅力を感じないからです・・・。
見た目は良いのですが、体に悪いのではないかと怖くなってしまいます。単に砂糖を溶かしただけのジュースをたくさん提供されても飲みたくありませんし・・・。
フライドポテト以外に野菜は全く入っていません。
上の子はともかく、下の子は胃腸が弱いので脂っこいものを食べるとすぐに体調を壊します。
アンパンマンは大好きなのですが、食事内容が合わなかったせいで、下の子はもうガストに行きたがりません。
私自身もランチメニューに好きなものがないせいでわざわざサイドディッシュから選んでいます。
すると割高になってしまいます。
ですから、私はキッズメニューは安くてもガストに行くことはそれほどないと思うのですが、値段を抑えつつ体に良いメニューを揃えるということをしてくれれば途端にガストのファンになってしまうと思います。
でも、私のようなうるさい客はガスト側からしてみればごめんでしょう。値段も質も求めるなんて来てくれない方がいいのです。
ですからガストは私のような迷惑な客は排除した今の戦略が望ましいと思います。
以上、レストランでクーポンを配布することにより
「お金のある人には高く売って、お金のない人には安く売る」という方法でした。
このクーポン戦略はレストラン業界だけでなく他の業界でも利用できます。
たとえば、美容院でクーポンを配布するなら、お客さんのあまり来ない平日の昼間は特別割引クーポンを配布したり、ヘッドスパやトリートメントのサービスをつけたりします。一方、忙しい夕方〜夜や土日はクーポンを配布しません。
ホテルでも長期の休み中は通常価格にして閑散期には特別割引をしています。
ちなみに、お客様は○%割引をするよりもサービスを付けてあげたほうがお得感を感じやすいようです。
たいしたことのないほんのちょっとしたサービスでも満足感をあげることができるので、いかに新規顧客を増やすかということに力を注ぐよりも、「来てくださったお客様を最大限にもてなす」方がそのお客様のロイヤリティがあがり、継続して来てくれるようになるので、結局は利益率の改善をもたらすことと思います。
小さなお店などは、テレビに取り上げられて新規客にたくさん来てもらうよりも地元のお客様に長く愛される方がずっと利益率のよい経営を出来ることと思います。