スクショも著作権侵害になるという著作権法改正案の話題で連日持ち切りです。
行き過ぎた権利の保護は止めてほしいと思いますし、そもそも著作権の保護期間が70年って長すぎますよね・・・。
死後30年くらいでいいと思うのですが。
しかし、著作物の自由な利用をあまりにも緩く解してしまうとまた問題が起こります。
著作権者の金銭的利益を横取りすることになり、著作物の創作者のやる気を無くし、結果として文化を衰退させることになるからです。
ですから、厳しくすべきところと緩く解するべきところのバランスを法律で上手く調整する必要があります。
著作権法プラスα
これにプラスして、各企業が指針として示してくれるとユーザーにも便利なのではないかなと思っています。
たとえば、任天堂やスクエア・エニックスなどゲーム会社のゲーム実況中継に関する指針は参考になります。
あとは、商業作家さんがいわゆる二次創作に積極的だったり消極的だったり様々な態度を表明してくれているのでこれも助かりますね。
私の個人的な感覚では、作品の宣伝になるような使い方なら「引用の要件を満たしていないんじゃないかな」と心配な範囲でもOK(ただし、過度なエロ創作・暴力コンテンツや商用利用の場合はこの限りではない)なことが多いです(つい最近の事例としては強い女メーカーで触れました)。
しかし、人によっては、二次創作は絶対に嫌!という人もいるでしょうし、そんな作家さんの気持ちは尊重して、二次創作は原則通り違法としてもいいと思います。
ただ、基本的に二次創作を作ってもらったほうが盛り上がるので、ビジネスとして考えたら、作家さんは積極的に肯定していったほうがいいと思います。
ただ、二次創作を作る人は、調子に乗り過ぎないようにすべきでしょう。
この作家は何も言ってこないからといって過激な二次創作を作り続け、堪忍袋の尾が切れた出版社から訴えられるということもありますから。
過激だったり作品のイメージを壊し、リスペクトが感じられない二次創作は権利者から訴えられても仕方ない気がします。
肖像権について
また、著作権ではありませんが、人の肖像(顔写真など)を利用する場合には絶対に無断で行ってはいけないということも挙げておきたいと思います。
これ、安易に行う人が多すぎます(><)。
有名人(スポーツ選手や芸能人など)の写真を勝手にブログに載せてはいけないことは当然のこととして(パブリシティ権の侵害になります。有名人の写真にはそれだけで金銭的価値があります)、一般人の写真(友達やクラスメイトなど)の写真も無許可でSNSにアップロードなどしてはいけません。
ネットにアップするということは不特定多数の人が自由に閲覧できてしまうということです。
知らない人が自分の顔を見ているのって気持ち悪いですよね。
勝手にダウンロードされてSNSの出会い系アカウントのアバターにされていたという話も聞いたことがあります。
だから、小中高生はやりがちなのだけど、友達と一緒に写っている写真を無断でアップするときは、自分以外の顔はモザイクをかけるなり処理をしてからアップしてください。
大人になったときに「若気の至り」として笑えるなら良いのですが、「問題行動の写真・動画」が拡散してしまうと、将来を潰します・・・。
アダルトな出会いアカウントのアバターにされてしまったら、自分は何も悪くないのに不審者扱いされてしまいます。
芸能人の写真の無断利用もしてはいけません。
芸能人の肖像にはそれ自体に価値があるので、アップすると信じられないくらいのアクセスが集まります。
一般人でブログやSNSを短期間しか運用していないのに、多数のフォロワーがいる人とかブログに数十万を超えるアクセスが来ている人ってたまにいますよね。マスタニムのような人です。
そういう人は、自分自身の魅力によって人を集めているのではなく、芸能人の人気に便乗しているだけです。
悪質なケースだと、生写真プレゼント企画をしたり(企画をする人は現像代しかかからないのでお得ですが、応募する人は何に価値を感じているか考えればこれが違法な行為ということはわかると思います)、アフィリエイトサイトやブログにアイドルの写真をアップしておきながら後で何食わぬ顔をしてそれを削除し、アクセスやフォロワーを集めている人もいます。
こういうことをすると、証拠画像を残されてしまった場合にトラブルになります。
もしこんなことをしてしまったら、芸能事務所に謝罪し、場合によっては不当に得た利得を支払い(ブログで得た広告収益など)、フォロワーに自分がしてしまったことを懺悔すべきでしょう。
一度でも肖像権の侵害行為をすると、その証拠はネットに残されてしまいます。そして、その事実がずっと自分について回ります。
法が自分を裁くのではなく、見知らぬ人たちがあなたを私刑にするのです。
そんなときにあなたにできることは、ただ、耐えることくらい・・・。
下手に反応して訴訟をしようものならお祭り騒ぎになってしまいます。
罰金を支払わされるよりも辛いでしょう。
ですから、ネットにアップするということの重要性をよく考えてから画像や動画のアップを行うようにしてください。
なお、下記で示しているような漫画の違法アップロードサイト運営者のように儲けようと思って著作権侵害をする悪質なケースとは違って、法律を知らなかっただけということもあるでしょうから、真摯に謝罪すれば炎上することもないと思います。
真摯な謝罪は最高の炎上対策です。
そして、過去に罪を犯した者が謝罪をしたならば、それ以上罪を追及すべきではありません。
「はるか夢の址」裁判
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今日は人々の記憶から忘れ去られようとしているちょっと懐かしいサイトについてお話したいと思います。
「はるか夢の址」というサイトを覚えていらっしゃるでしょうか。
過去記事:「はるか夢の址」
「はるか夢の址」運営者らが著作権侵害などの罪に問われた裁判で、大阪地裁は1月17日、主犯格の男3人に対してそれぞれ、懲役2年4月~3年6月の実刑判決を出しました。
判決文を読むと、運営者たちは罪の意識無く、自己の利益のためだけに著作権侵害を行っていたことが容易に見て取れます。
ちょっと見てみましょう。(太字は私によるもの)
被 告 人 A に つ い て
被告人 A は , インターネット 上 の 知 識 は 無 制 限 に リ ン ク さ れ る べ き である, 面 白 く な い , あ る い は , 役 に 立 た な か っ た コ ン テ ン ツ に 対 し て 対価を支払う必要はないなどといった考えから,本件サイトを開設し, その運営 ・ 管 理 全 般 を 統 括 する中で, サイトを大きく有名にしたいといった願望から,利用者による違法 な ア ッ プ ロ ー ド と 投 稿 を 助 長 す る た め の様々な仕組みを作り,本件サイトを利用者の多いものに成長させていった も の で あ り ,判 示 第 1 の 各 犯 行 の 首 謀 者 と い え る 。
被告人 A 及び被告人 B に よ る 判 示 第 2 の 犯 行 は , 同 犯 行 の 共 犯者らから,同人らが運営するサイトの競合サイトを潰すことを依頼されて ,本 件 サ イ ト を 介 し て 攻 撃 対 象 の サ イ ト に 連 続 し て 多 数 ア ク セ ス さ せ ,
当該サイトのサーバに負荷をかける機能を有する 攻 撃 用 ス ク リ プ ト を 作成したというものであり, 判 示 第 2 の 2 の も の は , リ ン ク 元 の ペ ー ジ の情 報 が 分 か ら な い よ う に さ れ た 巧 妙 で 悪 質 な も の で あ る 。
こちらを読むと、ただ単に他人の著作物を利用して儲けてやろうと考えていたのではなく、ライバルサイトを潰すために必死になっていたのが伺えます。
一見して言い訳ばかりということが見て取れると思います。
「インターネットの知識は無制限にリンクされるべき」と言っていたのはどこの誰ですか!?
知識を無制限にリンクしたいならライバルサイトの存在は気にならないはずです。
要するに、他人のふんどし(著作物)で相撲をとりたい自己中思考なんですよね。
被告人らの主張が言い訳にしか過ぎないことが容易に読み取れます。
著作権侵害の報道を見る度に思うのですが、侵害者側と権利者側との温度差がありすぎますね・・・。
著作権侵害を行った者は、口を揃えて「そんなに悪いことだとは思わなかった」と言い、権利者は怒りに打ち震える、という感じです。
3000万円を超える損害を被っているのだから、そりゃ怒るわっ!
その100分の1の損害で怒ってもおかしくありません。
うちの娘なんかコンビニで売っていたお菓子と同じ物をスーパーで30円安く手に入れただけで喜んでいますよ(どうでもいい)。
著作権侵害ほど誰でも容易に行え、かつ、儲けられる犯罪はないのですから、他者の著作物を利用する人は、もう少し他人の権利に気を配るべきでしょう。(刑事罰もあることだし)
もちろん、過度に他人の権利を気にしすぎると著作物の使用が萎縮することになってしまうので、「引用」の要件を守りつつ、適度に利用していくのが、文化の発展(著作権法1条。法目的)のためには最も望ましいのではないでしょうか。
なお、「今は著作権侵害とならないグレーな行為」でも、それが倫理に反すると考えるならばやるべきではありません。
「ビジネス」として考えてやるのならそれもいいのかもしれません。
しかし、「グレー」と「ブラック」の線引きは非常に難しいといえます。
はるか夢の址や漫画村の運営者だって大丈夫だと思って運営していたわけですから。
また、一度甘い汁をすすると、確実に身を滅ぼします。
客観的に物事を考えられなくなり、退き時がわからずズルズルと怪しげな行為を続けてしまうからです。
たとえば、直接著作権侵害をするのではなく、著作権侵害をしているサイトを紹介するだけのいわゆるリーチサイトはいずれ規制がもっと厳しくなるでしょう。
こうしたサイトを運営していると、はるか夢の址運営者と同じ運命を辿るのは容易に想像できます。
何度も繰り返しますが、著作物を利用することを過度に恐れていては何もできなくなってしまいます。
しかし、著作権者の気持ちになってみればやっていいことと悪いことの違いはわかるはずです。
他人の気持ちになって考えてみるという小学生の道徳レベルで大きな問題となることは相当程度防げるでしょう。
著作権侵害は犯罪であり、刑事罰があるだけでなく、ネットで話題に飢えた人たちの格好の餌食になってしまうので、安易にお金儲けやPV稼ぎに他人の著作物や肖像を利用するのは止めましょう。
それが、結局は他人の権利を守り、自分の将来を守ることにも繋がります。