最近、特許庁ではAIを利用し審査の迅速化を図っています。日本の審査官の負担は諸外国に比べると多目なので、必然とも言えるでしょう。
さて、最近では商標登録出願をする際にAIを利用する人たちもいます。
AIを使った商標登録出願サービスの一つとして、cotobox(コトボックス)という商標出願サービスがあります。
(toreruという商標出願サービスもあります。それについては後述しています)
料金プランを見ると、弁理士に依頼するよりも安く見えます。
エコノミープランなら約半額です。
(ちなみにプレミアムプランの場合は普通の弁理士料金です。)
さて、実際のところcotoboxの評判はどうなのでしょう。
試しにちょっと「商標サーチ」に文字列を入力してみたら、どう考えても商標を取れるわけがないレベルの周知商標でも判定結果が◎が出てしまいました。
たとえば、グーグルやgoogleと入力してみると多くの区分で商標が登録できると◎判定されます。
いや、そりゃないでしょ・・・。
Macintoshも同様です。
パナソニックやsonyでようやく△がつきます。(でもなぜか☓は表示されない)
これでは何のためのAIなのかわかりません。
不信感を抱いてしまったので、商標サーチの注意事項をよく見てみたら、小さな文字で「識別力がない名称(一般名称等)及び周知・著名商標の判定は未対応です。 」と書かれていました。
(なお、一番最初の商標入力画面にはこの注意事項が表示されません。すごく重要なのに・・・)
これでは、利用者が「もしかしたら有名商標に似ている商標を登録出来るかも。ラッキー」と勘違いしてしまう可能性があります。
そして、勘違いした人が最安値のコースで商標登録出願をすると、拒絶理由通知が来て、その対応を依頼すると拒絶理由通知対応料金がかかってきます。
結果として、普通に弁理士に依頼するよりも割高になります。
普通の弁理士だったら、商標出願前にはこう言ってくれます。
「これでは商標登録されません。」
(言わない弁理士もいるかもしれないけど)
・・・なんだか、この商標AIはあまり機能していないというか、客を集めるための手段というか、そんな穿った見方をしてしまいました・・・。
以上のことから、cotoboxの利用をお勧めするのは、「ある程度商標に関する知識があって、自分で作った造語(既存の言葉ではなくて考えて作られた言葉。たとえば、りんごやアップルは既存の言葉。グーグルは造語。)商標を出願したい人」だけです。
普通の言葉(アップルなど)や他者の標章について商標登録を受けたい人、弁理士に相談しながら商標登録出願をしたい人は、コトボックスは利用せずに、他の弁理士に依頼した方が良いのかもしれません。
一般の人では商標出願はできても、拒絶理由通知が来た場合に対応ができません。
これは素人には困難なので、弁理士に依頼することになります。
すると別料金がかかってきます。
ということは、最初から人間の弁理士に依頼していたほうが安上がりです。
(といっても、ウエブサイトで格安をうたって集客をしている特許事務所よりは、cotoboxのほうがずっと良いと思います。特許事務所のホームページは、料金体系が不明確なところが多すぎ!)
サイトがキレイでカッコイイし、AIを利用しているとのことで、過大に期待しすぎてしまっていたせいか、厳しい評価になりました。
しかし、BETA版からレベルアップしたAIには期待できそうです。
ぜひ、本当の意味で安くて良質のサービスを提供してください。そのときには、このサイトでも猛プッシュさせていただきます。
商標登録出願の代理をAIがしてくれるのなら、顧客にとっては便利この上ないですからね。
こんなことを書いたら商標弁理士さんたちに怒られそうですが、私は、商標登録出願の代理という弁理士の仕事がAIによって奪われるのも良いと思っています。
人間には人間にしかできない仕事があります。そして、今はまだAIは商標弁理士の仕事をできません。
しかし、いずれAIが商標出願業務をこなすことができるようになる可能性があります。
そのときには、商標弁理士は自らの付加価値や存在意義を模索してAI相手に対策を立てなければいけません。
それが商標出願業務からの撤退なのか別サービスの提供なのかはわかりませんが・・・。
いずれにせよ、「顧客にとって有益なサービス」を提供してくれるのであれば、提供者は人間でもAIでも良いと思っています。
顧客目線で考えるとどうしてもこのような結論になってしまいますが、私は弁理士を嫌っているわけではありません。
cotoboxの評価についても商標出願業務のAI化についても客観的に評価をしているだけです。
決してcotoboxが嫌いで批判記事を書いたわけではありません。
あ、そうそう。コトボックスと似たようなサービスとして、TORERUというAIによる商標登録出願サービスもあります。これについても書かないと公平じゃないですよね。
これも同じような感じです。どちらもAIによる商標出願サービスですからね。
cotoboxもTORERUもまだ仕事を安く請け負ってくれる弁理士には勝てないと思います。AIを使うと弁理士から見たら業務を短縮出来てよいのでしょうが、顧客から見たら、AIが代理しようが弁理士が代理しようがそしてそれにどれだけ時間がかかろうが関係ないでしょう。
ただ、いずれのサービスも数年後ブラッシュアップされたときが楽しみです。
・・・というか、そもそも「仕事を安く請負い、かつ、質の高い仕事をしてくれる弁理士の存在は弁理士のホームページを見ても一般の人には客観的に判断できないことを考えると、こういったサービスのほうが良いのかもしれません。
弁理士 格安 商標 などで検索して出て来る弁理士は安いのかもしれませんが質がどれほど担保されているかわかりませんから。
初めてcotoboxで検索してみたときのショックで厳しいことを書いてしまいましたが、私が弁理士に高望みをしすぎているような気もします。
人によって何が「良い」ことなのかは利用者によっても違いますし、(基本的には安く高品質の仕事をしてくれる弁理士が良い弁理士なのでしょうが、「高品質」については人それぞれですね。とりあえず安くこっちの言うとおりにやってくれればいいよ!という人もいそうです。)少なくとも両サービスは安いというメリットを考えると下手に知人の弁理士に頼むより良いのかもしれません。
最近は商標を出願して炎上する例も散見されることから、「商標出願しないほうがいいよ」と止めてくれる弁理士が良い弁理士なのかもしれませんね。(収入にならないからいいにくいけど、あえて言うという誠実さ)
はじめまして。Cotoboxの五味です。
Cotoboxの記事を書いていただき、ありがとうございます!
確かに、コメントにあるように現在はいろいろと課題があり、弁理士と同等の判定を表示させることはできません。
識別力の判定は技術的に非常に困難であり、検討を続けている最中です。
AIについては、アカウント作成後の書類作成ステップで、その効果を見ることができます。ぜひお試しください。
☓表記も、同様にアカウント作成後になります。区分と類似群コードが検出され、各類似群コードに対して、○△☓が表示されます。こちらもお試しください。
識別力がない商標による申込みは、提携弁理士によりチェックされ、商標変更、返金などの機会も設けています。申込み後は、提携弁理士と、独自開発のメッセージ機能によるインタラクティブなコミュニケーションが可能になっており、会話履歴やファイル管理もオンラインでできます。この点が、従来型の事務所サービスとは異なるところでしょうか。
また、業務用の商標サーチツールも招待制で弁理士と知財部に使用してもらっており、より詳細な検索と、○△☓の理由及び先行の商標情報もわかるようになっています。
さらにブラッシュアップしてベータ版として公開しますので、期待して待っていたください。
今後ともご支援よろしくお願い致します。
五味
コメントありがとうございます。
良いものは優れたサービスとして紹介していきたいので、これからのcotoboxに大いに期待しております。
さて、識別力がない商標による申込みは、提携弁理士によりチェックされ、商標変更ができるとのことですが、その場合は別料金という認識で正しいでしょうか?
また、この場合に返金を選ぶとどれくらい返ってくるのでしょうか?
Cotoboxサービスのユーザーの多くは、ありがたいことに口コミ・紹介によるものです。
チームとしては、顧客満足度を重視し、その可視化も行っているので、その努力が報われているかなとも思います。
識別力がない商標などの後でトラブルになりそうな件は、リスクの説明、業界におけるネーミングのポジショニング、業界ごとの識別力の有無事例集などをコンテンツ化し、案件ごとの独自メッセージ機能に挿入し、いつでも見れるようなシステム開発を行っています。口頭での説明による混乱や理解不足をさけるためです。
新しいサービス開発においては、ユーザーの声が品質向上の源泉になります。よって、追加費用をもらうという考えではなく、むしろ、積極的にユーザーの声を拾っているのが現状です。とてもありがたいです。
無理だな
仮に素人の人が識別力のない商標をエコノミープランで大量に出願してしまったら、逆にcotobox側が対応に追われてしまいますよね。
AIが進化したらこの辺りがスムーズに行くのだろうなと思っています。
半分返金されてもう一度出願をやり直せるような制度があるのでしょうか。
私の認識では、商標の素人の人は人間の弁理士に対応してもらえるプレミアムプランで出願すべきで、何度か出願して商標法について知識がついてきたらエコノミープランで出願する、全ておまかせにしたい忙しい人は常にプレミアムプランを利用する、というのがcotoboxの使い方としては良いのかなと思っています。
いくらコンテンツを提供したとしても、読まない人は読みませんし・・・。
福田様
記事に取り上げていただきありがとうございました。
Toreruの代表の宮崎と申します。
弊社では、AIはToreru内部の弁理士の作業を効率化するために使用しています。
顧客にAIを使用させて何か判断させることや、弁理士が関わらず、AIのみで判断していることはありません。
福田様のご意見の通り、専門知識がないと、顧客がリスクを被る可能性が高いと認識しているからです。
そのため、全件、人の目で調査しています。
記事中には「これも同じような感じです。どちらもAIによる商標出願サービスですからね。」
とありますが、Toreruの場合は、同じではなく、あくまでも全件商標調査していることから、記事にあるような識別力や著名商標の問題は全てクリアしています。
調査を含め、商標業務が従来より10倍以上効率化されていますので、「質を落とさずに」調査無料、出願手数料9800円、登録手数料9800円からと大変リーズナブルに提供できるようになっています。
もし、ご興味がございましたら、下記のページに概要を記載しておりますので、ご覧いただければ幸いです。
https://toreru.jp/home/quality
今後も、弁理士の仕事の質を高めるツールとしてAIを最大限活用しつつ、お客様に安心してご利用いただけるサービスの提供に努めて参ります。
宜しくお願い致します。
ご返信ありがとうございます。多分、昔のことなのでお忘れだとは思うのですが、私は以前、宮崎様にTORERUのサービスについて質問をしたことがありました。
斬新なサービスができたので、皆に紹介したいと思ったからです。
最初のうちはメールで何度かお返事をいただけたのですが、ある日突然メールが来なくなりました。
何か聞いてはいけないことを聞いてしまったかとずっと気になっておりました。
私はAIについては素人で、このような人間にAIについての記事を書かれることは気分を害されたとは思います(不勉強で本当にごめんなさい)。
しかし、私はcotobox、Toreru、いずれのサービスについても貶めるつもりはありませんし、どちらか片方だけを推薦するつもりもありません。
ただ、顧客にとって最適のサービスを紹介できれば、と思っただけです。
これからはどちらのサービスも(また、他のサービスもありますね!)改良されていくでしょうから、そのときにはまた、素人なりに感想を書いてみたいと思います。
記事に間違いなどがございましたらどうぞご指摘ください。