商売をしていると、競合他社やライバル店の動向が気になるものです。

特に、会社やお店の場所が近くの場合は、余計目障りだと感じるでしょう。

 

しかし、たとえライバル店の存在が気になっても、決してライバル店について嘘の噂を流してはいけません。

 

これは、倫理的にやってはいけないというマナーの問題だけではなく、法律違反になるからです。

これについて詳しく見ていきましょう。

 

競合他社の評判を落とす嘘の情報を流したら法律違反に・・・

さて、ライバル店について嘘の噂を流した場合、法律違反になると言いました。

具体的にどのような法律違反になるかというと、不正競争防止法という法律にひっかかります。

条文を見てみましょう。

不正競争防止法2条1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
15号 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

 

不正競争防止法2条1項15号に書かれているように、競争関係にある他人の信用を毀損する行為は不正競争行為となります。

 

信用毀損とは、「個人や企業の社会における財産上の信用を害すること」を言います。
この信用も知的財産です。

 

以下の要件を全て満たした場合には、不正競争防止法違反になります。

 

① 争いとなっている両者間に競争関係があること
② ある事実について告知又は流布行為をすること
③ ②の事実が虚偽であること
④ ②の告知又は流布行為が他人の営業上の信用を害すること

 

たとえば、ある中華料理屋さんが近くにあるラーメン屋さんに対し(要件①)、あの店ではスープに中毒性のある物質を入れているという嘘の事実を(要件③)店に来たお客さんに言いふらした場合(要件②)、お客さんはあのラーメン屋さんで食べると危険だと思ってしまうので(要件④)、不正競争行為に該当します。

 

また、ある家電メーカーAがライバル(要件①)の家電メーカーBで造っている製品はAの特許権を侵害しているとHPに掲載し(要件②)、それを不特定多数の者が見た場合であって家電メーカーBの信用を失墜させ(要件④)、後にメーカーBの製品はメーカーAの特許権を侵害していないという事実が明らかになった(要件③)場合
のような場合も不正競争行為に該当します。

 

ただし、告知や流布していたことが事実であった場合は③の要件を満たさないので不正競争行為には該当しません。
(名誉毀損などに該当する可能性はあります)

 

また、「このお店以外のこの地域の中華料理屋はみんな有害物質を使用している」というように、相手を特定していない場合も該当しません(要件①を満たさない)。

 

「営業上の信用」(要件④)とは、営利企業である必要はありません。NPO法人や学校や病院などでも該当します。

 

不正競争行為が認められた場合、不正競争行為を行なった者には、差止請求や信用回復請求(謝罪広告や取引先に対して謝罪文を発送させられるなど)、損害賠償請求などの措置が認められることになります(既にその行為を止めていた場合には差止請求は認められません)。

 

差止請求においては、故意・過失が必要とされないので、たとえ行為者が真実と信じて告知・流布をした場合にも差止めができます。

 

損害賠償の額は個別具体的に決められることになるのでこの場合にはいくら取れる、というようなことは言えないのですが、たとえば、HPやTwitterなどでライバル店の嘘の情報をばらまいていた場合、一ヶ月につき10万円程度の損害賠償額を支払わなければいけないというのは妥当な額であると思います。

 

物語で学ぶ不正競争防止法

さて、不正競争防止法の信用毀損の事例については上述しましたが、これだけではまだわかりにくいと思います。
そこで、物語形式にして説明してみたいと思います。

(以下の話はフィクションです)

東京の片隅にある美容院A。ここの美容院はオーナーA子によって30年もの間運営されている。
最近、近くに、美容院Bができた。
そこのお店はカラーリング専門店。
なんと、一回20万円もするという。

うちのお店のカラーリングは1万5千円なのに・・・。ボッタクリ店め・・・。

ライバル意識をメラメラと燃やすA子。

 

美容院Bの店長である美容師B太はかなりのやり手らしく、様々なメディアで取材を受けている。

ある日、A子の美容院に来た客が何気なくA子にこう言った。

「駅前にできた美容院Bって知ってる?カラーリング専門店なんだって。なんと一回20万円!高いよね。
でもテレビでも色の魔術師とかゴッドハンドって紹介されていたから私もカラーリング受けてみたいのよね。
どう思う?」

それを聞いたA子は怒りを押し殺しながら言った。

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「ああ、美容院Bね。あそこね、カラーリング剤がやばいらしいですね。あのお店のカラーリング剤の匂いを嗅ぐだけで、麻薬を吸っているのと同じ状態になるらしいですよ。
あと、あのお店のカラーリングを受けるとハゲちゃうらしくって・・・。
怖いですよね。商売人としてこういう危険な薬剤を利用するの、どうかと思いますよ。まあ、ここだけの話ですけどね・・・」

妬みに駆られたA子は美容院Bについて嘘の話をでっち上げてしまった。

 

そして、それからも、客から聞かれもしなくても自分から美容院Bの悪口を言いふらすようになってしまった。

「美容院Bの美容師はお客の財布からお金を抜き取っている。
お店に来た可愛い子は勝手に写真を撮られてコレクションにされている。
可愛い子には半額割引キャンペーンがあるが、男の場合は倍額払わされるらしい。」
などなど・・・

自分でもよくもまあこれだけ嘘が後から後から湧いてくるものだと驚くほどだったが止まらなかった。

それから3ヶ月後、A子の元へ一通の書留が届いた。
そこには「警告」と題する書面が入っていた。

 

「貴店では、美容院Bの虚偽の事実を流布している。これは不正競争行為に当たる。従って、今すぐ虚偽の事実を流布することをやめよ。また、過去の損害については、金10万円を支払え。
信用回復措置として、店のHPに謝罪文を載せよ。一週間以内に回答無き場合は訴訟を提起する」
とのことであった。

 

血の気が引いたA子は急いで法律事務所に電話をかけた。相談は最初の30分は無料だが以後30分毎に5000円かかるらしい。
しかし、今はそんなこと気にしている場合ではない。
どうすりゃいいのさ!?

弁護士「これ、あなたが悪いですね。仕方ないから相手の言うことを聞いてあげてください。」

A子「どうにかならないの?」

弁護士「回答書を書きましょうか」

A子「回答書を出せば勝てる?」

弁護士「裁判じゃないんですから勝ったり負けたりしないですよ。回答書というのは、こちらの考えを表明する手紙みたいなものです。
ただ今回のケースでは専門的に判断するようなことが無いので、素直に相手の言うことを聞いたほうがいいかもしれませんね。
まあ、10万円の支払いと謝罪文の掲載で許してくれるって言っているんですからいうこと聞いておきましょう。裁判しても勝てないですよ」

A子「・・・」

 

というわけでA子さんは美容院Bの要求を飲むことにしました(実際の弁護士はもっとまともなことを言ってくれます)

身から出た錆ということわざはA子さんにこそふさわしいでしょう。

嘘の噂は流しちゃ駄目です。

 

確かにライバル店の存在は目障りです。

 

しかし、なぜライバル店が注目されるのかというと、それだけ斬新だったり魅力的なサービスを提供しているからです。

 

ということは同業者としてそこはレスペクトして然るべきです。

 

悔しい気持ちはぐっと抑えて、相手の良いところは認めて、自分の方が優れているところは更に伸ばしていく。

それくらいの気持ちでいた方が健全ですし、ビジネス的に成長があります。

 

だって、同業者とはどこかで関わってくることもありますよ。特に狭い業界なんてそうです。

そういうときに悪口を言われると相手としてはそのことをずっと根に持つことになります。

 

それでは相手から悪い噂を流されることだってあります。

 

たとえば、「あの店はうちの店で有害物質を使っているという偽の情報をお客さんに言いふらしたんだ」というように。

これは嘘ではなく真実ですから言い返せませんよね・・・。

そして、悪口の応酬合戦が始まると・・・。

なんて不毛なんでしょう。

 

そんなわけで、たとえライバル店でも、いえ、ライバル店だからこそ、嘘の噂を流しちゃダメです!

 

 

さて、もし、あなたが美容院Bの立場だったら、警告書を送ることになります。

 

しかし、素人が警告書を書くと見当違いのことを書いてしまうので、多少費用をかけてでも専門家に依頼すべきでしょう。

文章を全部書いてもらって、弁護士名や弁理士名で警告書を送ると一番高くなりますが最も効果的です。

 

文章は書いてもらって自分の名義で送ってもOKですが効果は少し低くなります。

 

文章を自分で書いて送ると、面倒なことになるので、早い段階で専門家に相談した方が良いでしょう。

 

なお、A子さんのような事例の場合には弁護士でも良いのですが、特許権の侵害など技術的に高度に専門的なことや商標権、意匠権、著作権など知的財産権については、弁護士ではなく弁理士に相談しましょう。

 

また、警告を受けた場合は、上記したような単純な事例ではないことも多いでしょう。反論の余地があることが多いと思います。

ですから、しっかりと回答書でこちらの言い分を述べてください。

もちろん、専門家に相談して回答書を書いてもらうべきです。

 

そもそも警告書を出せる状態なのかわからない、誰に相談すればいいのかわからない、弁護士や弁理士を紹介してほしい、という方は、お問い合わせください。