町を歩いていると、ふと吉野家の看板が目に入りました。
視界を少しズラすと、奥にも吉野家の看板が見えました。
でも、それは目の錯覚で、実際にはその看板は吉野家ではなく、大黒屋でした。
ロゴのカラーが「オレンジの下地に黒で文字」なので、目の悪い私には同じに見えてしまっただけです。
もちろん、これはどちらかがどちらかを故意に真似したわけではないでしょう(そうなのかもしれませんが)。
法律的にも何も問題はありません。
ただ、これがコンビニやファストフードの看板だったりすると問題が起きてきます。ファミリーマートやセブン-イレブンと同じような色を使って他人が営業をしていると不正競争防止法違反になります。
また、もしコンビニ各社が色彩の商標登録を受けたら、商標権侵害になります。
(モスバーガーの色だけを似せたもぐもぐバーガーは不正競争防止法違反になる可能性があり、色は全然違うけどモズバーガーなどは商標権侵害になります。)
セイコーマートは位置商標の商標登録を受けているので、他のコンビニはセイコーマートと同一・類似の位置商標の使用を出来ません。
色だけの商標を取得することができると、ブランディングにも役に立ちますし、参入障壁にもなりますので、ビジネスには大きなプラスとなります。
しかし、強力なだけに、特許庁は色の商標の登録には慎重です。
2015年11月現在、色彩だけの商標も音だけの商標も日本では登録されていません。
*例のごとく旧ブログ「問題解決中」の記事です。実際に書かれたのは3年近く前です。
これから色彩だけの商標や音だけの商標が登録される可能性はあるのでしょうか。
また、それらの商標の登録を受けやすくするために何が出来るのでしょうか。
アメリカの商標制度と絡めて考察してみたいと思います。
アメリカで登録されている色だけの商標として有名なものに、ティファニーの青色があります。トンボ鉛筆の消しゴムの青白黒のストライプも登録商標です。
そのような色は見ただけで、特定のブランドが思い浮かんでしまいます。
色だけってかなり強力な権利です。
ということは、他社に取られてしまうと、ライバル社としてはかなり困ったことになってしまいます。
なので、特許庁は簡単には色の商標を登録してはくれません。
アメリカの場合は、商標が使用されることによって有名になっていなければいけませんし(アメリカは使用主義国です。日本は登録主義国)、どの色が何のどの部分に使用されるのかも説明しなくてはなりません。
それに比べ、日本の色の商標登録出願にはそのような限定がありません。
ですから、理論的にはまだ使用していなくてこれから使用していく予定の色の商標でも部位を限定せずに登録できるはずです。
しかし、それだとアメリカの商標に比べ、権利が強すぎてしまいます。
というわけで、国際商標秩序を考えると、日本で色だけの商標が登録される可能性はかなり限定的だと思います。
登録されるとしたら、第一弾は既に国際的に有名な色の商標になるでしょう。
Christian Louboutinの靴底の「赤」などでしょうか。
あ、靴底限定だから色+位置商標か。
指定商品「消しゴム」でMONOの色なら取れそうですね。
さて、色だけの商標よりは、色+位置の商標の方が商標権の威力は狭まりますが、圧倒的に商標権を取りやすくなります。
特許でも同じですが、限定すればするほど権利が取りやすくなり、権利範囲が狭まります。(たとえば、「洗剤の発明」よりは「台所用洗剤の発明」のように用途を限定してしまったほうが権利を取りやすくなり、権利の力は弱まります。
「熱した化学物質A」よりは「30度〜55度cで熱した化学物質A」の方が同じく権利を取りやすく、権利の範囲は狭まります。)
音の商標の場合も、音+声 よりは、音だけで取れたほうが権利的に広いわけですが、取得するのは難しくなると思います。
ちなみにアメリカでは、ジェームズ・ボンドのテーマとかMACの起動音、それからインテルの、ヒュー、パンパンパッパンという音w(この説明で分かるかな?聞けば絶対に分かるのだけど)などが登録されています。
ところで、色の商標も音の商標も「慣用商標(商標法3条1項2号)」は登録されません。しかし、当たり前ですが、指定商品・役務さえ変えれば「慣用商標」ではなくなるので商標登録を受けることが出来ます。
(慣用商標の詳しい説明についてはサイトの該当箇所を参照してください。
たとえば、トラックのビープ音は指定商品「トラック」の場合は「慣用商標」になりますが、指定商品が「パソコン」なら問題なく登録されるわけです。
というわけで、色・音の商標を早く確実に取りたい方は、色+位置商標、音+声商標で商標登録出願をしてみてください。
また、同時に強い権利を手に入れるために、色だけの商標、音だけの商標の出願も試みてください。