過去に何度も肖像権については記事にしましたが、人の顔を保護する権利は、著作権ではなく肖像権です。

 

人の顔は思想又は感情を創作的に表現したものではないからです(著作権法2条1項1号)。

 

では、人の顔に入れ墨(タトゥー)を施した場合はどうでしょうか。

 

この場合はたとえ人体に描いていても入れ墨の著作物性は肯定されます。

画用紙に描こうがアスファルト上に描こうが腕に描こうが著作物は著作物ですからね。

 

 

では、整形をした場合はどうでしょうか。

よく、芸能人の整形前の写真と整形後の写真がネット上に出回っていますが、もし整形した顔が思想又は感情を創作的に表現したものとされると、これらの写真をアップした人は肖像権の侵害、パブリシティ権の侵害に加え、著作権の侵害もしていることになります。

 

それだけならまだしも、顔に著作権が認められると、その著作権は、整形をした医師に帰属することになってしまいます。

 

ということは、自撮りをする度に美容整形外科の医師の複製権を侵害することになり、その写真をSNSやブログにアップすると公衆送信権の侵害になり、氏名表示権を侵害しないために自分の顔に施術を施した医師の氏名を表示しなくてはならず、さらには、怪我をしたり老化して顔が変わってしまった場合には、医師の同一性保持権の侵害という異常な事態に陥ってしまいます。

 

これでは、整形の施術をした医師と患者は常に整形前に著作権の譲渡と著作者人格権の不行使の契約をしなければいけないということになってしまいます。

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これではおかしいですよね。

 

私、福田の個人的見解ですが、顔にはそもそも著作権は発生していないのだから、著作物ではないものをいじっても、著作権の侵害にはならないと考えます。

 

こう考えることで、上記したような異常な事態は起こり得ません。

 

これに対し、たとえば映画の特殊メイクのようなものを俳優の顔に施した場合は、その顔は著作物ですので、真似たメイクをした場合には、その特殊メイクを施した人の著作権を侵害すると考えられます。

 

それから、俳優そっくりのマスクがあって、それをちょっと変えたマスクを作った場合にはマスクの著作権侵害になるでしょう。

 

なお、東地判平23・7・29観音立像入れ墨事件では、入れ墨の著作物性を肯定しています。

 

これは、有体物である人間の体に入れ墨を彫ることにより、彫師の思想や感情を表現していることになるからです。

ということは、通常のメイクには著作物性はありませんが、人間の顔というキャンバスに、元々の顔を活かしつつも別の顔に表現する特徴的なメイクというものには著作物性を肯定し得ると思います。

(メイクの創作性の判断基準として、メイク師の技術レベルやメイクにかかる時間なども斟酌されるでしょう)

 

そして、芸術的なメイクを施した顔を勝手に写真に撮ったりインターネット上にアップすればメイク師の著作権侵害となるでしょう。

そして、そのメイクを一部崩したり手を加えるようなことをした場合には、著作者人格権の侵害となります。

 

過去にファッションショーで著作権侵害を問われた事件では、メイクの著作権は否定されました。

しかし、それは「普通のメイク」だったからです。「普通の」ファッションショーでは無理でしょうが、ハイレベルのメイクを施したモデルの顔は十分に著作権法で保護されると考えます。

 

すると、メイク師の許諾を得ずにモデルが勝手に自分の顔写真をSNSにアップすると、メイク師から訴えられるという事案も生じてきそうです。