*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事と同じです。実際に描かれたのは2年ほど前です。リンクを下さっていた方はこのブログのアドレスに設定し直してくださると助かります。
この前、ランサーズやクラウドワークスといったサイトを眺めていたのですが、そのときにこんな仕事を発注している人がいました。
英語が得意な方募集!
海外サイトから美味しそうな食べ物の写真を見つけてきてレシピを翻訳してください。
写真の数とレシピ数に応じて報酬をお支払いいたします。
英語が得意な在宅主婦が魅かれそうな案件ですが、これは、著作権的に許されない仕事です。
もしこんな仕事に疑問を抱かず飛びついてしまったとしたら、相当著作権意識が低いので要注意ですよ!
まず、著作権法には複製権(著作権法21条)という権利が存在します。
これは、「勝手に複製されない権利」ですので、文章に限らず写真などについても他人は勝手に複製できません。
したがって、美味しそうな料理の写真をダウンロードして日本語サイトにアップしてしまうとこの複製権の侵害となります。公衆送信権(著作権法23条)の侵害ともなりますがここでは説明を省きます。
次に、海外サイトのレシピを勝手に翻訳することは、翻案権(著作権法27条)の侵害となります。
したがって、上記の仕事を依頼しているサイトは、少なくとも複製権と公衆送信権と翻案権を侵害していることになります。
なお、海外サイトの記事を無断で翻訳・翻案などをしてしまい、著作権者から訴えられた場合、その著作権者の居住地まで行って裁判を受けなければなりません。
もちろん、ライターを雇って翻訳記事を書かせた場合、「自分は翻訳していない。依頼しただけだ」という言い訳は通用しません。
著作権者から訴えられた場合には、著作権者の居住地(海外)にまで出向いて裁判を受けなければいけなくなります。
したがってアフィリエイトや広告収入目的で海外サイトの記事の翻訳等をして楽にアクセスを稼いでいる人は、すぐにでも当該記事を削除すべきでしょう。
なお、ちょっと話が逸れますが、重要なことなので説明しておきます。
著作権法では、翻訳だけでなく、勝手に翻案することも許されません。
つまり、海外の小説が面白かったからといって勝手に漫画や映画にしてはいけないのです。
漫画と英語の得意な人は十分に気を付けてください。
ただし、「インスピレーションを受けてオリジナルの漫画を描く」のはOKです。
たとえば、ハリーポッターに感銘を受けて、少年が魔法学校で魔法の勉強をする漫画を描いても翻案兼の侵害にはなりません。(ただし、似すぎているとアウトです。少なくとも名前や容姿は一致しないようにすべきです。
著作権侵害ぎりぎりに見える作品は、著作権的には大丈夫でも、「二番煎じ」「猿真似」という手厳しい評価を受けるでしょう。
また、「著作者人格権(同一性保持権)の侵害」とされる可能性もありますから、安易な模倣は慎むべきです。
著作物を利用したいときには、まずは許諾を取りましょう。また、翻訳記事である旨を明示して、出展も記載しましょう。
「引用」「教育目的」などの例外を除いて無断で翻訳することは許されません。
「自分がされたらどう感じるか」を常に念頭に置き、他人を尊重する気持ちを忘れずにいれば、容易には著作権を侵害することはなくなると思います。
それでも、これっていいのかな?と疑問に持つこともあるかもしれません。
そんなときは「著作権法に詳しい」弁理士や弁護士に尋ねてください。
全ての弁護士・弁理士が著作権法に詳しいわけではないので、気を付けてください。
私も弁理士受験生のときは、著作権法はあまり熱心に勉強せず(範囲が広すぎるわりには試験で出題される数が少ないため)、きちんと勉強したのは合格した後のことでした(^^;
ハンドルネームで失礼いたします。
記事自体の内容には賛同します。個人的にも、海外の記事(それも出版社の雑誌web版)を個人が勝手に翻訳したブログなどがあまりにも多いのを非常に不快に思っておりましたので、意義のある注意喚起だと思いながら拝見しました。
が、ごく一部の枝葉にすぎない部分なのですが、疑問を持ったためコメントいたします。
3年前の記事に恐縮なのですが…。
>海外サイトのレシピを勝手に翻訳すること
この部分です。
レシピは著作権で保護されません。従って、創作料理であろうとも、外国語からの翻訳であろうとも、レシピ部分のみであるならば、勝手に複製しネットに載せても著作権違反とはならないはずです。
もちろん、レシピ以外の部分、英語のレシピブログにはよくレシピの前後に乗っているエピソードや、「美味しそうな(誰かが撮影した)写真」などを許諾なく使うのは著作権侵害です。
私の疑問が誤りであればこのままスルーしてください。見ず知らずの方に不快な思いをさせてをして申し訳ありません。
しかし、もしもレシピは今回の例として適切ではないのであれば、記事の説得力を高めるため、その…。お願いしたいと思いコメントさせていただきました。
コメントありがとうございます。
さて、料理のレシピは著作物には当たらないといわれています。アイデアは特許で守られるべきものです(少数ですが特許で守られている料理も存在します)。
ただし、料理サイトに掲載された記事や料理本は著作物として扱われます。著者の言葉で書かれたレシピ部分に創作性があるため、著作権で保護される対象となります。
もちろん、ありふれたレシピ(著作者の表現が加わる余地のない部分)に関しては著作物と認定されません。たとえば、材料の列挙については著作権侵害とはならないことが多いでしょう。
とはいえ、材料を記載する順番に表現が盛り込まれている可能性もあります。そんな作品は高度な表現物です。
したがって、楽ですが「デッドコピー」「直訳」はご法度です。レシピとはいえども、創作性のある部分が盛り込まれている可能性は否めませんので、気をつけるべきでしょう。