*この記事には上田育弘氏ご本人からコメントを頂いています(スクロールして下の方)。
さすが、元弁理士だけあって商標法に精通していらっしゃいます。
この知識を、法の穴を突いた違法行為スレスレの「ビジネス」ではなく、別のことに使えていたら・・・と残念でなりません。

 

朗報です。商標法改正により、悪意の商標先取り大量出願(流行りの言葉に便乗出願)をすることができなくなりました。
これにより、ベストライセンス社上田育弘)のようなことはできなくなります。

 

・・・と書いてしまうと語弊がありますね。

法律的にもうちょっと正確に書き直します(上の3行だけ引用したりしないでね(^^;)。

 

 

とその前に、ベストライセンス社の手口をおさらいしておきましょう。

 

通常、商標登録出願をする場合は、まず出願手数料を支払い、そこから商標の審査が始まるわけですが、ベストライセンス社の場合は、この一番最初に必要な出願手数料の支払いをしません。

法律上はこのような出願は却下されるのですが、STLTの縛りがあるため、出願手数料が未払いだからといって出願をしていなかったという扱いには出来ません。ですから、特許庁は親切にも、出願手数料が納付されていませんよという通知を何度もしてくれます(代理人である弁理士を介さずに商標登録出願をする素人のためにも特許庁は親切です)。

このような通知がきてもベストライセンス社は決して出願手数料を支払いません。

 

するとどうなるかというと、出願は半年間近くペンディング(保留)状態になります。

 

そして、そのような出願に対して正当な権利者が何らかのアクションを取ってきたときに、「商標、買いませんか?」と持ちかける、というのがベストライセンス社の”ビジネス”です。

 

いわゆる「商標トロール」です。

 

とてもビジネスと呼べるようなことではなく、かなり恥ずかしい行為です。
(他者に価値を与えることでない限りビジネスとは呼べないでしょう。)

 

法の穴をついただけで国民の税金を無駄遣い(特許庁も忙しいんです)させてしまうようなことは許されません。

 

で、このような悪意の商標大量出願については特許庁も頭を悩ましており、ベストライセンス社の出願については無視をするというか、正当な権利者の出願を登録出来るようにしていました。

 

そのため、商標法改正前から悪意の商標出願が登録されることはほとんどありませんでした(「WEARABLE」だとか一部の商標については登録されています)。

 

出願後にベストライセンス社が出願手数料を支払ったとしても、出願人の業務に係る商品・役務について使用するもの(ベストライセンス社が商品を売ったりしていないのは明らかです)ではないので商標法3条1項柱書違反になりますし、他人の著名な商標の先取り出願や公益的マークの出願は商標法4条1項各号に違反することになるので商標登録が認められることはありませんでした。

 

今回の商標法改正により出来なくなるのは出願手数料未払の場合の分割出願です。

 

ベストライセンス社は分割出願を頻繁に行っていたわけですが、分割出願の要件を満たしていないものが大半でした。つまり、原出願の一部ではなく全部を分割出願していたために、要件を満たしていないとして、分割出願の出願日は遡及しないで現実の出願日を基準に判断されていました。

 

しかし、中には分割出願の要件を満たした分割出願をしていることもありました。すると、出願日の遡及効が得られるわけです。

すると、「出願手数料も支払っていないのになんやねん!」ということになるわけです。

 

今回の法改正は、この「なんやねん!」の部分の改正です。

 

新しい10条の規定はこのようになります。

 

商標登録出願の分割
第十条 商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合であつて、かつ、当該商標登録出願について第七十六条第二項の規定により納付すべき手数料を納付している場合に限り、二以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。

 

つまり、政令で定める額の手数料を納付しない場合は商標の分割出願をすることができなくなるということです。

 

これで、ベストライセンス社に悩まされてきた正当な商標登録出願人も、安心できる・・・かな。

 

それにしても、今回記事を書くに当たってベストライセンス社の出願を調べてみましたが、本当に酷いですね。

 

PPAPや民進党、プレミアムフライデー、ラブライブ、チバニアン
POKEGO・・・。

 

ほんと、流行りの言葉は軒並み出願されていますね。

 

でも、流行りの言葉でもいくつか商標登録出願されていないものも見つけました。

 

「けものフレンズ」とか「そだねー」及び「もぐもぐタイム」とか。

*追記 今日調べたら、六花亭さんから「そだねー」が商標登録出願されていました。

 

まあ、これらの用語が上田育弘氏によって商標登録出願されたとしても登録されることはないので関係者の方は気にすることはありません。