旧エンブレムの選考過程が閉鎖的だったとの批判から、東京五輪組織委員会は、誰でもロゴデザインを応募出来るようにしたようです。
*例のごとく旧ブログ「問題解決中」の記事です。実際に書かれたのは3年近く前です。
しかし、民主的なようでいて民主的では無い上にお金がかかります。
その理由を説明するまえに、まず、大前提として「ロゴは公表前に公開してはいけない」というIOCの規定について言及したいと思います。
美大生がデザインした五輪の招致ロゴが優れているので再利用しては、という意見がありますが(私も賛成です)、このIOCの規定により、一度発表してしまったロゴは再利用出来ません。
ということは、また新たに創り直さなくてはいけません。
しかも、全国民から応募してもらっても、結局はデザインを選考する人たちがいるわけですから、その世界は閉じています。
選考委員の選定自体をオープンにするところから始めないと本当の意味でのオープンにはなりません。
どんなに門戸を開いても、選考段階では名前や住所を見て落としたり、賄賂をくれたデザイナーを登用するということが出来てしまいます。
というわけで、不公平感を無くすには、芸大の学長だとかそういう肩書に囚われず「誰でも」選考委員になれると望ましいといえます。
大会社の社長でもなく、芸能人でもない、単なる一般人が五輪組織委員会の選考委員を務めるのです。
しかし、既に選考委員会は発足してしまいましたし、デザインのデの字も知らない一般人にそんな大役は重荷です。
では、どうすればいいか。
「誰が選考委員でも関係ないくらい明確な選考基準を定める」
ことにすればいいのではないでしょうか。
選考委員は単なるお飾りです。
選考基準が有無を言わせないくらい透明であれば全国民が納得せざるを得ません。
ではどんな選考基準を定めればいいのでしょうか。
ここで、最初の問題点に戻りたいのですが、
国民が応募した作品「全て」をウエブ上で公開して人気投票するという方法が一番オープンです。
しかし、確かに「オープン」ではあるのですが、オープンであるということには大きなデメリットがあります。
それは、「お金がかかる」ということです。
なぜなら、五輪エンブレムのように重要なロゴは、商標登録出願しておかなければ、無関係の第三者が商標登録出願してしまう危険性があるからです。
そんな阿呆がいなければ何の問題もないのですが、いるのですから商標登録出願(その他先行商標調査、著作権調査等など)するしかありません。
そのための費用は一件数千万円かかるでしょう。
また、たとえ商標登録出願したとしても、一般に公開してしまうということは、そもそもIOCの規定に照らしてどうなの?という疑問点が沸いてきます。
というか、IOCがこんな規定(公表前に公開してはいけない)を撤廃してくれれば無駄にお金もかからず手っ取り早いのですが、大人の事情(お金お金お金・・・)があるので仕方ないですね。
さて、「誰が選考委員でも関係ないくらい明確な選考基準を定める」と述べましたが、どのように決めれば良いのでしょうか。
ここからはいつもの問題解決手法を用いましょう。
いつも通り、まずは理想から考えます。
「五輪エンブレム騒動を払拭するほどの優れたデザインで、誰もが納得できるものを無料で創る」
何やねん、この抽象的な解決策。アホか、と突っ込みたいところですが、「理想」ですから。
ここから現実的なレベルにまで落としこんでいきます。
まず、「無料」についてですが、ここでは2種類のお金がかかってきます。
一つはデザイナーへの報酬。もう一つは商標登録出願に関わる費用です。
まず、「有名デザイナーに頼むと高額」ということは誰でも想像出来ると思います。
ですから、安くするためには、「有名でも安価または無料でデザインしてくれる人に頼むか、「無名の人に安価または無料でデザインしてもらう」
ことになります。
いずれにしても高額な報酬は払いません。
五輪エンブレムのデザインとして採用されたということ自体が名誉であり自分の名前を売ることになるので無料に近いくらい安価で良いでしょう。
ではどうやって人選をしたらよいのでしょう。
東京五輪組織委員会の言うように、日本は民主主義なのだから、国民投票をすればいい、ということも考えられます。
しかし、国民投票をするということは、応募作を公開することになってしまいます。
上述したように、無関係の第三者からの商標登録出願を避けるためにも、IOCが公開前に商標登録出願を行っておかなくてはいけません。
したがって、応募作が増えれば増えるほど商標登録出願の数が増え、結果として費用がかさみます。
また、第三者の著作権を侵害していないか等の調査をしなくてはいけないのでその調査費用もかかります。
というわけで、国民投票は民主的に見えるので一見良さそうですが、コストが掛かり過ぎるのでやるべきではありません。そんなことにお金を使う余裕があるなら、もっと他にお金を使うべきでしょう。
時間もない。予算をかけるわけにもいかない。秘密裏に進めなくてはならない。
なら・・・
ロゴジェネレーターを使うのはどうでしょう。
機械が自動で創りだしてくれるロゴを使えばいいのです。機械に著作権なんてないからです。
しかし、「依拠」もしていない・・・のかな?
何かを基にしてロゴを制作するんでしょうね・・・。
却下。
では・・・、
招致ロゴをデザインした美大生にもう一度新たにデザインをしてもらっては?
招致ロゴは予備選のようなもので、五輪エンブレムをデザインする資格が与えられる、と考えるとか・・・。
ダメかな?
じゃあ、Twitter上で優れたデザインを発表している人に選考委員会の人が個別に連絡をしてデザインをしてもらう。
これ、いいんじゃないでしょうか。
Twitterなどで一般人が勝手に自分のロゴデザインを掲げています。
フザケたネタ的なデザインが多いのですが、中にはキラリと光るものもあります。
そこで、東京五輪組織委員会が「良さそうなデザイン(公序良俗を害しない、など最低限のラインを守ったもの」をした人に個別にメールなり連絡をします。
他にアイデアはないかな・・・。
ブレストでアイデア出しをするとイマイチですね。
矛盾マトリクスを使ってみましょう。
改善したいパラメータは「製造コスト」で悪化するパラメータは「セキュリティ」でしょうか。
1,24,10,13,2,3と出ました。
2「分離」
これは、権力者から権力を離すということでしょうか。
権力のあるところには悪いお金の腐った香りがしますからね。
24「仲介」
誰かまたは何かを介して選考するといいのでしょう。応募者の名前や経歴が見えないようにするとよいのかもしれません。就職時の履歴書のように。
学歴や経歴ではなく、本当に実力で選ぶことができます。
10「先取り作用」
これは先に商標登録出願を済ませておくということでしょう。
13「逆発想原理」
「五輪エンブレム騒動を払拭するほどの優れたデザインで、誰もが納得できるものを無料で創る」
を逆に発想すると・・・
「著作権を侵害してほしい人が自分の著作物にかかるロゴの使用を許可する」!?
著作権侵害となるのは、「著作権者が許諾を与えていないのに勝手に複製(著作権法21条)行為等をした場合」です。
著作権者が許諾さえ与えていれば著作権侵害にはならないのです。
そこで、自社のロゴを覚えて欲しいとか、とにかく注目を集めたいと思った企業側から積極的に「うちのロゴをパクって下さい!」と申し出ます。
ロゴをパクられた企業は、パクってほしいのだから幸せ。
東京五輪組織委員会も無料でデザインが手に入るのだから幸せ。
国民も税金が無駄に使われないので幸せ。
いろいろ案が出たのでそろそろまとめてみます。
まとめ:
「国民が納得する方法で五輪エンブレムのデザインをなるべく安く選ぶには」
➀ Twitter上で優れたデザインを発表している人たち10人程度に声をかける(既に話題になっているデザインから選ぶのでデザイン的には優れていますし、受賞歴のあるデザイナーではなく一般人のデザインなので不公平感も少ない)。
➁ 自社のロゴをパクって欲しい会社が無料で著作権の許諾を申し出る
➂ ➀が➁のデザインを基にデザインをする
または既に発表したデザインを修正する
➃ 五輪選考委員会がその中からくじ引きで決める
又は、IOCの規定に反しないのならば、予め商標登録出願をしておき、一般公開して投票をしてもらう。
今回の問題解決はいつもにも増してテキトーでしたね。
なんかもう既得権とかが絡むとこうなっちゃうのかなと辟易していたのでやる気のない問題解決法でした。
自社のロゴ使わせるとか、宣伝になりすぎるから良くないし。
私的にはTwitterで話題になっているデザインを本人がちょっと変えて使っちゃえば、と思っています。
そもそも五輪エンブレム選考委員に誰でも立候補出来るのが一番良い気はしますが。
「偉くない」我々が応募してみましょう。
国民の税金は大切に。選考は計画的に。