日本と他国の新規性喪失の例外

新規性喪失の例外とは、特許を受けるための要件である新規性等を失っているにもかかわらず、新規性等があるものとして扱う例外を言います(特許法30条)。
グレースピリオド(grace period)とも言いますが、英語本来の意味は「猶予期間」です。
日本の特許用語では、新規性喪失の例外のことを指すことが多いようです。

第三十条 特許を受ける権利を有する者の意に反して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項各号のいずれかに該当するに至らなかつたものとみなす。
2 特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

この規定、各国によって制度が異なります。

たとえば、米国特許庁では、無条件に1年間認められます(102条(b))。特許庁への申請手続きも不要です。

一方、中国では国際博覧会における公開および極めて限られた条件下でのみ6カ月間認められるだけです(24条)。

韓国は日本の制度(特許法30条)とほぼ同じです。

インドは、所定の様式で事前通知をすることが適用要件となっています(厳しい!)。

 

さて、新規性喪失の例外規定は発明者や出願人にとって便利で良い規定に見えますが、上記のように国によって制度が異なっているので問題が起こることがあります。

たとえば、日本で発明者がインターネット上に発明を発表したとします。
この場合、特許法30条第2項により発表者は救済されるのですが、他国でも絶対に救われるわけではありません。

上述したように中国では国際博覧会における公開のように限られた条件下でのみグレースピリオドが認められるので、日本では特許権を取得できたのに中国では無理ということも起こり得ます。

日本よりも中国のほうが市場が大きいので、日本で特許権を取得するよりも中国で特許権を取得したほうが経済的意義があることも多く、発明者が中国の制度を知らずに日本の制度だけを知っていて発明を公開してしまった場合、非常に困ったことになります。

したがって、真の意味での発明者の救済を考えたら、国による制度の違いはなくすべきでしょう。
もしかしたら特許制度を周知させることを条件に、グレースピリオド自体をなくしてしまってもいいのかもしれません。

その場合、発表に先駆けて特許出願をする必要があるので特許明細書を早く仕上げてくれる特許事務所に依頼する必要があります。

通常、納品されるまでに約4週間、特急料金の支払いにより1〜2週間(事務所にもよります)かかります。
発表日直前の場合には、超特急料金の支払いによるスピード納品というサービスが必要とされるようになるかもしれませんね。