minnneやiichi、メルカリ、creemaといったインターネットのサイト上で個人がハンドメイド品を気楽に売り買いする機会が増えました。

これにより、ハンドメイド品を創るのが得意な人が収入を得る機会が増え、消費者も一点ものの手作り品を手に入れることができるので、私達の生活がより便利になります

 

しかし、そこで気になるのが著作権を始め、知的財産権の侵害にならないかという問題です。

ハンドメイド品を売りたいけれど法律違反が怖くて販売できない・・・

そんな人はインターネットでいろいろと検索してハンドメイド品販売が違法になるかどうかの情報を得ようと努力しているはずです。

しかし、ハンドメイド品に関する法律について記載しているサイトの中には、ライターがハンドメイド作家で法律の専門家ではなく法的根拠に欠けており、間違いが目立つものもあります。

また、「著作権侵害になる危険性が高いから止めておいたほうがいい」と結論づけてギリギリグレーゾーンの法律の説明から逃げていることもあります。

 

しかし、ハンドメイド作家さんが求めているのはそんな結論ではないはずです。

「他者に買ってもらえると嬉しいから安くても売りたい。」

法律違反にならない範囲でハンドメイド品を販売して利益を得たい。」

というのが出品者の願いだと思うのです。

 

そこで、ハンドメイド品を出品しているハンドメイド作家さんのために、法律違反にならないでハンドメイド品を販売できる方法について知的財産権の専門家である弁理士の福田ちはるがご説明したいと思います。

なお、今回は法律を学習している人に向けて書いているわけではないので、あまり専門用語は使わず、わかり易い言葉に置き換えて説明しています。

詳しい法律については知財の知識を御覧ください。

また、この記事を見てもまだ問題が解決しない場合には、コメント欄(スクロールして下の方です)から私に直接質問をしてくださっても構いません。
具体的な質問をする場合だけはメールで質問し相談料をお支払いください。

既に警告を受けちゃった!という人には弁護士を紹介します(金銭の支払いは不要です)。

しかし、まだそのような段階にいない人は、この記事を読んで法律違反にならないようにしてください。

侵害を未然に防ぐのが最も無駄のない方法です。

 

では、法律違反にならない範囲でハンドメイド品を販売する方法について説明していきます。

 

どんな行為が著作権の侵害になるか

1.市販されている生地を使って作ったハンドメイド品を販売したら著作権侵害になる?

まず、前提として、市販されている生地はチェック柄や水玉模様など余程ありふれている模様でない限り、著作物である可能性が高いといえます。

たとえば、手芸用品売り場でよく見かけるマリメッコやリバティの生地はそれ自体が著作物である可能性があります。

 

では、それらの生地を加工してオリジナルグッズ(たとえば、バッグなど)を作った場合、著作権侵害となるのでしょうか。

 

この場合、実は、著作権の侵害にはなりません

ですから、著作権侵害を理由に訴えられる可能性はありません。

(一方、買った生地ではなくて、自分でデザインした生地を使ってハンドメイド品を創る場合には注意が必要です。が、わざわざ生地を手作りする人はいないと思うので説明を省きます)

 

ただし、著作権の侵害にはなりませんが、ブランドの大元がハンドメイド品の販売を禁止している場合には止めておいたほうが無難です。

全く関係のない第三者から誹謗中傷を受ける可能性が高いからです。

たとえば、sousouやリサ・ラーソンやソレイアードは市販されている生地を利用してのハンドメイド品の販売は一切禁止としているようです。

上述したように著作権の侵害とはならないのでsousouやリサ・ラーソンの生地を使ってハンドメイド品を販売しても著作権違反として訴えられることはありませんが、公式でそう言われているのなら止めておいたほうが無難でしょう。

一方、リバティやBRITA、キャスキッドソンは、たとえば、「キャスキッドソンの生地を利用した手作りバッグです」というような記載をすればハンドメイド品の販売はOKとしているようです(太っ腹!)。

全てのブランドがこのような扱いをしてくれればいいのですが、必ずしも「正規品ではありません」と販売者がワザワザ書いてくれるとは限らないので仕方がないのかもしれませんね・・・。

 

2.手芸等の本の説明に従って制作した商品を販売する行為は著作権侵害?

いわゆるレシピ本と呼ばれる手芸の説明本を見ながら作ったハンドメイド品を出品するということもよく行われると思います。

このような行為も著作権侵害にはなることは少ないでしょう
そのレシピ本に書いてある文章や画像をコピーして販売することは著作権の侵害になりますが、本に書いてある説明に従ってハンドメイド品を作ることは著作権の侵害にはなりません。

ただし、そのレシピ本で紹介されている作品が著作物である場合にはそのレシピを見て作った作品を有料販売することは危険です。著作権侵害かどうかはかなり微妙で判断が難しいので専門家に相談したほうが良いでしょう。
私も相談を受け付けております。

著作権の侵害にならなければいいの?他の法律違反の危険性

上記したようにいずれの行為をしても著作権違反であるとして法的責任を負う可能性は低いでしょう。

しかし、著作権法以外の法律違反になってしまう可能性があります。

実用新案権の侵害

たとえば、レシピ本を見てハンドメイド品を制作した場合、著作権侵害にはなりませんが、もしそのレシピが実用新案登録されていた場合でまだ実用新案権の存続期間内にある場合には実用新案権の侵害となってしまう恐れがあります。

なお、実用新案権の侵害であることを避けるためには、予め実用新案権の存在を調査すれば良いのですが、一般の人には少し困難だと思います。

 

どうしてもその作品を真似て作りたい場合には調査をしてから販売することになりますが、調査費用等を考えるとそこまでして販売する価値はないと思われるので、ある程度複雑なレシピだなと感じたら完全に真似をするのは避けて、違う要素をたくさん加えたり一部の要素を削除して自分オリジナルにしてしまうと良いでしょう。

図面通りでなければ、同じ技術的思想では無くなる可能性があるからです。

また、著作権についても、翻案権の侵害にならないほど変えていればもはや別作品なので著作権の侵害ともなりません。

なお、たとえ実用新案登録されているものでも、「公的に権利が認められた絶対的な権利」ではありませんので、たとえ権利者から「実用新案権の侵害だ」と訴えられたとしても必ずしも差止請求に応じたり損害賠償金を支払う必要はありません。

 

ただし、本当に実用新案権を侵害している恐れもあるので、もし訴えられたら、すぐに専門家に相談しましょう。
対応に時間がかかるほど損害賠償額が上がっていきます。

また、自分の判断では知的財産権の侵害にならないほど変えたつもりでもそれほど変わっていない可能性もあります。
その場合には訴えられてしまう可能性もあるので、事前に専門家に相談すべきでしょう。

全ての弁護士がこの判断を出来るわけではないので、無駄な相談費用を発生させないためにも専門の弁護士に相談しましょう。
お問い合わせいただければ、無料でご紹介いたします。

意匠権の侵害

デザインを守る法律は著作権法ではなくて意匠法です。
したがって、有名なブランドの多くは意匠権で保護されています。

 

有名ブランドのバッグなどデザインを真似した品を販売した場合にはたとえ個人でも意匠権侵害の責任を負わなくてはいけません。

商標権の侵害

ブランドロゴにそっくりなロゴをハンドメイド品にあしらっていたりした場合は、商標権の侵害となります。
有名キャラクターの姿や漫画の題名などを生地に使った場合は高い確率で商標権の侵害となるので気をつけてください。

リメイク品も危険です(ちなみに私は昔、ブランド品のリメイク品をもらったことがありますが、「こんなの作った」と無料で貰ったので許容範囲内でしょう)。

 

そして、商標権を侵害した場合には、著作権侵害のときよりも賠償金の額が大きく、また裁判になったら負ける可能性が高いといえます。

 

また、商標権の侵害にはならずとも、”なんとなくディズニーっぽかったりアンパンマンっぽいキャラクターを使ったデザイン”の生地やぬいぐるみなどを創ると不正競争防止法違反になる可能性が高くなります。

 

とにかく、顧客吸引力のある有名キャラクターや有名ブランドには近づかないことが懸命です。

 

法律違反にならないでハンドメイド品を販売できる方法まとめ

・市販されている生地を使ってハンドメイド品を作る場合には公式サイトの使用規約を読みましょう。

・ハンドメイドのレシピ本を参考にしながらハンドメイド品を創る場合には複雑なレシピでないのなら、著作権ではなく実用新案権と意匠権の存在に気をつけましょう。調べ方がわからない場合は本に書いてあるものとは大幅に変えた方が無難です(色を変えた程度では駄目です)。

ごく基本的な作り方の場合には実用新案権も意匠権も存在しないでしょうからそこまで気にする必要はありません。

 

基本的にハンドメイド品を販売するときには作品が複雑で無い限り、著作権侵害が問題になることは想像よりも少ないと言えます。

 

それよりも、実用新案権や意匠権、商標権といった他の知的財産権の侵害に該当することが多いので気をつけなくてはいけません。(他にも民法上の不法行為になったり不正競争防止法違反になることがあります)

特に商標権に関しては一番気を使ってください。

商標権の侵害というのは、ブランドのロゴを自分の作品に付けてしまうことなどです。

エルメスだろうがスタバのマークだろうがブランドのロゴなどがついているとお客さんはほしいと思ってしまいます。

それでは、お客さんはあなたの作品ではなく、有名ブランドを欲しがっているだけです。

そんな作品を販売するのは法律違反ですし、作る方としても自分が認められたわけではないのですから嬉しくないですよね。

 

たとえ、「他の人もやっている」「少ししか売らない」からといって気軽にハンドメイド品を販売していると、ある日突然知的財産権の侵害として警告状が届くことになるかもしれません。

なお、法律違反にはならない場合でも、なんとなく気分が悪いという理由で一般の人が著作権侵害であるとして公式に訴えたり販売者にネット上で攻撃を仕掛ける例も横行しているようです。

全く無関係の第三者から名誉毀損とも思えるほど辛辣なコメントを浴びせられ続けると、「ちょっとお小遣い稼ぎをしようかな」と思って登録しただけのハンドメイド作家さんは精神的に大きな傷を負ってしまうでしょう。

したがって、たとえ他の人がやっていても、自分は大丈夫と思わずに、倫理的に許されないかもしれないと思うことはしない方が無難でしょう。

 

また、法律違反をしているハンドメイド作家さんを発見した場合でも、怒りに任せてコメントをするのは避けて、淡々と「知的財産権の侵害になるようです」と法律に基づいて削除を要請すると良いでしょう。

一般の人がそんなコメントをしても聞かない人もいるので、その場合にはこのブログにこんな説明が書いてあったとリンクしてくださっても構いません。

ハンドメイド品は作る人も買う人も気分が良くなるように、無用な争いを事前に避けられるようにしたいものです。

ハンドメイド作家さんも自分のオリジナルの作品をどんどん作っていきたいですね。

「あなたの作品だからほしい!」といって買ってもらえると最高ですよね!

 

追記:具体的な製品を見ていないため一般論しか述べられないので、コメント欄では危険なことは最初からしない方が良いという結論になりがちです。
しかし、やらないということは、すなわちビジネスのチャンスを逃してしまうということでもあります。
したがって、メールでご相談いただいた場合にはなるべくビジネスを行える方向で助言をいたします。

たとえば、既存の知的財産権の調査をしどうすればその知的財産権を侵害しないで済むかをアドバイスいたします。

ハンドメイド作家さんや動画製作者さん、アプリ開発者さんなど様々なご相談者様がいらっしゃいますが、ビジネスを始める前の知的財産権のチェック、ビジネス継続中の知的財産権の取り扱いについて、それぞれの分野において必要な助言をいたします。

他者の知的財産権を侵害していなければビジネスが成功するわけではありません。知的財産権のチェックはビジネスを始める前に最低限やるべきことの一つに過ぎません(実際にビジネスを成功させるためには集客やどれだけ固定資産にお金をかけるか、人を増やした場合のトラブル等などにも気を配らなくてはいけません)。

しかし、知的財産権のチェックをしておけば少なくともビジネスが軌道に乗った後に強制的にビジネスを中止させられたり犯罪者となる危険性からは身を守れます(アダルト分野と同じように、知的財産権を侵害しているコンテンツはある日突然削除され収益がゼロになります。また損害賠償請求だけでなく刑事罰を受ける危険性もあります)。

ビジネスが軌道に乗った後には今度は自身の商品・サービスが真似をされることから防ぐための参入障壁について考えなくてはいけません。
そのときには再度お問い合わせいただければ、ステージに合ったご提案をさせていただきます。

大きな資本を持たない者こそ、物としての形を持たない知的財産権の活用すべきです。

あなたが一歩を踏み出すお手伝いを出来ればと思います。

ご相談は安価に行っておりますが事前にお見積りを提示してから着手いたしますのでご安心ください。
なお、有り難いことに今までのご相談者様は皆さん前向きで素敵な方々ばかりでした。元々知財に関する意識の高い方がご相談くださるわけですが、希望を語ってくださるとこちらまで元気になってしまいます。