*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事と同じです。実際に描かれたのは2年ほど前です。リンクを下さっていた方はこのブログのアドレスに設定し直してくださると助かります。

 

自炊代行業者の著作権侵害が最高裁で認定されました。

詳しい話をする前に基礎的なことを説明したいと思います。

 

まず、大前提として、「著作権者以外の人が著作物を複製すること」は複製権(著作権法21条)の侵害にあたります。

 

したがって、たとえ本屋さんでお金を払って買った本でも勝手にコピーすると複製権の侵害に当たることになります。

 

しかし、例外規定として「個人的に利用する場合はこの限りではない(著作権法30条)」と定められています。

 

ですから、私たちが自炊をすることは著作権侵害には当たりません。

 

しかし、代行業者に頼んで自分の代わりに自炊してもらうと、自分でしているのか他人がしているのかどうか疑義が生じます。

 

自炊代行業者の行為がこの「私的複製」に当たるかどうかがこの訴訟の大きな争点の一つでした。

 

自炊代行業者たちはもちろん「自分たちは本の所有者の手足として働いているに過ぎない」と主張しました。

 

しかし今回、「複製の主体は営利目的である業者」であるとして私的複製には当たらないとした一審判決が支持されました。

 

個人的には残念な判決です。

 

なぜなら、たくさんの蔵書を保有する本の愛好家たちは、本を裁断してスキャンするというかなり面倒な作業を自分でやらなければいけなくなってしまったからです。

 

本を何千冊も持っていて仕事の忙しい人は仕事の合間を縫って自炊をするか、裁断機とスキャナーを買ってアルバイトを雇って家に呼び寄せて監視をしながら自炊させるという方法をとることになるでしょう。

 

裁断機とスキャナーの会社は儲かりますが、さて、作家たちにはプラスなのでしょうか?

 

短期的にはプラスでしょうが、長い目で見たらマイナスの匂いがプンプンしてきます。

 

確かに一部自炊代行業者の行為には目に余るものがありました。

 

個人が持ち込んだ本を売り飛ばしてしまったり、データを流出させてしまったり、そもそも裁断した本を自炊スペースに放置して勝手にスキャンさせたり、権利者から見れば許せないような行為を平然と行っていました。

 

しかし、一部のそのような業者のせいで自炊代行すべてを禁止してしまうと上述したように困る人が出てきます。

 

彼らは自炊をして何か悪いことを企んでいるわけではないでしょう。

 

単純に書籍を軽くていくらでも持ち歩ける便利な電子媒体に落とし込みたいだけです。
複製(著作権法21条)したいわけではなく、変換したいだけです。

 

特に、本に書き込みをしてある場合は、その欄外の書き込みもスキャンしたいはずです。

 

それを全部自分でしろと言われると、本を買う気が削がれてしまいます。

 

本来は出版業者側が技術などのイノベーションによって解決しなければいけない課題を一般消費者に押し付けた判決という感じがします。

 

作家さんたちの気持ちもわかるけど、お金が欲しいなら、消費者に嫌われるようなやり方じゃなくて、もっとスマートなやり方で稼いでほしいです。

 

たとえば、自分で電子書籍と紙の書籍を出版してしまうとか。

 

あれだけネームバリューのある人たちならそもそも出版社を介しないで自分で直接本を売ることができるしその方が何倍も儲かる(例えば現在、印税が10パーセントしか貰えていないけど、自分で本を売れば手助けしてくれる人への手数料を差し引いても60パーセントは自分の手元に入ってくる)し・・・。

 

また、海外へ流出しているコンテンツからも収益を得られるように何らかの手段を早急に講じるべきでしょう。

 

国内だけで争っている場合ではありません。

 

日本の文化の発展を考えたら、一部の既得権者を儲けさせるのではなく、イノベーションを推進させるためにも手足として働くだけの自炊代行はOKにしてほしかったと思います。

 

出版社にも電子書籍をガンガン売ってほしいです。過去の出版物の電子化も積極的にして。
特に紙の書籍を買った人には後に電子書籍を大幅割引価格で販売するとかできることはたくさんあるはずです。

 

電子書籍には電子書籍にしかできない表現方法もあるので(動きや音など)、たくさんの電子書籍が発売されて、新しい表現方法が生まれてくることを望みます。

 

ところで、昔、友人から浅田次郎氏の本を借りたことがあります。、それから好きになって浅田次郎氏の本を買うようになったのだけど、友達が貸してくれたその本は友達のお父さんが買ったもので、友達のお母さんも弟もみんな読んでいたそうです。

 

確かに私はその本を借りただけで買わなかったのでその分の売り上げは作家さんにはいきませんでしたが、他の本を購入したので「一冊化したことはファンを増やすための広告費」と考えれば、たくさん本を出している作家さんにはプラスなのではないでしょうか。

 

ですから、友達の間で貸し借りする行為や図書館で貸し出す行為も過度に敵視してほしくはないなと思います(図書館であまりにも買われると困るでしょうが、そもそも図書館で借りる人はお金を出してまでは読まない人が多いと思われる)。

 

今回は浅田次郎さんの他にも林真理子さんや弘兼憲史さんなどなど有名な作家さん漫画家さんたちが原告となっていますが、彼らに対し、なんとなく悪いイメージを抱いてしまいました。

 

自分たちの権利を守ろうとする行為は正当な行為であってなんら非難されるべきものではありません。

 

しかし、私は作家さんたちに「自分の作品を読んでみんなに元気になってほしい」というやなせたかしさんタイプの聖人を期待してしまっているので、「てゆーか世の中金だろ、金」という感じが悲しいのです。

 

まあ、私が青臭いだけなんですけどね・・・。

 

でもいくらなんでも自炊代行禁止は行き過ぎではないかと・・・。

 

ところで、紙媒体だと一冊の本を回し読みするということができるけれど、データの場合は同じことをしても、「データが送り手と受け取り手の両方に複製されてしまう」という問題があるので気楽には出来ません。

 

でも親しい友人同士ならやってしまいそうだし、どこまで著作権法を厳しく適用すればいいのか曖昧だし課題はたくさんあります。

これからの時代に合わせた著作権法の整備が必要です。