KEN KIKUCHI事件に見る人物名を含む商標の登録可能性を高める(?)方法

たまに、人物名を含む商標が出願されますが、基本的に他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)については商標登録されないこととなっています(商標法4条1項8号)

ただし、マツモトキヨシやコシノジュンコのように人物名なのに登録されている商標もあります。
そこで今回は、人物名の商標登録出願が拒絶された事件について考察してみたいと思います。

 

まず、KEN KIKUCHIという商標は、デザイナーの名前です。
指定商品は第14類「貴金属製置物,キーホルダー」 第18類「かばん金具,革ひも」 第25類「男性用・女性用及び子供用の被服,カフス,ガータ ー,ベルト,履物」などです。

特許庁では当該商標出願は拒絶されており、その理由は、本願商標はこれに接する取引者需要者をしてその構成中 「KENKIKUCHI」の文字部分を,「キクチ・ケン」を読みとする氏名を 「名」「姓」の順にローマ字表記したものと容易に認識させるものであり「キクチ・ケン」と読まれる「菊池 健」という氏名の者が各地域のハローページ に掲載されていることからその構成中に他人の氏名を含む商標であるといえ、かつ、上記他人の承諾を得ているとは認められないものであるから商標法4 条1項8号に該当し登録することができないというものです。

 

これに対しKEN KIKUCHI側は審決取消訴訟を提起しました。

【KEN KIKUCHI側の主張の要旨】

1.「KEN KIKUCHI」には一定の周知性がある(国内14店舗、海外4店舗。スティーブン・タイラー等海外著名人もKEN KIKUCHIのファン)

2.全て大文字

3.商標法4条1項8号は、第三者の人格保護のみ考慮することを想定していない。

しかし、上記主張にもかかわらず知財高裁では拒絶審決が維持されました(=商標登録は認めない)。

 

知財高裁ではいろいろな理由をつけていますが、私は「これってちょっとフェアじゃないんじゃない?」という印象を持ってしまいました。

だって、「コシノジュンコ」も「キクチタケオ」も「マツモトキヨシ」もみんな商標登録されてるから!!!

なんでケンキクチが駄目なのか。
特に、ケンが駄目でタケオがいい理由は何なのか?タケオじゃなくてタカシだったらどうなのか?

 

知財高裁の述べた理由は以下のようなものです。

 

キクチを読みとする姓もケンという名前も日本人にとってありふれた氏名である。そのため、人の氏名として客観的に把握されるものであるから、本願商標は人の「氏名」を含む商標(商標法4条1項8号)であると認められる。
そして、証拠によれば「菊池健」という氏名の者が北海道小樽市に存在し「商標出願の出願時から現在まで現存している者」と推認されるので原告主張の取消事由は理由がない(登録は認めてあげないよ)。

 

この理由を見るといくつか疑問が湧いてきます。

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疑問①北海道に住んでいる菊池健さんに許可をもらったらKEN KIKUCHIは登録されたのだろうか。

疑問②確かに「キクチ ケン」は日本人にとってありふれた氏名だが、「KEN KIKUCHI」はありふれた氏名だろうか。

いくらローマ字のときには名前を先にするという決まりがあったとしても、普段名前を先・姓を後に名乗るのは芸人など限られた人だけではないだろうか(マイケル富岡、ポール牧、マツコ・デラックスなど。デラックスはちゃうやんけ・・・

疑問③上記②を考えれば、「KEN KIKUCHI」はもはや造語と言っても良いのではないか。

疑問④この商標が登録されたとして菊池健さんは何か被害を受けるのだろうか。登録されないことによる守られる菊池健さんの人格的利益とデザイナーの利益を考えると後者のほうが大きいのではないか

疑問⑤諸外国でも「他人の氏名」であれば、その他人の承諾が無い限り商標登録を認めないという判断はしていない。

疑問⑥「ケン キクチ」が駄目で「キクチタケオ」が良い理由は?

 

・・・要するに、KEN KIKUCHIには著名度が足りないから登録してあげないよー」ということではないのですか!?

だって、キクチタケオが登録されているのだから・・・(いい加減しつこい)。

 

結局、そういうことなんですよね?

そうとしか思えません。

ですから、デザイナーさん等で、自分の名前を商標登録したい方は、「まず周知度を上げる」ことが重要であって、新人デザイナーの場合は商標登録不可能である可能性を考えたほうが良いでしょう。

 

なお、変わった名前だったら登録される可能性があることを考えると、やっぱりフェアじゃないと思ってしまうのです。

たとえば、今回は菊池健さんというありふれた名前だったから駄目でしたが、「長宗我部望都」さんとか、「一 一 (にのまえ はじめ)」さんだったら周知性は低くても登録されてしまう気がします。こんな名前の人、他にいないでしょうから。

こうしたことを考慮すると、これからデザイナーとしてやっていきたい人は、実名ではなくペンネームで作品を発表していくのもありなのではないかと思います。

興味の有る方は、ご自身の名前をグーグルで検索してみてください。意外と同じ名前の方が見つかると思います。

なお、私も試しに検索してみたら、全国に福田ちはるさんはたくさんいらっしゃいました(笑)

旧姓だったらともかく、今の名字だと「ありふれた名字」になってしまいます。
福田姓になってから10年以上経っているのに、私にとって福田は未だにペンネームみたいなものなので、早く福田としてのアイデンティティを確立したいものです。
私の旧姓を知っている人から「福田さん」と呼ばれると「違う違う。それ、福田君の名前」と思ってしまいますのでね・・・。