ロッテリアの「ご当地ふるポテ」に京都の原了郭の登録商標「黒七味」を無許諾で使用されており、原了郭からロッテリアに届いた警告書によってロッテリア側は商標権侵害の事実に気づき、急遽ご当地ふるポテの製造販売を中止したというニュースが流れてきました。

 

*いつもながらこの記事も旧ブログ「問題解決中」のものです。実際に書かれたのは3年ほど前です。

リンクをくださっていた方はURLをこちらの記事のものに直してくださると助かります。

 

ロッテリア側は商標登録の事実を知らず、原了郭に謝罪したと言いますが、これは、なんだかロッテリアが可哀想になってしまう事件です。

いえ、もちろん知的財産権は「法の無知はこれを許さず」が原則ですので、登録商標の確認義務を怠ったロッテリア側にもミスはあるのですが、ふつう、「黒七味」が登録商標だなんて思いません。

そもそも、原了郭の商標登録出願自体、一度拒絶査定を食らっています。

 

そう、こんな「普通名称」は商標登録を受けられないのが商標法の原則なのです(商標法3条1項)。

しかし、例外があります。

一つは、使用により有名になった商標の場合。

その場合、商標法3条2項の適用を受け、商標登録を受けることが出来る可能性があります。

2つ目は、「特殊な字体」などを使って、デザイン的な商標にした場合。

この場合は、その字体に限られますが、商標登録査定を受ける可能性が高まります。

J-Platpatで確認したところ、原了郭の「黒七味」は、以下のように、筆で書いたような特殊な字体で登録されています。

 

したがって、もしロッテリアが「黒七味」という名称だけを使っていたのなら商標権侵害にはなりませんでした。

 

では、今回の事件ではどうでしょう。

 

ご当地ふるポテのパッケージを見てみましょう。

 

下の部分の「黒七味風味」の部分には、恐らく商標権の効力は及ばないと思います。

 

問題は上のイラストに書かれた行書体の「黒七味」です。

 

これがいけないのです。

 

これがなければ、ロッテリアは商標権の侵害にはなっていませんでした。

 

イラストはどうみても原了郭の胡椒の入れ物なのですが、それはまた別の問題です。

 

「黒七味」を登録商標と同じまたは似ている字体で使っているかどうかが問題なのです。

 

原了郭の「黒七味」は、何年も粘ってようやく商標登録を受けた商標です。

その粘りには敬意を表しますが、何の悪意もないロッテリアが人気商品の販売をできなくなってしまうのでは可哀想です。

原了郭側は、味が全く違う別物だ、と主張していますが、それはそうです。ロッテリアには原了郭の登録商標に便乗しようという意図などなかったでしょうから。

 

今回の商標権侵害事件はビジネスを行う会社にとっては、他人事として笑っていられません。
明日は我が身です。

 

原了郭の「黒七味」のように、粘って商標登録査定を受けた商標権には要注意です。

新商品の発売前には必ず商標調査をする癖を付けて下さい。

会社に知財部がない場合は、兼任で良いので知財担当者を置くと良いでしょう。

知財の知識の商標カテゴリーを見て学んでいただけたらと思います。