他社が商標登録している用語でリスティング広告を出す場合の注意点

Googleの元国際関係責任者であるロス・ラジュネス氏が、先月Googleを退職しました。ラジュネス氏は退職の理由について、Googleのスローガンである”Don’t be evil(邪悪になるな)”が、守られていないからという趣旨の言葉を述べています。

グーグルが世界をよりよく、より平等にするために尽力してきたことは知られていますよね。

しかし、ここ数年でGoogleの方針は変わってしまいました。

自社の収益を最優先に考えて初めたのではないかとの懸念があります。

たとえば、Google adwords。
ヤフープロモーションと同じように、お金さえ払えば広告を出してくれます。

この、お金さえ払えば、というところが問題です。

たとえば、SNSで見かけるインフルエンサーたちも、お金を受け取ってステマをしている人たちはたくさんいます。一度でもそういうことをすると、スクショが出回り過去を消すことは出来なくて個人のブランディングは再起不能とはいかないまでも相当落ちてしまいます。

同じように、グーグルもお金さえ出してもらえば広告を出すよということをするとグーグルへの信頼を失ってしまいます。

マーケティングの世界においてリスティング広告は有効な手段ですが、これは検索を汚染し正しい情報へのアクセスを困難にします。

以前あるIT企業のCEOとお話していたのですが、その企業のライバル社がその企業のブランド名でリスティング広告を出していました。
それをフェアじゃないと感じた私は、「止めてくれるようにお願い出来ないでしょうか?もし聞き入れてくれないならばこちらもやり返すと言えば止めてくれるのではないですか?」と提案したことがあります。

するとそのCEOは「やり返しはしません。でも止めてくれるようにお願いしてみようとは思います」とおっしゃいました。

数日経って今日見たら、ライバル企業はリスティング広告を止めていました。

良かったと思うと同時に、ライバル社も好きな会社であったために過去の広告出稿を悲しく思いました。

決して法律に違反するわけではありません。

しかし、フェアではないのです。ただそれだけです。

おそらくライバル社の社長が直接指示を下したわけではないでしょう。マーケティング責任者が勝手にやったことでしょう。

それでも、途中で気づいたはずです。自社が不誠実な広告を出していることに。

だから、もっと早く止めていてほしかった、そう思いました。

ライバル社の方たちは素敵な人たちで応援したいとずっと思っていただけにこの点がずっと気がかりだったのです。

・・・とまあなんだかどうでもいい愚痴を書いてしまいましたが、ブランド名のリスティングの話が出ましたし、商標権がリスティング出稿を防げるのかどうかについても説明してみようと思います。

商標権の存在がリスティング出稿を止められるか

アドバイスを求められた場合には状況に合わせて異なる助言をさせていただくことになります。

他社によるリスティングを止めるには商標権を取得していることが効果的です。
なぜなら他社ブランド名でのリスティング出稿は商標権の侵害となる虞れがあるからです。
でも、いきなり商標権の侵害と言われてもよくわからないかもしれません。

そこで商標法の専門家である弁理士の観点から(マーケターではなく)商標権についてご説明してみようと思います。

商標権の侵害とは

そもそも商標権の侵害とは何でしょう?

他社の会社名を使うこと?
他社のブランド名を誹謗中傷すること?

法的には、商標権の侵害とは「指定商品または指定役務について登録商標またはそれに類似する商標を使用すること」とされています。

「同じ文字列を使うこと」は商標権の侵害となるわけではないので、他社名や他社ブランド名でリスティング広告を出すことが即商標権の侵害となるわけではありません。

商標権侵害による罰則

商標権を侵害すると十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(商標法78条)
こととされています。

リスティング広告における商標トラブル

リスティング広告における商標トラブルとしては主に以下の二つがあげられます。

商標が「広告文」で使われている

商標登録済みの自社名や商品名などが、広告文の中で表示されている場合、商標権の侵害であると主張できる可能性があります。 この場合には、差止請求権や損害賠償請求権もできますが、最も最初にやるべきこととして、Google AdWordsの場合はGoogleに、Yahoo!プロモーションの場合はYahoo!JAPANに対して、商標権侵害の申し立てを行うことで、他社による広告内での商標登録キーワードの使用を制限することができます。

ただし、商標権侵害の申し立てをしても100%認められるわけではありません。
したがって、商標権侵害の申し立てをする前にはご相談ください。

商標が「キーワード」として使われている

自社名や商品名で検索したにもかかわらず、自社の広告よりも上位に他社の広告が表示されてしまうときはイラッとしますよね。

しかし、残念ながらこのようなリスティング広告の出し方は商標権で使用を禁止出来ません。
でも、悔しいですよね。

こんなときは、広告を出している他社と直接交渉をすることをお勧めします。

ライバル社と交渉するなんて・・・と思われるかもしれませんが、早めに交渉しないと被害が広がるばかりです。

また、ライバル社も自分がやり返されることを考えると素直に要請に従ってくれる可能性が高いといえます。
グーグルやヤフーの手の上で踊らされているのはお互い嫌ですからね。

なお、自社保有の商標が「文字商標」ではなく「ロゴ商標」の場合には商標権侵害の申し立てをしても認められない可能性が高くなります。
そのため、文字商標の商標権も取得しておくと良いでしょう。
ご相談いただければ安く取得する方法などもご提案いたします。

商標権侵害の申し立ての方法

ここでは、裁判の話ではなく、グーグルアドワーズに申し立てる方法を説明します。

Google AdWordsの場合

Google AdWordsに対して商標権侵害を申し立てる場合には、こちらから申請を行うことになります。
氏名や会社名など、申立人の情報を入力し、申し立てを行いたい商標キーワード、対象国、商標の登録番号等、「商標の詳細」を入力します。(商標名は半角・全角も正確に入力してください)

上記の申請を行ってしばらくするとGoogleから審査結果の連絡が届きます。

リスティング広告と商標権の侵害 まとめ

他社のブランドネーム出稿をする手段としてのリスティング広告と商標権侵害についてご紹介してきました。

基本的に商標権の侵害とならない態様なら、リスティング出稿することは可能です。

ただし、リスティング出稿を嫌うユーザーも多いため、ブランドを傷つける可能性もあります。

一般の人にとってはリスティング広告自体も知らないためにリスティング広告は直接お客様を得ることが出来る手段として大きな力を有しますが、ウェブマーケティングを多少知っている人にとっては、「この会社は汚い」という悪いイメージを抱かれてしまう虞れもあります。

特にオンラインでサービスを提供している場合、そのサービス利用者にはウェブマーケティングに詳しい人もいることでしょう。

その人達への負のブランディングをしてしまうことを考えると、「他社ブランドネームでのリスティング」は長期的に考えるとマイナスです。

要するに、違法では無いがやらないほうが良いことなのです(ただし、ユーザーがマーケに詳しくない場合はやってもいいと思います。ガッツリお客さんを奪えます)

 

基本的にブラックまたはグレーなことをしている方が短期間に儲けることが出来ます。

そんなとき、私はリスティングで他者ブランド名を使って来ない方の会社に味方したくなってしまいます(判官びいきに近い?)。

ビジネスでは些細なことが原因で大きなトラブルとなってしまうこともありますが、正々堂々と勝負する会社の場合は目先のお金をとるのではなく誠実さというブランドを重視するので味方を増やしやすいと思います。

炎上芸含め、なんでもいいから目立つまたはそのような炎上芸人と組むとか短期的に収入が得られる「他社ブランド名でのリスティング」という行為は、長期的に見ると自社ブランドを大きく毀損する行為といえます。

なお、ウェブマーケティング及び商標について疑問がある場合には、ご相談ください。
どちらか一方だけに詳しい人に尋ねても、確実ではありませんから。

特に、ウエブマーケターに商標の法律的見解を聞くことはご法度です。
ウェブマーケターが書いた商標に関する記事には間違いが散見されるので信じてしまって商標トラブルに巻き込まれてしまっては大変です。
知的財産権に関する法律については専門家である弁理士に尋ねるのが一番です。