カンダタもびっくり!最強の糸を超える糸

個人的にここ最近で一番興奮したニュースです。
報道発表を見てつい飛びついてしまいました。

なんと、今まで天然繊維で最強と言われてきた蜘蛛の糸を超える強度の糸が発見されました。

 

その糸とは・・・

 

なんと、ミノムシの糸です!!

 

今までは天然繊維で最強と言われてきたのはクモの糸です。しかし、ミノムシの糸は、弾性率、破断強度、およびタフネスの全てがクモの糸よりも上回るのだそうです。

農研機構ウェブサイトのこちらの記事によると、農研機構と豊田工業大学は、ミノムシの糸の成分であるタンパク質の1次構造(アミノ酸配列)や2次構造(コンホメーション)、高次構造(結晶構造やその凝集状態)を詳しく調べ、ミノムシの糸の強さの秘密を探った結果、ミノムシの糸は、結晶領域と非晶領域が周期的に繰り返した秩序性階層構造から成り、その秩序性はカイコやクモの糸に比べ、圧倒的に高いことが分かったそうです。

さらに詳しい内容については以下に引用させていただきます。

この高い秩序性階層構造はシルクタンパク質のアミノ酸配列の特徴8)によって形作られることを明らかにしました。この高度な秩序性階層構造により、引っ張った時に糸に働く応力が個々の結晶にまんべんなく分散し、応力が糸全体に効率良く伝搬されることで、他のシルクに比べ高い弾性率、すなわち硬い性質を発現することが分かりました。

さらに、放射光施設(SPring-8)の高輝度X線9)を利用し、繊維の延伸過程で生じる構造変化を調べたところ、ミノムシの糸の高秩序性階層構造は、糸が伸ばされる過程でも崩れることなく、糸の切断まで維持されることが分かりました。この、延伸される過程で崩れることのない高度な秩序性階層構造が、ミノムシ糸の高破断強度・高タフネスな性質を与えていることを明らかにしました。

ミノムシの糸は、環境に優しく、持続可能な成長社会に適した素材として注目されていることから、ミノムシ(オオミノガの幼虫)の糸を繊維強化プラスチックの強化繊維などとして産業化を目指す動きはすでに始まっているそうです。

石油に頼らないバイオ素材の生産は正に我々が求めて止まないものではないでしょうか。

 

ところで、石油に頼らないバイオ素材としてはクモの糸が有名で、Spiber株式会社(クモの糸に含まれるフィブロインをベースとした人工合成タンパク質やそれを加工した繊維等素材の量産技術の確立に成功した企業)の動向はずっと気になっていました。

 

ただ、クモは共食いをするため、量産化が難しいのだそうです。

ドラクエでもクモは両手に武器を持っていた気がします。

 

ということは、ミノムシの特性を考えるとクモの糸を上回る製品を作れる可能性があります。

 

ミノーン最強!?

 

これは、繊維業界だけでなく、ファッションなどアパレル業界も放っておけないニュースだと思います。
保温力や保湿力などの点で天然のミノムシの糸は大いなる可能性を秘めているからです。

 

図を見てみましょう。


ミノムシの糸の階層構造

ミノムシの糸を構成するタンパク質(シルクフィブロイン)の1次構造(アミノ酸配列)、2次構造(コンホメーション)、さらに高次構造である、結晶構造や結晶と非晶の凝集状態に至る幅広い階層構造を解明しました。その結果、他のシルクと比べて、ミノムシの糸は、圧倒的に高い秩序性を有する階層構造から成ることが分かりました。
1次構造については、ミノムシの糸を構成するタンパク質(シルクフィブロイン)を分泌する腺(絹糸腺)に存在するフィブロイン遺伝子の塩基配列を調べることで、フィブロインの特徴的なアミノ酸繰り返し配列(1次構造)を決定しました。

・ミノムシのフィブロインを構成するアミノ酸としては、グリシン(Gly)とアラニン(Ala)が占める割合が多く、それぞれがほぼ等しく約40%を占めていることを明らかにしました。
・Alaが20~22残基連続する部分(アラニン連鎖領域)と、Gly-Ala (AlaがSerなどになる場合もある)やGly-Gly-Ala (AlaがTyrなどになる場合もある)が繰り返される部分(アラニン’非’連鎖領域)とから成ることを明らかにしました。

2次構造、結晶構造については、ミノムシ糸のX線回折測定より、フィブロインの2次構造としては分子鎖が伸びたβストランドというコンホメーションを形成し、それらが互いに集合してβシート構造から成る結晶を形成していることが分かりました。結晶を形成していない非晶も存在し、結晶と非晶が繊維方向に沿って周期的に配列していることも分かりました(図1)。ミノムシの糸はカイコやクモのシルクに比べはるかに規則的なアミノ酸特徴配列を取っており、それが、秩序だった結晶と非晶の周期構造形成に寄与していることを明らかにしました(図1)。

ミノムシの糸の産業利用への可能性が高いことから、強い繊維を人工的に作ることが容易になりそうですね。

自然界の既に存在するものを応用する研究にも役立ちます(過去記事では蓮の葉の研究など)。
「生物機能を活用したモノづくり」って、環境にも優しい素晴らしい活動ですね(^^)

 

バイオミメティクスってワクワクします!