現代では、誰もが容易に曲を利用し、また曲を創ることも出来ます。
そのため、ネットでは音楽を利用したことによるトラブルが後を絶ちません。
なぜかというと、法律では禁止されている行為でもやること自体は簡単なので(だって、テレビで歌手が歌っている姿を写メで撮ってSNSに投稿なんて誰にでもすぐ出来る!)、法律を知らずに(または知っていても高をくくって)音楽を違法に利用してしまうことがよくあるからです。
そこで今回は①著作権法の話に加え、②運営会社や歌手の所属事務所による規約の話、更には③現実的な利用方法についてお話したいと思います。
歌手が歌っている動画をネットにアップロードする行為
①法律の話(一番厳しい)
動画は、歌を歌っている歌手の著作隣接権や動画を撮っている人の著作権など様々な人の権利が錯綜している状態です。
したがって、様々な権利を侵害してしまうので基本的に利用しないほうがいいです。
②規約の話(ちょっと緩い)
その歌手の所属事務所などが動画や画像の利用についての規約を公表している場合があります。
その規約で利用OKと書かれている行為についてはたとえ法律で禁止されていても行って大丈夫です。
・・・といっても、動画利用をOKとする規約はまず無いでしょう。
公式が投稿したものをリツイート・リポストするなどは問題ありません。
一度ダウンロードしてから自分のものとして投稿することは絶対に止めてください!!
「引用元を掲載」と書いておきながらきちんと引用元が掲載されていない例もよくあります。そういうアカウントは悪質性が高いので第三者から通報され結果として凍結されても仕方ないと考えておきましょう。
権利者にとっては、最もやられたくないことの一つですから。
③現実的な方法
法律でも規約でも禁止されているので、実質的に無権限者による動画のアップロードは不可能です。(公式動画のシェアは可能)
・・・が、ネット上ではたくさんの動画が見られます。
動画は視覚に訴えかけるので非常に効果的なので誰もが使いたいことでしょう。
ですが上述したように動画のアップロードは実質的に不可能です。
でもやっている人はたくさんいる。
そこでどうするか・・・ですが・・・
広告収入や自分のサイトへの誘導など何らかの形で違法にアップロードした人に金銭的メリットがある形でのアップロードは絶対に避けて、
それ以外、たとえば純粋なファンによるファンのためのアップロードは許されても良いのではないかと思います。
もちろん法律上は違法なんですよ。
でも、実質的に権利者に害が無い、または権利者にとってプラスならうるさく言うことは無いと思うのです。
テレビ放映やライブイベントのごく一部(数秒程度。数十秒では行き過ぎ)をアップしたり、
今は活動していない歌手の昔の姿など「ファンが好意的に」捉えた動画をアップロードする行為に対しうるさく言う必要は無いと思うのです。
たとえば、死後何年経っても未だにSNSでは尾崎豊の動画が出回っています。シェアしている人たちは好きだからシェアしているだけです。
シェアして儲けてやろうなんて微塵も感じさせません。このさき何年経とうとも尾崎豊の動画はずっと拡散し続けるでしょう。
また、アイドル活動を止めただけで生存している人物の動画が出回ることもあります。
一昨日もSNSで伝説の歌姫である松浦あやの動画が拡散されていましたが、どう見ても「あややが好きで好きでたまらない!」という人が広めたようにしか見えませんでした。
あややの動画で稼いでやろうなんていう気持ちは感じさせず、純粋に歌唱力抜群のダンスも上手くて可愛い伝説のアイドルを応援したいという気持ちを感じました。
そして、シェアしている人たちも同じです。
みんなで「あややっていいよね!」という気持ちを共有しているだけです。
このような行為に対し、「お前の行っていることは著作権の侵害である。動画を削除せよ」と命ずる行為はあまりにもKYです。
ハロプロが止むに止まれずそのような主張をするならわかりますが、もし私がハロプロ運営側だったら「あややを応援してくれてありがとう!みんな、どんどんシェアしてね!」と言うと思います。
だって、自分のところで活躍していたアイドルが未だに愛されているのって嬉しいじゃないですか。
また経済的にも、SNSで拡散されている動画を見て、「やっぱあややっていいよな」と思った人がDVDやグッズを買ってくれることになるので権利者にはお金が入りますよね。
それならうるさく言うことは無いですよね。
というわけで、「現在活動していない歌手については、その動画を利用して広告収入を得たりしない限り、動画をアップする行為はうるさく言う必要はないだろうと思っています。
また活動中の歌手でも、ライブやDVDに興味を持つきっかけを与えることになるなら、数秒程度の動画のアップは許容範囲内だと思います。
もちろんこれは私の考えに過ぎませんので、権利者が駄目だと言っているのにやってしまい、裁判沙汰になった・・・となっても私は責任をもてません。だって、法律では禁止されている行為なのですから。
でも、これくらいはいいと思うのですけどね・・・。
現実問題として既にやっている人たちはいっぱいいるので、悪質なものはともかく、ファンに活動を止めさせることはプラスになるとは思えません。
著作権法はもっと現実に即した改正をすべきです。
なお、今現在の著作権法下では、動画をどうしても使いたいなら事務所などに問い合わせて利用させてもらうのが最も安全でしょう。
歌手の画像をネットにアップロードする行為
法律の話(一番厳しい)
これも動画と同じように法律では禁止されています。
写真を撮った人の著作権と歌手のパブリシティ権を侵害するからです。
一般人の肖像とは違い、有名人の肖像には高い金銭的価値があるのです。
写真集や週刊誌を写メに撮って投稿というのもいけませんよ。
規約の話(ちょっと緩い)
歌手の所属事務所が利用OKとしている場合は利用可能です。
たとえば、法律ではSNSのアバターとして歌手の肖像を利用することは許されませんが好意的なアカウントである限り規約でOKとしているところもあります。
なお、有名人の悪口を言っているだけなのにその有名人の肖像を使っている場合には利用を禁止されるでしょう。
現実的な方法
基本的に、歌手のように有名人の肖像は顧客吸引力(人を魅きつける力)が高いので、純粋にその歌手を応援する目的でない限り利用は許されないと考えたほうが良いでしょう。
SNSでもそのSNSでリンクを貼っている先のサイトでも全く広告収入を得ておらず何らの見返りも得ていない場合、そして歌手の評判を貶めたりしないのならうるさくは言われないでしょう。
直接的に金銭を得ていなくても間接的に何らかの利益を得ている場合は歌手の所属事務所から削除依頼や金銭の支払い命令がきても仕方がないと考えましょう。
ついつい有名人の写真は使いたくなってしまいますが、単なるアイキャッチに利用するような使い方はその顧客吸引力を利用して自分が利益を得るだけですので戒めるべきです。
特に、広告が貼ってあるようなサイト(サイト運営者に収益が入ってこない形での無料ブログの運営はOKと思われる)では有名人の写真の無断利用は言い訳不可能でしょう。
なお、フォロワーを増やしたいからという理由で歌手の生写真プレゼント企画などはしてはいけません。やりがちですがこれは許されません。その歌手のファンであるからこそ、歌手のパブリシティ権は守るべきです。
きちんと公式のグッズを買ってそれをプレゼントしましょう。
歌詞や歌手がライブで語ったことをネットにアップロードする行為
法律の話(一番厳しい)
歌詞を全て載せることは著作権侵害となります。1フレーズを載せることや題名を載せることは著作権の侵害とはなりません。
歌詞を1フレーズずつ投稿し、連投し続け全て載せるような行為は許されません。
ライブレポを全て文字に書き起こしてブログに載せるような行為も著作権侵害となります。
特にライブレポに関しては、ネタバレになる可能性もあるので慎むべきでしょう。
なお、替え歌は同一性保持権の侵害となります。
規約の話(ちょっと緩い)
歌手自身がライブレポに関して声明を発表している場合があります。そうした文章を読んで、どこまでが許される範囲か調べてみましょう。
現実的な方法
歌詞はネット検索すれば発表されていることもあります。
ならば、歌詞をSNSで載せるくらい良いのではないかと思ってしまうでしょう。
しかし、歌詞を全て載せることは著作権侵害であることに変わりは無いので、削除依頼が来たら速やかに削除すべきです。
商用サイト(何らかの収入を得ているサイトなど)でそのまま載せ続けると損害賠償請求をされる可能性があります。
替え歌については、元ネタが誰にでもわかるほど有名な作品については、やってもよいのではないかと思います。だって、面白いし実害は無いから。
法律では禁止されていても、これくらいいいじゃん、と思ってしまいます・・・(ただしやる場合は自己責任でお願いします)。
有名人の似顔絵をネットにアップロードする行為
法律の話(一番厳しい)
有名人の写真をそのまま投稿することはパブリシティ権の侵害となると述べました。
では、そっくりな似顔絵を描いてネットに投稿したら?
同じように権利侵害行為となります。
規約の話(ちょっと緩い)
法律では禁止されている「有名人の似顔絵の投稿」ですが、所属事務所によってはOKとしているところもあります。
なので、ファンの人はどんどん似顔絵を描いて発表するのも楽しいと思います。
ただしそのグッズを販売するには販売許可を得なくてはいけません。
無断でその似顔絵を利用したグッズを販売することは許されません。
現実的な方法
芸能人などの似顔絵を描いてネットにアップすることは法律では禁止されていますが、収入を得ないのなら、似顔絵を描いてSNSで投稿する行為は問題がないことがあります。
ただし、グッズ販売などを行い収入を得てしまっては言い訳はできないので販売したいのなら公式の許可を得ましょう。
ライセンス料を払うことになるので経費はかかりますが、ファンとして望ましい行為でしょう。
既存曲を自分で演奏して動画投稿サイトにアップロードする行為
法律の話(一番厳しい)
既存の曲を楽譜を見て自分で演奏したり、歌ったものを自分のブログなどにアップロードする行為は著作権侵害となります。
規約の話(ちょっと緩い)
個人が非営利の目的で、楽譜どおりに自らが演奏、制作した音源をyoutubeなどの動画投稿サイトに投稿することは問題がありません。
youtube側で包括契約を結んでくれているからです。
現実的な方法
市販の音源をそのまま利用してアップロードすると、著作隣接権(レコード製作者の権利)の侵害になります。楽譜を見て自分で演奏するか、市販音源を利用したい場合には権利者から許諾をもらいましょう。
また、楽譜通りに演奏するのではなくアレンジを加えて演奏しそれをアップロードした場合には同一性保持権の侵害などが問われることもあるのでお気をつけください。
音楽と著作権・まとめ
基本的に著作権法は厳しすぎて現実でのニーズに合っていないと思います。
そのため、運営会社などが独自に規約を発表しているので、その規約をよく読み、ファン活動を続けると良いでしょう。
ただし、規約は著作権法よりは緩いとはいえ、まだ厳しいと思います。
規約違反行為は毎日たくさん目にします。
そこで、早期に著作権法を現実に即した形に改正してほしいところですが、それにはまだ時間がかかるでしょう。
では、それまでどうすればいいかというと、
・純粋なファン活動ならまず反対されることはないので気にせず続けてしまう(たとえば、芸能人の肖像をアバターに利用する、似顔絵を描くなど)。
・歌手の動画や写真などで一切の収益を得ない(収益を得たいならきちんと権利者から許諾をもらう)。
・削除依頼が来たら速やかに対応する。
のが安全です。
以上、私が考える”トラブルになりにくい著作物等の利用の仕方”でした。
あくまでも私個人がこう考えているだけであって、法律上は”違法”な行為も含まれています。
しかし、法律があまりにも杓子定規であるために、現実に即した解決策を提言してみました。