【開業前に知っておきたい】弁理士法人と特許事務所の名称と商標登録

令和4年4月1日に改正弁理士法が施行されます。農林水産知財業務が追加される等魅力的な改正ですが、特許業務法人の名称を弁理士法人に変えなるために手続きに苦労されている代表の方々は大変ですね。お疲れ様です。
弁理士の知名度が低いので、どうせなら業務内容をわかりやすくするために知財業務法人で良かったんじゃないの?とか、弁理士を知財業務代理士と改名すれば良いのにと考えてしまいましたが知的財産管理技能士と勘違いされそうですね。
特許事務所も知財事務所の方が知財関係の仕事は何でもするよというアピールになって良いかもしれません。
これから開業する人は、一人法人も可能になったので最初から弁理士法人でも良いですし、特許事務所からでも良いですね。

さて、開業するときは特許事務所の名称について悩むと思います。所長弁理士の名字をつけることも多いですが、地名を付ける人も多いですね。

ところで、「地名+特許事務所」って商標登録できるのでしょうか?

結論から言うと、商標登録できないようです。

商標法3条1項6号該当性の判断を示した審決取消請求事件が参考になります。
事件番号・事件名 令和2年(行ケ)第10125号
商標出願 商願2018―30044号「六本木通り特許事務所」
第45類「スタートアップに対する意匠に関する手続の代理

特許庁が不成立審決をした理由は、「スタートアップに対する特許に関する手続の代理」という役務の需要者は、「六本木通り特許事務所」という商標に接したとき、「六本木通りという呼び名の道路に近接する場所に所在する弁理士の事務所」という、役務の提供場所を示したものと理解するにとどまるため、自他役務識別力はなく、商標法3条1項6号の「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に該当する、というものです。

原告は、「六本木通り特許事務所」は、新規で意外性のある造語であるから自他役務識別力があるとも主張していましたが判決は、そういった意外性もないとしてこの主張も排斥しました。

なので、商標登録したい場合には「地名+特許事務所」は避けて識別性のある名称にしたほうが無難です。
または、「所長弁理士の名字+地名+特許事務所」なら自他役務識別力が認められるので良いかもしれません。関口弁理士が渋谷に特許事務所を開業するなら「関口道玄坂特許事務所」ですね。一方、関口弁理士が大阪で開業する場合には「関口道頓堀特許事務所」になるかもしれません。”道”の字は共通していますがイメージが随分変わりますね。関口弁理士も道頓堀に飛び込みそうなコテコテな弁理士さんなのではないかという気がしてきました。ネーミング、大事ですね。(なお、関口弁理士の話は今度書きます。誰やねんな?)

ちなみに、転職(退職)をするとき等には弁理士登録を抹消しないために一時的に適当な名前で特許事務所を開業するという方もいらっしゃいます。そういうときの特許事務所の名称はごくあっさりとその弁理士の姓であることが多いようです。
まあ、特許事務所名を宣伝しない(する必要がない)のだから何でも良いですよね。

ところで、地名って難読漢字も多いですが、あまり有名でない難読漢字の地名の場合は商標登録できるのでしょうか?喜連瓜破とか分遣瀬とか重蘭窮とか読めないですよね?どなたか難読地名が地元の弁理士さん、「出身地名+特許事務所」で商標登録出願してみてください。