東京や大阪ではわりと頻繁に「任天堂は無関係」と車体にデカデカと書かれた例の車が爆走しているのを見かけます。
そうです。マリカーです。
乗っているのは外国人ばかりですが、よく、道行く人がスマホを向けて写真を撮っている光景を目にします。
通行人からカメラを向けられると特別感を感じて余計乗りたくなってしまうのかもしれませんね。
さて、そのマリカーが、あろうことか「任天堂は無関係」について商標登録出願をしていました・・・。
何やってんの・・・。
さてさて、この商標登録出願は特許庁において見事認められ登録されるのでしょうか。
説明してみたいと思います。
結論から言うと、無理でしょう。
だって、商標法を知らない人だって「こんなの登録されちゃアカンやろ」って思いますよね。
その直感は正しいです。
それを証明するために、以下、条文を挙げて説明してみたいと思います。
まず最初に頭に浮かぶのは、「任天堂」という会社名が入っていてもいいの!?ということだと思います。
(本来は後述する3条を先に挙げるべきですが、この記事は一般向けですのでわかりやすさを優先します)
商標法4条1項8号によると、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」とされています。
ここで、「任天堂」は「任天堂株式会社」の著名な略称に当たるので、任天堂を商標に含む「任天堂は無関係」は「他人の著名な略称を含む商標」であって、「その他人の承諾を得ていないもの」になります。
なお、「任天堂は無関係」は、一種の経営方針を表しているとも考えられるので、商標法3条1項6号に該当すると考えることもできそうです。
場合によっては4条1項7号に該当することもあるでしょう。
いずれにせよ、上述した4条1項8号に該当するでしょうから、「任天堂は無関係」という商標は登録されないものと考えます。
こんな商標が登録されちゃったら、「iPhoneじゃないよ」「Googleは関係ない」というように似たような商標登録出願を目論む人が増えそうですしね(^^;
出願者である知財防衛株式会社は、マリカー社と同じ住所なので、同法人と推定されます。この点を考慮すると、4条1項19号違反もありそうですが、とうでしょうか?
商標登録出願人である知財防衛株式会社は、マリカー社と同じなのですか?私はここら辺の事情を知らないのでなんとも言えないのですが・・・。
それはともかく、4条1項19号違反は今回の件では当てはまらないと考えています。
条文を見るとわかる通り、4条1項19号は「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」である場合に該当します。
確かに「不正の」というところだけに目を向ければ該当しそうですが、「任天堂は無関係」は「任天堂」商標と「同一または類似の商標」には当たりません。(商標審査基準の類似の判断基準を参照してください)
どちらかというと4条1項15号の方が同一・類似を要件としない分、当てはまりそうです。
弁理士試験では問題に著名商標が出てきたときは、まずは基本の4条1項10号や11号を挙げ(該当する場合のみ)、事例に即して4条1項15号や19号に触れてください。
受験勉強がんばってください(^o^)
ググりますとマリカー社と知財防衛株式会社は、品川区某所と住所が同じであり、出願商標とカートに貼ってある文字のフォントも一緒であることから、同一人と推定されます。そのため、裁判に負けた腹いせ(?)に、任天堂ブランドの汚染化を狙った不正目的があったと思ったのですが、商標の類否判断について、条文の読み込みが甘かったことに気がつかされました。精進します。
面白い情報をありがとうございます(^^)
商標法3条、4条に関しては、短答の問題をたくさん解いてみてから条文の素読をすると、理解が飛躍的に高まると思います。
そして、短答合格レベルの知識を得て論文式試験の問題に挑戦すれば、基本事項は外さなくなるはずです。
代理人を通しての出願なのでしょうか・・・?
いささか稚拙な感が否めませんね。