商標の専門家は誰?
最近は、一般の方でも「商標」という言葉を目にする機会が増えてきました。
そのため、かつては「知る人ぞ知る」存在だった商標というものが「経営をするなら取っておかなくてはいけないものらしい」という認識に変わってきたように思えます。
とはいったものの、商標はどうやって取ればよいのかよくわからないと思います。
「行政に関することだから行政書士に頼むか」と考え行政書士に依頼するということもよくあるようです。
しかし、商標登録出願に関する専門知識を有するのは弁理士であり、商標登録出願の代理をするのが許されているのは弁理士または弁護士です(行政書士が仕事を請け負うと非弁行為になってしまいます)。
弁護士に商標出願を依頼することもできますが、金額的に高いことが多いようです。非弁行為にならない限り、弁護士以外の士業にまずは仕事を依頼しようという考え方はここでも有効だと思います。
なお、試験を受けて合格した人がなる弁理士の方が安心できることが多いと思われます。
どの弁理士に商標登録出願を依頼すればいいの?
さて、商標出願するなら弁理士ということはわかりました。
では、どの弁理士に頼めば良いのでしょうか。
弁理士は、特許事務所で働いています。
そのため、基本的には「家や会社の近くにある特許事務所(の弁理士)に依頼する」で良いと思います。
しかし、ここで問題があります。
料金がよくわからない
・・・不動産を購入するときのように、頻繁に購入しないものや金額が高いものなどは料金が不透明です。
医療費の方が適切かもしれませんね。
商標という専門的なものの場合は、区分の増加などにより追加料金がかかってきます。
それが、一般の人にはわかりにくいのです。
医者(弁理士)に言われるがままにはいはいと料金を支払うことになってしまいます。
すると、当初予定していた予算を大幅に超えてしまうということがあります。
専門用語を使われても説明を受けてもよくわからないでしょう。
よくわからないから専門家を利用しているのですし。
こうして、普段コンビニのペットボトルは高いから、スーパーで買って節約している人も、商標出願をするときに予想外の出費に苦しむということがあります。
資金が潤沢な企業には良いのですが、ギリギリで経営している個人事業主などにとっては重い経費としてのしかかってくるでしょう。
これらのことを考慮すると、
「最安値が理想。でも、最安値を掲げる特許事務所(弁理士)は質の点でちょっと怖い。多額の追加料金がかかってくるかも」
という怖さがあります。
でも、最もコスパの良い特許事務所(弁理士)がどこかなんて一般人に見分けられるわけがないと思います。
各特許事務所のウェブサイトを見ても、料金表がまちまちで比較しにくいです。
(そもそも料金表が無い特許事務所もたくさんあります)
私が各特許事務所のHPを見て料金表を作れば良いのかもしれませんが、さすがに特許事務所の数が多すぎです。
料金が明快で信頼できるお勧め特許(商標)事務所って無いの?
お勧め特許(商標)事務所はあるのですが、その事務所の宣伝になってしまいますし、比較表でも作らない限り信頼性が担保できないので、ここではお勧め事務所を挙げません。
(聞かれればお近くのお勧め特許事務所は申し上げますが)
友人知人に「お勧めの特許事務所ない?」と聞いて、返ってきた言葉を参考にするのが一番良いと思います。
オンライン商標登録出願サービスとは
さて、ここからはオンライン商標登録サービスについてお話してみたいと思います。
お手軽に商標登録出願ができるからです。
オンライン商標登録出願サービスとは、人工知能(AI)を活用した商標登録出願サービスのことです。
元祖はcotobox(五味和泰社長)です。
AIを利用している分、人間の弁理士の労力を省くことが出来、料金が安めということが特徴です。
もちろんAIを利用していない特許事務所でも料金が安い所はたくさんあります。
(最近は格安を売りにしている特許事務所が増えてきました)
そのため、AIを利用しているから安いと安易に結びつけてしまうのも単純過ぎるかもしれません。
料金については、やはり一般の方には不明瞭です。
商標制度というものの基礎を知っていないと追加料金の意味も理解できないし、そんなことを勉強したくなくて時間を節約したいから弁理士に依頼しているのだから・・・と考えるとそれも仕方ないのかもしれません。
しかし、ユーザーの気持ちになってみれば、「安い&質が高い」のが理想ですが、「質が高い」とは何を意味するのかよくわかりませんし、権利範囲をどこまで広げれば良いのかと考えるとなかなか難しいものがあります。
そんなわけで、ぐだぐだと書いてきましたが、3社のオンライン商標登録出願サービスについて料金面と特徴面に注目しながら述べてみたいと思います。
cotoboxについて
Cotobox
上述したようにAI商標登録出願サービスの元祖です。
料金は3社の中で一番安い印象。
サービスの使い心地については以前の記事でも言及したことがあるのですが、私は「商標というものをある程度知っている人でないと使いにくいのでは?」という印象を受けました。
弁理士の業務をITにより効率化しており、AIに全てを任せているわけではありません。
「中の人」である弁理士が存在し、個別に対応可能です。
正統派リーガルテックだと思います。
Toreruについて
こちらもCotoboxさんと同じで、弁理士さんが起こした会社です。
専門家である弁理士でも使っている人が多いとのことなので、弁理士の業務をITにより効率化している点ではCotoboxさんと同じです。
こちらも「中の人である弁理士」が存在します。
機械に全てを任せているわけではありません。
nomyne(ノミネ)について
2018年10月末にリリースしたサービスです。
実はかなり以前に運営元であるGMOブライツコンサルティングさんよりご紹介いただいていたのですが、今頃記事を書いております・・・。
2日前になって、ノミネさんが自らのメディアで記事を書かれていたので慌ててこの記事を書きました。
ノミネさんが自社も含めた3社比較をしているのでは中立性を保てないと思います。
そこで、3社いずれとも無関係の私が中立的な視点で記事を書きます。
さて、サービス内容についてはお知らせいただいた内容を一部引用させていただきます。
nomyneでは単純な前後方一致だけではなく、簡易的ではございますが外観類似にレーベンシュタイン編集距離を採用し、より高度な検索を行っております。また、類似群コードごとに「称呼類似」の検索も行い、登録可能性の高い商標名であるかチェックできるサービスになっております。
①簡易検索(何回でも無料)※今現在は会員登録は不要
ステップバーの「ステップ1.まずはブランド力調査」
トップページの「あなたのブランド」欄に権利化したい名前を入力し、「調査を開始」ボタンを押すと、約400万件の国税庁の法人データと照合し、重複する企業名がないかチェック。
特許庁の商標データとの外観類似検索を行い、完全一致または類似の商標がないかチェック。
②詳細検索(月5回まで無料)※会員登録が必要
ステップバーの「ステップ2.さらにブランド情報を入力して詳細検索」
簡易検索でOKであった場合、称呼と指定商品を入力し、詳細検索。
類似群コード毎に称呼類似を調査します。
無料サービスはここまで。
価格については、詳細検索がOKであった場合、
「ステップ3.代理人に出願申請を依頼(お見積り提示)」のフェーズで確認。
弁理士により価格が異なる。
参考:1区分の場合の現在の料金体系
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出願費用:22,800円~
内訳
印紙代:12,000円
代理人手数料:10,800円~(税込)
登録費用:39,000円~
内訳
印紙代:28,200円
代理人手数料:10,800円~(税込)
計:61,800円~(一括納付-権利期間10年)
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分割納付を選択した場合
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登録費用:27,200円~
内訳
印紙代:16,400円
代理人手数料:10,800円~(税込)
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出願および登録を合わせた合計額は、50,000円~(税込)
太字で示したように、「中の人」によって料金が変わってくるようです。
まず、ここが気にかかって記事を書けないでいました。
「価格が不明瞭なのではないか?」と思ったからです。
nomyneさんが、cotoboxさん及びtoreruさんと大きく違うところは、ブランドコンサル由来のサービスだという点です。
ドメインなどネーミング検索全てを網羅しているイメージです。
ここにおいて、実は私自身はブランドコンサルという存在が苦手だという個人的事情があります・・・。
それは、過去に「ブランドコンサルに騙された!」という人から泣きつかれたことがあるからです。
そのブランドコンサルは、商標のことを何も知らなかったそうです。
そのため、ブランドコンサルの言うとおりにブランディングを進めた後になって他者が商標権をとっていることが判明しにっちもさっちもいかなくなったそうです。
このため、私は強い怒りを感じ、「ブランドコンサルを名乗るなら商標くらい知っておけ!」と思い、怒りに任せて「ブランドとはほぼ商標登録とイコール」というような暴論を書いたこともあります。
まあ、商標登録をしたからってブランド化するわけではないのですが、まず押さえておくべきだろうということで書きました。
とにかく、ユーザーを食い物にするブランドコンサルは許せん!というわけで未だに商標を知らないブランドコンサルは嫌いです。
基本私はユーザー目線で考えていますし、たとえ利益を出さなければいけない企業でもそこを曲げては絶対にいけないと思っているので、利益の追求に躍起になっている企業には冷たいことも言います(利益を追求するのは企業としては当然ですが、それが行き過ぎると、結果としてユーザーが離れてしまうと思うのです。)
もちろんノミネさんがそうだと言っているわけではありません。
なお、私はブランドコンサルの他にもIT系大企業にも苦手意識があります。
これは単純にユーザーとして不利益を受けたからです。
無料で利用できるサービスに登録したところお金を払わされた。それだけです。はい。
こんな「ブランドコンサル」に対しての不信感とIT系大企業への不信感が重なり、ノミネさんからはせっかくサービス内容を詳しく教えていただいていたのにずっとご紹介しないままでいました。
重ねて申しますが、ノミネさんを利用して不利益を受けたわけではありません。
ノミネさんは、ご連絡を下さった際に「率直なご意見を書いていただければ」と仰られましたし、「我が社だけ良く書いてくれ」なんて言っていません!担当の方もとても誠実な印象を受けました。
以上オンライン商標登録出願サービス3社について述べましたが、いずれも素晴らしいサービスなので甲乙つけがたいです。
試しに使ってみて、最も使いやすいところを利用すればよいのではないでしょうか。
ただ、やはりお手軽だからといって弁理士の見解を一切貰わず商標出願してしまうというのは怖いので、一度は弁理士に会って自社がどのようなビジネスをしているかということを説明するのがいいと思います(いずれのサービスにも「中の人」はいます。ただし別料金になるので要チェック)。
そんなわけで、私としてはこのオンライン商標登録出願サービス3社だけでなく「住まいの近くの特許事務所」または「信頼できる人が勧めてくれた特許事務所」も十分に競争力があると思います。
それにしても、商標登録出願の料金比較ってやりにくいですね・・・。
登録料の支払いを5年分にするか10年分にするかで表示される料金は変わってきますし、区分と言われたって一般の方には分かりません。
全部同じ条件にして比較してみると良いのかもしれませんね。
ただ、料金について最安値が判明してもサービスの質については保証できないわけですし、どうしたら良いのでしょ・・・。
なお、日本パテントデータサービスによる商標の検索サービス「ブランドマークサーチ」というものも存在します。
こちらのサービスは一般向けではなく、弁理士等の業務効率化用のツールです。
toreruさんも弁理士が業務効率化のために用いていると仰っていましたし、ブランドマークサーチのようなサービスは、専門家には便利なものでしょう。
価格というのは弁理士がどのレベルの企業と取引したいか、というメッセージだと思います。
酷な言い方ですが1万円単位の金額差に一喜一憂するような零細企業は10年も続かないので商標登録には見合わないでしょう。
中小企業の大半は設立後数年以内に廃業してしまうので、そんなお客様を応援するためにも料金が安いのに質が高いサービスを提供して欲しいと思っています。
もちろん、自由経済下では弁理士が金額を高く設定してその値段でもお願いしたいというお客様と取引するのも良いし、金額を安くして使いやすくするのも良いと思います。