「大迫半端ないって」と書かれたTシャツが売れに売れているそうです。
言うまでもないことですが、「大迫半端ないって」の大迫とは、サッカー日本代表のFW大迫勇也選手のことです。今年の流行語大賞になりそうな言葉です。
これについて、4年前に商標登録を受けていた個人の方(大阪府東大阪市の会社員塩崎氏)が複雑な思いをしているというニュースを見ました。
以下、ニュースからの引用です。
「ネットで見つけて、これは面白いと思った。商標の勉強をしている最中でもあったので出願した」
塩崎氏は「僕としては200枚売れたら十分と思っていたのですが…。数千枚売れたものがあると聞くと、商標権を持っている人間としては複雑」と話している。
・・・なんというか、ツッコミどころ満載のニュースです。
最初にお伝えしておきたいのですが、商標法はこんなバカげた金儲けが出来るようにはなっていません。
「OSAKOHANPANAITTE」の商標登録があっても、アパレルメーカーやTシャツ屋さんは「大迫半端ないって」という文字を付したTシャツを販売することができます。
なぜなら、「大迫半端ないって」という標章の使用は、商標としての使用(「商標的使用」)にあたらないからです。
これは、判例で確立しています。
商標法を知らない人が考えても、サッカー日本代表とは全く無関係の塩崎氏が「大迫半端ないって」という言葉を独占して儲けるのはおかしいというのは、わかりますよね。
商標法では、こんな商標の独占を許していません。
ベストライセンス社並に恥ずかしい行為です。
私はこうした商標を、「はったり商標」と個人的に呼んでいます。
福田的定義【はったり商標とは】
商標法上効果がないけれど、商標法に無知な人を牽制したり、商標の使用料を取り立てるためにとった商標。
商標法の目的に背く恥ずかしい行為。
インターネットの発達した現代では、このような商標権を取得すると、実名とともにその悪事が晒され、2ちゃんねるのような掲示板で散々に叩かれる目に遭う。
そのため、現代社会では炎上に耐えうる程メンタルの強い人間でない限り絶対にとってはいけない。
まあ、こうした商標の登録ってすごく多いんです。大企業でも普通にとっています。
・・・でも、普通の感覚で「こんなのおかしい!」って思いますよね。
ですから、たとえ「大迫半端ないって」を塩崎氏に無断でTシャツに付したとしても商標権の侵害には問われません。たとえ塩崎氏から訴訟を提起されても、裁判所は塩崎氏に味方はしません。
というわけで、アパレル業者のみなさんは、どうぞ「大迫半端ないって」をご自由にお使いください。
あ、でも「大迫半端ないって」の発言主である中西さんの肖像やイラストには著作権が発生しているので勝手に利用してはいけませんよ。このブログの文章を引用以外で勝手に利用してはいけないのと同じです。
著作権の侵害となりますから。
大迫半端ないってという言葉自体は短いですから著作権は発生していないと思われますが。
なお、商標的使用や著作権については知財の知識でも説明しています。
たとえばこんな記事を読むと勉強になると思います。
法律学習者は塩崎氏のように半端な商標の知識ではなく、半端ない商標の知識を身につけてください。
この半端ないの件で、損害賠償をこの塩崎裕也さんが請求していることをご存知ですか?
そうなのですね。でも、損害賠償請求は認められないでしょう。
商標登録証には
商標(標準文字)OSAKOHANPANAITTE
とあります。
また商標登録の規定に
(3)「標準文字の適用範囲」の具体的運用
願書作成にあたって、標準文字のみによって商標登録を受けようとするときは、「【商標登録を
受けようとする商標】」の欄の次に「【標準文字】」の欄を設けてください。(商標法施行規則様式
第2備考15)
なお、【標準文字】である旨が記載された商標登録出願であって、願書に記載された商標の構
成から、特許庁長官の指定する文字(標準文字)のみによって商標登録を受けようとするものと
は認められない出願は、通常の出願として処理されることになります。
<標準文字として認められない例>
①図形のみの商標、図形と文字の結合商標
②特許庁長官の指定文字以外の文字を含む商標
③文字数の制限30文字を超える文字数(スペースも文字数に加える。)からなる商標
④縦書きの商標、2段以上の構成からなる商標
⑤ポイントの異なる文字を含む商標
⑥色彩を付した商標
⑦文字の一部が図形的に、又は異なる書体で記載されている商標
⑧花文字など特殊文字、草書体など特殊書体で記載された商標
⑨スペースの連続を含む商標
とあります。
Tシャツデザインには上記に当てはまる項目がいくつかあり図形商標ではないので侵害には当たらないという解釈でよろしいでしょうか?
いいえ。記事に書いてある通り、「商標的使用ではない」から侵害とはならないのです。知財の知識でも詳しく説明しています。このブログの過去記事だと「石塚啓次さんがスペインでうどん屋を続ける方法」や「「陰陽師」を付したグッズを販売すると商標権の侵害になるか」を読むと理解の助けになると思います。