*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事と同じです。リンクを下さっていた方はこのブログのアドレスに設定し直してくださると助かります。
キルビー事件最高裁判決を受けて10年ほど前に新設された特許法104条の3の規定は、無効理由がある特許権に基づいて特許権者等が権利行使することを制限しています。「無効理由を含む特許権は行使できない」ということを定めています。
特許無効の抗弁を行うためには、仮に特許無効審判が請求されれば特許が無効にされると判断されればよく、実際に特許無効審判が請求されていることまでは必要としないと解されています。
なぜなら、特許の対世的な無効まで求める意思のない相手方が必ず無効審判を経なければならないとするのは訴訟経済に反するからです。
さて、特許の無効理由は特許法123条に列挙されていますが、この中には冒認出願(特許法123条1項6号)、共同出願違反(同2号)といった当事者間でしか争えないような無効理由も含まれています。
本来、これらの無効理由については無効審判を請求できるのは利害関係人のみです(特許法123条2項かっこ書き)
しかし、特許無効の抗弁をするときには、それらの無効理由についても第三者が特許無効の抗弁を行うことができます(特許法104条の3第3項)。
特許に無効理由があることに変わりはなく、また、特許無効の抗弁を認めたとしても特許権が消滅するわけではないので、真の権利者による移転請求(特許法74条)を妨げることにはならないからです。