問題解決するときにおける「問題」とは何でしょうか。
よく定義されるのは、「現状と理想とのギャップ」です。
このように問題をとらえると、問題とは、「埋めなければいけないもの」というネガティブなものになります。
しかし、問題とは、そもそも自分が問題だと考えているから問題なのだということはこのブログで何度も言ってきたことです。
したがって、自分が問題だと思っていたことが、実は問題でなかったり、本当の問題は別のものだったということはよくあることです。
卑近な例をあげると、自分では「ファッションセンスが悪い」ということが問題だと考えているとします。なぜなら、おしゃれで可愛いあの子が自分に振り向いてくれないからです。
しかし、あの子が自分に振り向いてくれないのはそれが原因ではない可能性は多いにあります。
ファッションよりも清潔感がないことが問題だったとか、顔があの子のタイプじゃなかったとか、あの子には既に彼氏がいるとか・・・。
したがって、自分の考えている問題=「ファッションセンスが悪い」を解決するために、洋服コーディネーターに依頼して流行のファッションに身を包んでみても、とんちんかんなことをしていることになってしまいます。
このように、問題は何なのかを把握することが問題解決の第一歩です。
しかし、このような通常の問題解決手法とは180度異なった考え方をする問題解決手法も存在します。
「ポジティブアプローチ」といって、文字通り、物事をポジティブにとらえ、アプローチしていく方法です。
問題をネガティブに捉える通常のギャップアプローチとは、「問題」の定義自体が変わってきます。ポジティブアプローチを採った時の「問題」の定義は見かけたことがありませんが、「未来を創るきっかけ」と勝手に定義してみます(あら、かっこつけちゃって)。
ギャップアプローチでは、「足らないところを埋める」とかmust,shouldという考え方をするのに対し、このポジティブアプローチでは、「やりたいことをする」will,wantという考え方をします。
真面目な人ほど問題にぶつかると、ギャップアプローチを採り、「自分にはこれが足りない」「こうしなければいけない」「〇〇をしてはいけない」と考えて精神的に自分を追い込んでしまいます。
そして、白か黒かという二者択一的な考えに陥り、理想の姿になれない自分に価値はないと考え、うつ状態に陥ってしまいます。
たとえば、子供が産まれたばかりなのに、昨年度より年収が100万円もダウンした自営業者がいたとします。最近妻の顔色が優れません。自分が不甲斐ないせいだ・・・と思いこんだ彼は、妻とまだ小さな我が子のためにどうにかして収入をアップしたいと考えたとします。
しかし、慣れないマーケティングをいくらがんばっても売り上げは伸びず、逆に顧客離れが進み、年収が下がってしまったとしたら、「自分はダメだ」と思い絶望的な気持ちになります。
さらに投資に失敗し、負債を抱え、年収アップどころか年収激減という状況に陥ったら、
死にたい気分になるかもしれません。
しかし、この状況においてポジティブアプローチを採ると、見方が変わってきます。
ポジティブアプローチでは「悪いところを直す」というアプローチを採りません。
「ただ行動する」ことに主眼を置きます。
弱みを直したり失敗から学ぶのではなく、得意なところを伸ばし、成功体験を増やします。
もし自分の強みが分からなかったら人に聞いてみるのも良いでしょう。
この自営業者が奥さんに「俺の良いところはどこかな?」と聞いてみたら、
奥さんは、「家族思いなところよ。真面目なところもいいけれど、あなたは思いつめる癖があるから、そんなときは私に相談して。私もあなたの力になりたいの・・・」と答えるかもしれません。
そして、妻との会話が進むと、「収入が足りない」という問題は実は問題ではなかったことに気づくことになるでしょう。
子供と親子3人で生きていくには収入が足りないのが妻の顔色優れない理由だと思っていた彼でしたが、奥さんにとっては、収入よりも家族の時間、ふれあいが大事だったのです。
旦那さんが深刻な顔をして必死になって働くよりもまだ小さい我が子を見ながら一緒に「可愛いね」と言って微笑んでくれることを求めていたのです。
なのに旦那さんは奥さんのことも子供のことも「放っておいて」仕事ばかりしているので(奥さんの目からはそう見えます)、育児の疲れと悲しさが相まって奥さんの顔色が優れなかったのです。
この場合は、「やりたくない仕事でもやって、がむしゃらに働いてとにかく収入を増やす」という方法は何の問題解決にもなりません。
「可愛い我が子と妻との時間を楽しむ。そして仕事もがんばる」というポジティブなアプローチを採った方が精神的に健全です。
論理を突き詰めるギャップアプローチと違い、ポジティブアプローチでは、「こうなりたい」「こうしたい」という理想を追求し、その理想をモチベーションにします。
つまり、「モチベーション」に問題の本質があると考えます。
人間は機械ではありませんので、このモチベーションによって行動も結果も変わってきます。
だって、全ての問題は原因さえわかってしまえば簡単に解決できるはずなのに解決できませんよね。
たとえば、ダイエットしたいのに瘦せない原因なんてわかっています。単なる食べ過ぎと運動不足です。
でも論理的にはわかっているのに行動できないのはモチベーションに問題があるからです。
頭で理解できたところでやせることはありません。
しかし、モチベーションを維持し行動すれば結果を出しやすくなります。
そのためにはダイエットの場合には記録をつけたり自分の姿を鏡で見ることが励みになります。
精神面が重要な勉強も仕事も同じアプローチを採ることが有効です。
思い悩んでいるよりも、「実際に行動」します。そして、「成功体験を積み重ねる」ことにより更なるポジティブループに入り込み、理想に近づいていきます。
ギャップアプローチのように完全な解決策を求めるのではなく、少しでも改善できたら自分を褒めます。
全てに通用する一般解を求めるのではなく、自分だけに通用する特殊解を求めます。
やりたいことをやって理想を追求し、長所を伸ばします。
やらなければならないことをやり続けると精神的に苦しくなりますが、やりたいことをやっていれば、たとえ周囲からは辛そうに見えようが精神的な健康は保たれます。
周囲から見ると休み時間だろうが電車のなかだろうがどこでも勉強している人は辛そうに見えるでしょうが、本人は必ず受かるという信念を持って、やりたくてやっているのなら問題はありません。
筋トレだって、見ていると辛そうですが、本人はその苦しさ、痛さが快感だったりします。
「義務」をこなし、苦痛に耐えることが問題を解決する唯一の手段だと考えると、違う価値観の人を受け入れることが出来なくなるなど、視野が狭くなってしまいます。
しかし、「私は」これをやりたい、と思えることがあり、理想の状態が定まったならば、その目標に向かって進んだ方が確実にゴールへの道は近いはずです。
その道を進んでいる間も楽しいですしね。
というわけで、何か行き詰ってしまったという問題に直面してしまったら、通常の問題解決手法とは全く違うポジティブアプローチを採ってみると打開策が生まれる可能性が高いので、ぜひ試してみてください。