日本国内に住所又は居所を有しない者と公示送達

特許法における公示送達

特許庁では、交付送達等で送達することができなかった書類については、最終的に官報への掲載、特許公報への掲載及び特許庁の掲示場への掲示又は特許庁の事務所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置くことにより公示送達を行っています。(特許法第191条(実用新案法第55条第2項、意匠法第68条第5項、商標法第77条第5項において準用する場合を含む。))

令和5年7月3日以降は特許法の改正により、在外者(日本国内に住所又は居所を有しない者)に書類を発送することができない状態が6か月継続した場合においても公示送達を行います(特許法第191条第1項第3号等)。

特別法の法律用語は無味乾燥となりがちなので、民法や民事訴訟法の「公示送達」についても知っておくと理解が深まりますので以下説明します。

民事訴訟法における公示送達

民事訴訟を提起する際には、訴状を裁判所に提出し、裁判所が訴状を相手方(被告)に送達する必要があります。しかし、相手方の所在が分からない場合には訴状の送達ができず、民事裁判が始まりません。このような場合には「公示送達」という方法がとられることがあります。
公示送達では、裁判所の掲示板に掲示された日から2週間すると訴状の送達があったこととなり、訴訟を始めることができるようになります。

しかし、通常被告が裁判所の掲示板を見る機会などほぼ無いでしょう。
そのため、被告の知らないうちに訴訟が行われ、判決が下されることになります。

改正前民訴111条は公示送達の方法は「裁判所の掲示場に掲示」してするとしています。裁判所の掲示板に掲示することにより訴状を送達したとみなして訴訟手続きを進められるようになります。

改正法では、この公示送達の方法に「最高裁判所規則で定める方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置」(本文)及び「裁判所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧」が追加されます(2号)。
インターネットにより公示送達の事実を知ることがしやすくなります。一方で全く無関係の人にも被告となった事実が知られてしまうため、悪用される危険性が増します。

 

コロナが流行してから一気にリモートワークが普及しました。そして、各種法律もデジタル化の時代に沿った改正が行われています。公示送達の方法の改正もその一種です。

 

次回は仮想空間世界での知財法について説明したいと思います。