アイデアの盗用は日常的に様々な場所で行われています。

 

たとえば、以下の様な場合にいつの間にか自社の知的財産が盗まれていることがあります。

 

・コラボの話を持ちかけられ、嬉しくなってカタログや開発中の製品をあげたら実は相手はライバル社の人間で情報を盗み出すために近づいてきただけだった。

 

・テレビ取材を受けたときに映り込んでいた背景のデザインや機械を見て真似されてしまった(逆に、他者の著作権を侵害していたときにその事実が発覚し、著作権侵害を指摘されることも!!)。
 
・展示会に出展したら、新製品のデザインがパクられた。
 
・新製品について営業担当者が説明をするときに、調子に乗って社外秘についての部分まで話してしまった。
 

・部品を発注しようと思って図面を渡したら、その図面を見て余計な数の部品を作られ勝手に売られてしまった。
 
 

・・・などなどいくらでも例が挙げられます。
 
 

これを読んで、ドキッとした人もいるかもしれませんね。
 
私は、なるべくクライアントさんにはこれはしちゃ駄目、というようなことは事前にお伝えしているのですが、いつの間にか私の知らないところで話が進んでいてアイデアを盗まれそうになったこともあったので、入念にお伝えしておかないといけないなと思うことしきりです。
 

会社に知財保護の意識が浸透していないと判断した場合は、簡単な研修をしたり、経営者の方に、「行動を起こす前に念のためご連絡ください」とお伝えしてチェックをするようにしています。

 

会社に知財担当者の方がいる場合は、もちろん注意すべきこととしてお伝えしているのですが、直接法律に規定されているようなことではないので(間接的には規定されています。たとえば特許法29条「新規性」など)、ノウハウの積み重ねのような部分もあり、まずは経営者の方に知財が盗まれることの危険性を知ってもらった方が適切だなと感じています。

 

面倒なのですが、そうでもしないと普段の調子で何気なく行動をしてアイデアを盗用される等様々な危険にさらされることになってしまうからです。
 

一度アイデアを盗まれてしまった場合、後から取り返すことはかなり難しくなります。

 

発明を盗まれた場合には特許庁に情報提供などをしたり取り返すこともできるのですが、大変なので盗まれないのが一番です。

 

このアイデアの盗用にプラスして、ブランディング上の観点からも私はこれはいいけどあれは駄目などと口出ししているのですが、愛ゆえの発言だということをご理解いただければ幸いですm(_ _;)m

 

私は若き有望なクリエイターさんたちが知財を盗まれ、その才能の芽を潰されてしまうことをなんとしても防ぎたいと思っています。
 

残念ながら、この世には、自分さえ良ければ他人なんてどうでもいいという人がいます。
こと、ビジネスになるとそうです。

平気で他人のアイデアを盗み涼しい顔をしています。
 

法的知識に乏しいクリエイターさんたちは唇を噛み締めているだけです。

 

そんな姿は見ているこちらが苦しくなるので、私は出会ったクリエイターさんたちにも口うるさく気をつけて!とお伝えしています。(それにプラスして知財を活用した儲け方もお伝えしています)

 

さて、ここからは、とある人物が大企業に自身の発明を盗まれた例についてお話してみたいと思います。

 

その人物の名前はJi Qi。現在はMITメディアラボに勤めています。
 

Qi氏は、学部生だったころ、飛び出す絵本についての研究を行っていました。
飛び出す絵本というとアナログな感じがしますが、研究を行っていた絵本はライトやセンサーが搭載されていて、ハイテクとアナログの融合した面白いものです。

 

氏は本にエリーと名前を付けて、エリーがスターになる日を夢見ていました。

 

Company Tried to Patent My Work After a Job Interview — Patent Pandas
https://patentpandas.org/stories/company-patented-my-idea
 

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MITメディアラボで博士課程2年目、学業に専念していたQi氏はとある大企業から招待されました。Qi氏はそこでその誰でも知っている巨大企業の研究を学ぶと同時に、自身の研究内容についても共有したといいます。

 

そして、氏の研究内容との関連性の深さから、Qi氏はその大企業へ誘われたそうです。

 

しかし、氏は家族や友人たちに相談し悩んだ挙句、大学に残る道を選びました。

 

 

それから2年後、Qi氏は友人たちから「エレクトロニクスを用いた絵本の特許が出願されている」との情報を得ました。
慌てて調べてみると、かつて訪れた大企業がQi氏が当時話した内容についてそのまま特許出願していました。
 

 
氏は大学での研究が妨げられるかもしれないとの恐怖から、その特許の成立を阻むことにしました。

 
そこで氏がしたことを順番に述べます。
 

①パニックにならないように気持ちを落ち着けた。
 

これ、大事ですw
 

②自身が研究し発明したものであることの証拠を集めた。
大学の論文やブログの記事、メディアに採り上げられた際の記事など全てをまとめました。
先行技術文献の存在は強力な証拠となりますからね。

 

③米国特許庁の特許申請の状況を調べた。
基本ですね。

 
④法律の専門家に助けを求めた。
法律に関することは一人では解決できません。餅は餅屋に任せましょう。

 

幸運なことに、MITメディアラボの所長を務めている人物が発明をパクった大企業の重要人物と知り合いであったため、Qi氏は、大企業に直接連絡を取り合って特許についての話し合いを行う場を得ることができました。

 

その際、大企業はQi氏の名前を発明者欄に記載するとのオファーを示してくれましたが、他にも研究を進めている仲間はいたので、このオファーは断ったそうです。
 

それに、「発明者」欄に名前を書いてもらっても、それは単なる名誉権でしかありません。
 

お金は一銭も入ってきません。
 
特許権者になるのは発明者?出願人?
 
 
Qi氏の場合は非常にラッキーで、近くにその大企業の知人がおり、時間的にも特許登録前に気づくことができました。

 
もしこのような幸運が重なっていなかったら、Qi氏の発明は大企業に奪われており、相当面倒なことになっていたでしょう。
 
この事件から学んだことをQi氏は次のようにまとめています。

 
「研究しているものをオープンにすることは、大企業とのコラボレーションに繋がり有益であるといえます。
でも、その一方、アイデアを盗まれるリスクも大いに有ります。
 
このエレクトロニクス絵本の事件では、大企業による特許出願が拒絶されたことにより、我々は安心して研究を続けることができます。」
 

大企業から少額の支援を受けて喜んでいたら、気づかぬうちに自分のアイデアが特許出願されて、数億円の利益を盗まれていた・・・なんて武勇伝にもなりません。
 

個人や小さな企業が大企業とコラボするときには、必ず信頼できる人の協力を仰ぎ、搾取されないようにしましょう。
 
(もちろん、小さな企業同士のコラボでも、一方が一方を搾取するようなバランスが崩れた状態だとビジネスがうまくいきません。)

 

この会社は大企業だから悪いことはしないだろう、なんていう考えは甘すぎます。

 
大企業だからこそ見えないところでは情報格差を利用して搾取してくると考えたほうが良いかもしれません。

 

力関係に差があるときこそ、知的財産権の力が発揮できるので、自社の権利を適切に守りましょう。

 
なお、私的にはQi氏の件は、上手く行けば(Qi氏が特許出願をしておけば)特許を取ることもできただろうなと思っています。
なんだか勿体無い・・・。