私が問題解決をするときは、ブレインストーミングのように自由にアイディア出しをすることもありますが、それは最初の段階だけで、解決策を得るためにはtrizのようなツールを使って制約の中で考えます。
この「制約を設ける」ということが、逆説的ですが、自由な発想を生む機会になります。
英語ではthink outside the box(既存の考えにとらわれず、創造力を駆使して考えろ)という言葉がありますが、制約を儲けるということは、この逆、つまり
think inside the box ということになります。
*この記事も旧ブログ「問題解決中」のものです。実際に書かれたのは3年前です。
抽象的に話してもわかりにくいと思うので、具体例をあげてみます。
例えば、文学でいうと、俳句というものがあります。
これは日本人なら誰でも知っているように、5・7・5の制約の中で感情などを読み上げます。
ただ単に、
「蝉の声が聞こえるけどだからこそとっても静かだと感じるなあ。」
と書くよりも、
閑さや岩に染み込む蝉の声
と5・7・5に調子を揃えて語るべき言葉を語らないで表現すると、
語らなかった言葉まで表現されてしまうという不思議な現象が起きます。
句を聞いた人が句に書かれていない言葉と場面まで勝手に想像してくれるのです。
こうして、無駄な言葉は最小限まで省かれ、月並な表現は芸術の域にまで高められるという理想の状態(一種の理想的最終解/IFRでしょう)を得られるわけです。
日本の詩でも外国の詩でも、韻を踏んでいるものは響きもよく、意味まで優れているように感じます。
制約があるはずなのに、なぜでしょうか?
自由に書いたほうが良い文が書けるはずです。
しかし、これで良いのです。
人は制約があると、その中で必死に枠を出ないように枠を抜け出す方法(矛盾しています。だからこそいいのです!)を考え抜きます。
日常的な表現を使うことが許されないので、自分の考えを表現する為に新しい文章を創り出さなくてはいけません。
そうして新しい文章を創造する中で、自由に考えた時に思いついたことの中に新しい意味や方法などを見出すことがあります。
芸術は制約なくしては生まれないのではないかとすら思えます。
もちろん芸術だけではありません。
発明のような技術的なことも同じです。
制約の中で考えるからこそ、新しいことを創造できます。
プリンタ会社がどうにかして売上をあげたいと思ったとして、しかし、ライバルの製品や営業が優れているという制約があってなかなか売上が伸びずに悩んでいるときに、
このまま2Dプリンタ事業に固執するのではなく、他社に先駆けて3Dプリンタを売ろう。というか、3Dプリンタを売るしか無い!と考えることも制約のおかげかもしれません(いや、なんか違う気が。)
そして、3Dプリンタを製造しようと考えたはいいが、ジェットノズル方式3Dプリンタに特許権が存在し、3Dプリンタを作れないという制約があるのなら、新たな方式の3Dプリンタを創り出せば良いのです(ジェットノズル方式の3Dプリンタは2016年で特許権が切れますから、とりあえず「待つ」という手段も取れますが)。
2Dプリンタでどうしても首位になれない中堅プリンタ会社は、こうして、本来はズルズルと2Dプリンタを造り続けるはずだったところ、早々と2Dプリンタ事業に見切りをつけて、3Dプリンタ事業で革新的な発明をし、種々の特許権で守り固めることにより、既存の2Dプリンタの王者を超える売上を叩き出すことができるかもしれません。
この他にも、制約が生み出した発明として「発泡酒」があります。
麦芽比率に応じて酒税が課せられていますが、そういった制約があるからこそ、高い酒税を払わないで済む発泡酒が生まれました。
歴史を見ても、「贅沢を禁止された」時代に、「密かな贅沢」文化が花開いたり、「外国との交流を許されない」からこそ独自の(ガラパゴス的)文化が生まれました。
こうしてみると、鎖国も結果的には良かったのかもしれませんね。
「外国への憧れ」があるのに外国へ行けないという制約も想像力・創造力を膨らませてくれます。
素敵な異性と付き合いたいのに出会う機会がないという制約も、より異性への期待が高まり、自分を磨く良い期間です。
妄想は創造力を育ててくれます。
以前の記事 理性でなく、本能で問題解決! にそのことを詳しく書いています。
問題解決も、ブレインストーミングでアイディアを発散するのもいいですが、その発散したアイディアをまとめ上げるために一種の型が必要になります。
その一つがtrizです。
私がよく書いている発明原理なんてまさに「型」そのものです。
9画面法なんて、9つの箱に閉じ込めているだけですよね。
でもその制約のおかげで、「無限の可能性」を「有限の可能性」にまで落とし込むことができます。
クリエイティブな発想をしたいときには、ぜひ「自由に考える」のではなく「制約の中で考える」ようにしてください。
きっとその制約があなたの中の創造力を刺激してくれることと思います。