*これは旧ブログの2年前の記事です。当時はあすかちゃんのお父様にもコメントをもらっていましたが、コメントなどは消えてしまいました。
小学6年生の女の子がゴミ箱の発明で特許登録を受けたということでニュースになっています。
私にも娘がいるので、「優秀な子ですね。うちの子にも頑張ってほしいです」と2行以内でブログ記事を終えることもできたのですが、それではウンチの足しにもならないので、私は別の視点からこの発明について言及してみたいと思います。実際のニュースを基に法律を当てはめていくので、弁理士試験勉強中、知財管理技能検定勉強中の人などには役に立つと思われます。
まず一点目。
小学6年生というと、まだ11,12歳ですが未成年でも特許を取れるのでしょうか。
実は、未成年が自分だけで特許出願をすることは法律で禁じられています(特許法7条)。
したがって、小学生が特許を取得したいと思った場合には法定代理人に相談しなければいけないのです。
今回のケースはお母さんの協力を得ているようです。
ちなみに短いですが参考記事はこちらです。
二点目。
この特許登録に係る発明は、特許出願前に、昨年度の夏休み明けである9月8日、9日に安城市立丈山小学校の体育館において開催された、「平成26年度安城市立丈山小学校夏休み作品展」で発表されています。
恐らく夏休みの自由研究として創られたのでしょう。
そして、3ヶ月後の12月8日に特許出願されています。
特許法の大原則として、不特定多数の者の前で公開されてしまった発明は特許を取ることが出来ません(特許法29条1項1号、同49条2号)。
したがって、小学校の作品展という公の場で発表されてしまった発明は本来は特許を受けることができません。
しかし、それでは特許法を知らない人にあまりにも酷なので、発明の新規性喪失の例外という規定が特許法には設けられています(特許法30条)
今回のケースでは、発明者自らが進んで発表したので特許法30条2項の「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」に該当します。
発明の新規性の喪失の例外
第三十条 特許を受ける権利を有する者の意に反して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項各号のいずれかに該当するに至らなかつたものとみなす。
2 特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
三点目。
この特許出願は早期審査対象出願です。
この早期審査というのは、規模の小さな中小企業やベンチャー企業、個人などに認められるもので、他
の特許出願に先立って審査してもらえるという制度です。
通常は審査請求(特許法)されてから特許登録されるまで2年以上かかってしまうケースが多いのですが、早期審査に付されれば半年以内に特許を取得することもできます。
今回のケースでは10ヶ月程度ですね。
個人発明家やベンチャー企業、中小企業にはぜひ積極的に活用して欲しい制度です。
無料ですよ。
早期審査に関する参考記事
特許を早く審査してもらうには?
というわけで、小学6年生の女の子の特許取得のニュースから特許法の勉強が出来てしまいました。
これなら無味乾燥な弁理士試験勉強も少しは楽しくなるかな・・・と思って記事にしたのですが・・・
お役に立てましたら幸いです。
おまけ:「自分の机が欲しい!」と主張する我が家の娘のために昨日私が創った発明(?)です。
アイロン台とダンボール使用。制作費0円。設置時間30秒。
娘は使うのを拒否しました。
意匠(デザイン)も重要ということです。